考えることは放棄します!
「バタバタして申し訳ない、予定より遅れてしまって、就任式の準備の時間がなかったのでな」
「解っております、祝典の準備は大変でしょうから、お忙しいのに、朝食に呼んでいただき感謝しております」
いま、朝の6時なのですけど……しかも、茶色パンと凄く薄いワイン?あれ、エールではないの?
まあね、異世界ですから、勝手に中世ヨーロッパの食事をイメージしてもね……
この茶色パン、ライ麦パンですね……
クロエさんが、当然という顔で座っているのですから、これが普通なのでしょうね……
「すまんな、ところでエマ様、マルドゥク神殿警護騎士団の食堂勤務の話しは、考えていただけましたかな?」
「住む処を考えてまして、虫が良いと思うのですが、マルドゥク神殿警護騎士団の兵舎の横の、バイロイト女子修道院をお貸し願えませんでしょうか?」
「あそこに住居を構えられると?しかし井戸は飲めませんよ」
「私は水なら出せるのです」
「便利ですな」
「バイロイト女子修道院の1階あたりを食堂として、マルドゥク神殿警護騎士団バンベルク分団の方々にお食事を作ります」
「出来ましたら、バンベルクの方々にも、食堂を開放出来たらと思うのです」
「なるほど……マルドゥク神殿警護騎士団バンベルク分団食堂の、責任者の住居として貸し出しても通る話しですね……空き家ですから、構わないですよ」
「ただし、教皇猊下にあっていただきます、それが条件です」
「1つお聞きしてもよいですか?」
「なんなりと」
「教皇猊下様にあえばどうなるのですか?」
「なにも、ただ猊下なら、エマ様のステータスの加護の項目はご覧になれるはず、神はこの世界に、御使いとして、聖女様を遣わせられた」
「猊下なら、その意味が分るはずです」
解らないと思いますね……神の娯楽のために、私はここにいるので……
えっ、まてよ!
たしか神は……こう云われた。
『詳しくは言えないが、先頃ある人物たちに『お取り寄せ能力』を授けて、見捨てようとしていた世界を良き方へ導くことが出来た、そこでさらに最低限の『お取り寄せ能力』で、何処まで出来るか試してみる事になった』
深読みすれば……さらに最低限の『お取り寄せ能力』で、何処まで出来るか試してみる……見捨てようとしていた世界を……
ひょっとして、神々へ『娯楽』を提供して、見捨てられる寸前の世界に神々の歓心を……
それって、私が『娯楽』を提供しなければ、『おわり』なの?
……
やめた!考えることは放棄します!
私は楽しく過ごしますよ、神々へ『娯楽』を提供するということは、私も『楽しむ』ということと等価!
精一杯、2度目の人生、楽しく演じて見せましょう♪
「ついでですから、宿屋も併設しましょうか?バンベルク大聖堂への巡礼者の為に」
「そう云われると断れないですね、信者の為になることですから」
「これで決まり、教皇猊下に会うために、何処に行けば良いのですか?」
「あさってです、教皇猊下はこのバンベルク大聖堂に来られるのです、大主教就任式にご臨席を賜り、バンベルクの街を祝福にこられるのです」
それで……こんなにバタバタと……
なるほどね、教皇猊下に聖女を紹介すれば、大主教様もお覚えが目出度い……とかかしら……
「それまでは、この館で……」
「いえ、お忙しそうですから、バイロイト女子修道院に移りましょう」
「そうですか……では、マルドゥク神殿警護騎士団バンベルク分団長に、警備を命じておきます」
「私どもはしがない下女風情、騎士団の食事係に、大それた警備は変な疑念を呼びましょう」
「云われればそうですな……警備の問題は一考してみましょう」
そんな遣り取りがあり、身軽なものですから、そのままバイロイト女子修道院に移ったわけです。
お忙しい大主教館の皆様ですから、鍵を預かって2人でトコトコとね。
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