温泉でした♪
元のバイロイト女子修道院って可愛い?とは云えないですね。
無骨な石造り、屋根が高く、長方形の建物、一応管理されているので、小綺麗ではあります。
1階は広い吹き抜けの様で、礼拝堂のようになっています。
上手い具合に作り付けの家具は残っており、長いテーブルとイスが並んでいます。
一応祭壇は移設されているようで、空っぽの空間が開いています。
「いいわね、この隙間、間仕切りすれば配膳室になりそうね」
厨房は案外に広く、薪を使うオーブンなどがあります、パンなど焼けそうです。
一般の家にはオーブンなんて無いのですよ、設置するのに、もの凄くお高いですから。
ただフライパンとか鍋とかはありませんでした。
当然ですよね、移転の折に作り付け以外の物は、持って行かれたわけですから。
トイレはやはり『どっぽん』です、この世界、どこでもこのトイレです。
汚物処理?これが凄いのですが、『焼却』という魔法があり、この魔法で全てを焼却します。
公共焼却場には、大きな石壁に囲まれた穴があり、ここに生活ゴミや汚物を全て集めて、エイヤーで燃やす訳です。
クロエさんに教えていただいたのですけどね。
ゴミや汚物の運搬は、その家の者の責任らしいのです。
裕福な家は、奴隷さんのお仕事らしいのです……
「私が運んでもよろしいですよ♪エマ様の『モノ』ですから♪」
「不要です!」
私の収納にはゴミ箱がありますから!
『焼却』魔法を検索してみると、クロエさんの云うとおりでした。
この時、『習得不可』とのメッセージが出ましたけどね。
これは『女の嗜み』ではないようです。
『焼却』を持っている方は、何処の都市にいても食うには困らないのですが……儲かるかと云えば、そこそこぐらい。
『焼却』できる量と火力が限られていて、何人かで一斉にする必要があるらしいのです。
魔法を重複することで、火力が上がり、一気に焼き上げ、何も残らないように出来るらしい。
つまり、焼却代を人数分で割るわけですので、年収にすると、『中のほんの少し上』ぐらいとききました。
「どの町もゴミや汚物の処理に頭を悩ませているのですよ、焼却代を高額にすれば、『焼却』魔法士は集まりますが、町の財政が傾きますしね」
ちなみに水は、町の中に水汲み場があり、井戸のない家はそこから運ぶそうです。
これ、結構大変なのですよ。
一応、元女子修道院ということで、水汲みのために外に出るのは憚られますので、毎日水汲みを頼んで、飲み水を確保していたようです。
敷地にある井戸は、水質が悪いのですが、涸れることはないそうです、でもね、母屋からいささか遠いですね。
覗いてみるととても浅い井戸?これ湧き水ですね。
単に湧き水の周りを囲って、屋根を付けただけです。
釣瓶もありませんよ。
よく見ると、側に排水溝があり、そこに溢れた井戸水が流れ込んでいます。
この排水溝は、バンベルクの町の街路にある排水溝につながり、最終的には地下水道につながり、川に排水されるようです。
地下水道のお掃除も奴隷さんの仕事らしいのです。
この奴隷さんは『官奴』と呼ばれています。
念のためにいっときますが、この排水溝に汚物なんて流せば、もの凄い罰金が取られるとか……
建物の樋とか、この修道院のような湧き水とか、自然の水以外は、お風呂とか洗濯の水、つまり生活排水しか流せないのですね。
……この井戸水の水質について知りたい……
≪自噴している、含二酸化水素―ナトリウム―塩化物―炭酸水素塩冷鉱泉、温度15度≫
「あれ、これ、温泉?」
たしかに『おいしい水』ではありませんので、飲用できないといわれるわけです。
「温泉って、お湯のはずですが?」
クロエさんが疑問を呈しています。
「私の世界では、温泉成分といってね、身体にいい成分が入っている水なら温泉というのよ」
「そうなので……!なら、この水を湧かせば温泉なのですか?」
「そうなるわ、これ、あとで大主教様にお知らせしなければね」
「ところでクロエさん、そろそろナプキン、替えた方が良いと思うわよ」
クロエさん、あわてて替えていましたね。
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