君ユリイカ
梦
第1話 君ユリイカ
メダカには花が無い。
彼らはペットボトルを改造し水草を1、2本入れた簡易的な水槽の中で多少の可愛さを主張していた。
アルキメデスは粗末な水槽の中をチョロチョロと動き回り、時折思い出したように急停止しては再び動き出す行為を繰り返す。
同じだ。
汚れの目立ち始めた不透明なそれを決められた位置へと戻す。
教室の一辺に掃除用具入れとともに敷き詰められたひどく横長のロッカーの、その上に生きる32匹。
閉じ込められた魚たち。
ぐちゃぐちゃに置かれたメダカの観察水槽たちは人間そのものだ。
ポリエチレンテレフタレートの壁に阻まれて彼らが愛を育むことはない。
私達もほんとうに愛し合うことなどできないのに私は誰かを愛したくてたまらないのである。
廊下を横切る赤いランドセルを背負った曽根崎 美園を私は見逃さなかった。
私は思わずアルキメデスを摘んで口に含むと彼女をつかまえキスをした。
私、君が好きだ!!
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