第2話 末期がんの少女
これは、俺が海外のサイトから拾って来た話だ。
ある国に末期がんに侵されている6歳の女の子がいた。
余命1年半と宣告されていた。
両親は娘を諦められなかった。
当然だと思う。子供を持ったことのない俺ですらその気持ちが痛いほどわかる・・・。
両親は娘のビデオを毎日撮ったが、死後にそれを見返すだけでは、とても娘の死を乗り越えられないと思った。二人は運命の日をどうやって受け入れるかをずっと悩んでいた。宗教にすがったり、カウンセリングを受けたりもした。
しかし、どうしても娘の見ていない所では、泣き崩れてしまう・・・。もはや、生きて行くことすら自信がなかった。
そこで、二人はネットで見つけた最新のAI技術に頼ることにした。どうやら、AI技術を使った、学習能力のあるアバターを作成できるようになっているらしかった。Siriなどでもわかるように、会話ができても、学習能力のないアバターが普通なのだ。それだと、話していてロボットだと気が付いてしまう。そんな気休めではなく、本当に死者と対話しているような気分になれる、高性能のアバターが欲しかった。
娘のアバター作成を依頼したのはA社という会社だった。担当者によると、アバターを作成したい人物の動画や写真を提供すれば、半年くらいでまるで本人のような画像ができあがるということだった。もちろん会話もできる。声はもちろん、その受け答えや性格も本人そっくりになるそうだ。
試しにアバター見本を見せてもらったら、とてもCGとは思えない出来だった。
それがあれば、娘を永遠にデジタルの世界で生きながらえさせることができる、と二人は思った。ものすごく高額だったが、両親は迷わずに申し込んだ。娘が亡くなったら自分たちも生きる希望を一緒になくしてしまうからだ。
こういうのを「デジタル不死」というらしい。こんな技術を利用すれば、失われゆく言語や民族、歴史上の偉人を記録に残すことができる。サリーもデジタルの中で永遠の命を得るのだ・・・。
娘の名前はサリー(仮名)。彼女は自宅で療養していた。アバターを作る準備として、AI技術を使って、何度もサリーへのインタビューが行われることになった。小さい子供は人に何か質問されて、答えるのが好きだ。サリーは無邪気に答えていた。それが何に使われるかも知らずに・・・。
今までの思い出。家族でどこに行ったか。親戚は?家族は?ペットは?どんな家に住んでるの?何が好きか。好きな食べ物、アニメ、おもちゃ、本、、、これからやってみたいことなど多岐に渡った。
「一番愛しているのは?」
AIが尋ねた。
「パパとママ!」
サリーは迷わず答えた。
両親はそれを見て涙を流した。
その時間が永遠に続いて欲しかった・・・。
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