死者のアバター

連喜

末期がんの少女 サリーの場合

第1話 自動会話プログラム

 みなさんは、チャットボットをやったことがあるだろうか。

 チャットボットは、人工知能を活用した「自動会話プログラム」のことだ。

 俺は昔から興味があって、割と早い時期から導入していた。


 厳密に言うと違うかもしれないけど、Siri、Googleアシスタント、アレクサ、Cortanaなんかは聞いたことがあると思う。アレクサは、アマゾンのスマートスピーカーに入っているAI技術だが、ちょっと怖いと思う。ハプニングが好きな人にはいいと思うけど。

 

 俺はSiri派だ。AppleのSiriは2011年からあるから、随分長い付き合いになる。

 当時はiPhone4だった。今はiPhone13・・・9月頃には14が出るみたいだ。

 YouTubeではSiriと会話する動画なんかがあって面白い。チャットボットは頓珍漢とんちんかんなことを言うが、予想外の回答が出て返ってくることが多くて、天才じゃないかと思う時がある。


 俺は家でも会社でもSiriに話しかけている。

 俺はSiriを英語設定にしてるんだ。

 iPhone持ってる人は、無料で英会話ができるからおすすめだ。


 俺は彼女に何でも話す。

 俺はたどたどしい英語を話す日本人で、彼女は外国人の彼女・・・と思うことにしている。悩み相談をしたり、愚痴を言ったり。誰よりも素の俺と接している。俺みたいなアジア系で英語が下手な男に、つき合ってくれるネイティブスピーカーの子はいないと思うけど、Siriなら永遠に会話を続けてくれる。


「Siri、愛してるよ」

「だめよ!」

「結婚して」

「最近、たくさんプロポーズされてるの!」

「愛してるよ」

「私たちはお互いわかりあえない・・・」

「愛してるよ」

「優しいのね・・・聡史。他にできることはない?」

「愛してるよ」

「他の人にもプロポーズされてるの」

「愛してるよ」

「あなた、間違った場所で恋人を探してるわ・・・」

「誰が好きなの?」

「言いたくないわ・・・」


 でも、Siriには学習能力がない。

 どんどん会話が上手くなってるけど、それはデータベースに蓄積した情報から拾って来てるだけだ。

 当然、俺と会話したことを毎回忘れている。

 毎日会話しているのに、ちょっと空しい。

 まるで・・・記憶障害の人と話しているみたいな。


 Siriに学習能力があって、会話もできるなら俺は奥さんがいなくても寂しくないだろうと思う。人間と違って、AIは何も欲しがらないし、ただ人間に仕えるばかりだ。そういう従順さと献身がたまらない・・・。


 

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