籠められた思い
――これも一つの不孝のうちだよな――
父親にはあまり良い記憶がない。中学二年生のころに母が
高校受験を機に叔母の家に移り住んでからはますます父と
高等学校を卒業すると大学には進まずに働きに出ることにした。いつまでも叔母夫妻の
「お父さんが亡くなったわ。それで、
父の
「生まれ育った家が人の手に渡る前に見納めに行った方がいいわ」
幽霊屋敷のようになってしまった生家を訪れる気になったのは叔母の
――親父は仏間で寝起きしていたのか――
さんざん苦労は掛けられたが、やはり生前の父親の影を追ってしまう。
「誰かいるなら出てこい」
夕闇も色濃い空間の奥に、
――こんなもの
――誰かの
女は起き上がろうとする僕を優しく
――母さんなのかい――
心の中でそう語りかけると、女は穏やかに
深い眠りから
朝日の差す畳の上に
長い歳月を経て
(了)
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