第11話

1534年夏

アン王妃の大きな、

不自然なほど大きなお腹から

子供が産まれる事はなかった


ヘンリー王が久しぶりに「グリニッジ宮殿」のアン王妃の寝室を訪れる

「申し訳ございません。ヘンリー王・・」


折角ヘンリー王自ら来てくれたのに

アン王妃は、王に背を向け

ベットに腰かけたまま言葉が出て来ない


王に罵倒され、処刑死を言い渡される恐怖に震えているからだ。


しかし、王はアン王妃の肩を優しく抱く

「え?•・」


アン王妃は助かった

どころか何と久しぶりに王夫妻の共同重要作業が始まったのだ


ジェン・シーモアの戦い、つまり、ジェンは王から「ある言葉」をまだ聞いてない。だからジェンは王に身体を許していない


このジェンの作戦が裏目に出て、王は再びアン王妃との共同重要作業に戻させてしまった


そして1年程経過し、アン王妃は本当に妊娠に成功してしまう


メアリーもジェン一族も、そしてカトリック一派全員が恐怖と絶望に襲われる

「男の子が生まれたら、今度こそ、今度こそ、我々は皆殺し•••」


アン王妃ご懐妊の嵐に影響受けたのはカトリック一派だけで無い


ヘンリー8世に以下3名が呼び出された

①カンタベリー大主教トマス・クランマー

② トマス・クロムウェル宰相

→アン王妃に「時禱書戦略」をアドバイスした切れ者

→出自は怪しいがプーリン一家と結びつき権力を掌握していった

③ トマス・ハワード ノーフォーク公

→アン王妃の叔父で法的権威


要は宗教/行政/法務のトップ3名で、内2名は、アン・プーリン側の人間だ


ヘンリー8世は、この3名に

「なあ、諸君。

次、生まれて来る子が、女の子だったら?

どうすべきだと思うかね?」

「・・・」


返答しない3名の顔色を見てヘンリー8世は確信した。

アン王妃が男子を産まなかった場合の次の手を打つ事ができると


そして1536年1月7日 運命が動き出す

前王妃キャサリンが崩御したのだ


キャサリンはヘンリーに捨てられ3年間

闘病しながら静かに抵抗し

報われる事なく旅立ったのだ


死因は癌。つまり、毒殺ではない。


ヘンリーは喜んだ

「これで、スペイン王国との矛盾が消えた。

カール5世が我が国を攻撃する理由はもう無い。キャサリンと結婚しようにもできないからな」


さあアン王妃は?

ヘンリー同様喜んだのか?


ヘンリーと結婚する為に

庶子に叩き落したキャサリン前王妃の死を

アン王妃は喜んだのであろうか?


キャサリン前王妃の娘レディー・メアリーは? 

黙って戦うジェン・シーモアはどうだろう?


答えは一つだ。

アンもメアリーもジェンも


アンが次に産み落とす子が

女か男か?で決まるのだ


そして、すぐに答えが出た

キャサリン王妃が埋葬された1536年1月29日に

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