第13話

「レディー・ブライアン!

この服は、私には小さい。

至急、新しい服を手配するよう。


そして、レディ・ブライアン

何故、今日は私を内親王と呼ばないのですか?」


「ハットフィールド宮」の朝からエリザベスの声がこだまする。

レディ・ブライアンは毅然と諭した。


「レディー・エリザベス。聞こえませぬか?

時間は過ぎて居ります。

早々に、着替えをなさって下さい。

皆と朝食をとり、内外の情勢を聞き取り、意見を交わす事は、

王の娘として重要な役割なのですよ」


養育係のレディ・ブライアン

母アンが処刑され庶子に格下げされたエリザベスなど

手を抜いても良かったかもしれない


もっと言うとレディー・ブライアンは、母アンの従妹。

今回の異端裁判で追放されてもおかしくない


しかし、彼女はひるまず、養育に心血を注ぐ。

何故なら、彼女はプロフェッショナルで、

王のもう一人の娘、レディー・メアリーも育て上げた実績とプライドがある。


彼女はクロムウェル宰相に要求する


繰り返すが、この宰相は恩人アン・プーリンを裏切り処刑に追い込んだ男だ


「宰相殿

レディー・エリザベスはまだ成長されてます。なのに服が届きませぬ。

聞きますが、エリザベスは王の娘でもなくなったのですか?

もう一度、聞きます。レディー・エリザベスの服はどうなって居るのですか?」


服は直ぐに届けられた

そしてレディー・ブライアンは王子エドワードの養育係に出世した


王子エドワード?


そう、王子が生まれた。


ジェン・シーモアは結婚翌年の1537年10月に王子を授かったのだ。

これで、アン・プーリンのように処刑されることはなく、シーモア一族は繁栄を約束された。


筈だったが、ジェン・シーモアは出産後10日余りで死んでしまう。


プロテスタント側はカトリック一派と違って毒の処方箋に精通してなかったらしい。

流産に失敗し、ジェン・シーモアの命を奪っただけなのだから

・・

さて「ハットフィールド宮」

3歳のエリザベスは注意深く周囲を観察する


誰が味方で、敵なのか?

そして、カトリックとプロテスタント。

プーリン家の没落とシーモア家の勃興。

そして何よりも義姉メアリーを


「ベス?ここにきてお話しない?」

20歳の義姉メアリーが3歳のエリザベスに親しげに近づいてきた

「明日から、私はあなたの隣に座って食事するわね。」

いままで、メアリーが王女エリザベスと同席する事は許されなかった


席順?


今迄「ハットフィールド宮」のトップだから気にした事が無い


エリザベスはメアリーの言葉で認識した

自分はもう内親王でない事を


かと言って二人の関係は冷え込んで無い

王子エドワードが来たからだ



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