幕間 その1

 とある男の独白。


 俺には、弟がいた。双子の弟だった。過去系なのは、もう生きていない。俺が殺した。直接には、手をかけたとか、そういうことは、もちろん、していない。俺の会社のいちばん忙しい過酷な部署に俺が、配属させた。ほとんど寝てない、睡眠不足の状態で、クルマを運転していたので、居眠り運転で、交通事故を起こして、死んでしまった。不幸な事故だった。

 ただ、弟が、死んだのは、ある意味、必然だと思う。助けることも、自分ならできたのに、助けてって言うサインを無視して、見捨てた。

 他の赤の他人の従業員なら、休ませたり、異動させたり、増員したり、なんらかの対策をしたのだろう。でも、嫌いな弟、死んでも構わないっくらい憎んでいたので、そのまま放置した。


 結婚している弟には、息子がいた。自分にとっては、甥っ子にあたる。弟の嫁は、まだ小さい息子の目の前で、弟を追って、1年後に首を吊って自殺した。


 弟への憎しみはたしかにあった、復讐もしたかった。でも、ここまで、する必要があったのか。甥っ子は、母親の記憶をすべて失っていた。目の前で、自殺するとか、そんなひどい記憶は、忘れるという防衛本能が働いたのだろう。

 

 甥っ子の生活を面倒みるのが、贖罪になるとは思わないけど、、あと、結局、あんなことがあって、結婚する機会を逃した俺には、子どももいないし、この会社の後を継ぐのが甥っ子しかいないんで、後継者として、育てて、経営をやってもらわないといけない。たとえ、あの弟の子どもだとしても。


 23歳のとき、付き合っていた彼女が、生理がこない、妊娠したと言ってきた。何ヶ月かと聞いたら、、えっ、計算合わない。時期的に、中国な出張で、1ヶ月いない時期だ。


えっ、どういうこと??

問い詰めたら、弟と浮気をしてたと話し始めた。

結局、その彼女と別れた。弟は、結婚して、その奥さんも妊娠中だったので、俺の彼女が、寂しがってた、のを慰めてたら、そういう関係になってしまった。子どもは、女の子だったみたいだけど、詳しくは知らない。産んだのか、堕したのかも。


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