第2話 ここから始まる
そこには魔法を使う者など明らかに地球の生き物ではないものがいて現実世界では起こりえないことが起きていた
「何で俺はここにいるのだろう、昔懐かし自作漫画を読んでいただけなのに」
「というかここ地球ではないのではないか」
普通の人なら突然こんな世界が目の前に突然現れたらパニックになるが以外にも豊は性格上冷静だった
だが街並みを見ているとどこかで見たことがあるような感じがあった
「どこかで見たような気がするのだけど」
その時、自分は今どこにいるのかはっきりわかった。
「なるほど俺が今ここにいる場所は自分が描いた世界の中か、どうりで見たことがある街並みだと思った」
今いる場所は自分自身で描いた漫画の世界にいたのだ。自分が何処にいるのかはわかったのはいいがやはり何故、自分の目に前にこの世界が現れたのか考えた結果一つ結論が出た。
「こんなのいくら考えてもわからんから考えるのをやめよ…」
非現実的なことが起こっていて現実世界の常識は通じないので考えても無駄だと思ったため考えるのをやめてそれよりこれからどうするかを考え始めた。
「このままずっと突っ立って野宿するわけにはいかないし」
「そういえばここは自分が作った漫画の世界だというならここに自分で作った登場人物たちもいるということか」
「ここはとりあえずクルトの家に住まわしてもらうしかない」
豊は見知らぬ人より知っている人に助けてもらう方が安心だと思った
「たしかクルトが住む場所はプロセイン地区か」
そして何とか助けてもらう思いでクルトが住む所へ向かった。
クルトは冒険者パーティーのメンバーたちと住んでいる設定だ。
このメンバー達はスキルが凄く成果も上げているので冒険者の中ではちょっと有名なのだ。
誠実で頑張り屋のルシア、気が強いけど人に対して優しく思いやり部分もあるソフィア、感性豊かで人から好かれるキャップ、そして…
「クルトはどういう性格だったかな?他の主要人物は思い出せるのだけど…」
「まあ、それはそれとして俺はクルトたちを知っているのだからいいけどクルトたちは俺のこと知らないからな」
豊は見ず知らず人の他人を家に入れて住まわしてくれるのだろうかという不安があった。
そして不安に思いながらも歩いていき遂にクルトたちが住む家に着いたので尋ねると中からルシアが出てきた。
「何か御用ですか?」
豊は仕事を失い路頭に迷っているという設定にしどうか家に住まわせてほしいと言ったらルシアはくわしい話を聞かせてほしいと言われ家の中に入れた。
二人はテーブルに座るとルシアは真剣な目で豊を見てきた。
「先ほども言いましたが住み込みながら職場に勤めていたのですが突然無くなりまして行くあてもないので路頭に迷いどうしようもなくなりましたので何事も致しますので家に住まわせてほしいなと思いまして…」
と申し訳なさそうに言ったらルシアは少し困窮した顔をした。
「やはり駄目ですか?」
「いや、私にそういったことの決定権は無いのでリーダーに聞かないとわからないですね。私としては全然構わないのですけど」
「それではクルトに聞けばわかるのですか!」
豊は身を乗り出しそういった。
「まあそういうことになりますね」
「そうですか、でも何故ルシアさんは赤の他人にわざわざ家まで入れてまで親身になってくれるのですか」
「やっぱり他人とはいえ目の前に困っている人がいたらほっとけないではありませんか、世の中助け合いの社会ですからね」
数時間後、太陽が沈む頃にクルトと冒険者パーティーのメンバーであるソフィアとキャップ、そしてクルトが帰ってきた。
そして豊は事情を全て話すとクルトはこう言った。
「うちは家に人を受け入れる余裕などないからダメだ。それに何故、赤の他人にわざわざ手を差し伸べらなければいけないだ、身内ならともかく」
そう言われ豊は思い出した
(クルトの性格は無愛想であまり人を思いやる心が無い設定だったな、だけどどんな状況下であっても適切な判断ができ剣術の実力もあるから人からの評価が良くてパーティーメンバーから認められリーダーに指名されているのだっけ)
「そこを何とかお願いします」
続けてルシアも少し強めにこう言った
「目の前に本当に困っている人がいてそのまま何もしないわけにはいかないよ」
「だからといって何処ぞの知らんやつの言葉をそのまま鵜呑みにして家に受け入れるのは危険すぎる、邪悪のやつかもしれないからな」
その後もどんなに頼み込んでもクルトの答えは変わらなかった。
そして痺れを切らした豊はクルトにこう言った。
「この家に受け入れてくれるまでここから動きませんからね」
「好きにすればいい」
時間が経ち夜になりクルトたちは夕食をとりはじめた、そして豊はまだ居座っておりそこには夕食の香りが漂ってきた。
(さすがに何も食べてないときつい)
そして空腹のせいか家中に響き渡るお腹の音が鳴った。
それを聞いたキャップは「君も一緒にここに来て食べるか?これは味わいのある味だぞ」と気を聞かせ豊に声を掛けたが必ずしもこの家に居座るという断固した意思を見せるためここから動かず断った。
(今に見ていろよクルト)
それからまた数時間後、家に豊が相変わらずに動かず居座っていることにクルトは焦れったさを感じていた
「そろそろ出て行ったらどうだ、そこにずっと居られても困るのだが」
そしたらソフィアは「別に悪い人ではなさそうだからもう受け入れてあげたら」と同情しキャップも頷いた。
そうすると痺れを切らしたクルトは豊を無理矢理引っ張り家の外へ突き出した。
だがものの数分経つとクルトと豊が帰ってきた。
そしてクルトはメンバーたちにおどおどしながらこう言った。
「今日からこの人をうちに受け入れることにしたから…」
パーティーメンバーは皆一つのことを思っていた「急にどうした」
クルトの先ほどまでの態度が一変し臆病そうにしていた。
そして数分前、家の外ではこのようなやりとりが行われていた。
「もういい加減にしてほしいのだが」
(もうここまできたら奥の手を使うしかないか)
豊はただそこで長時間居座っていたわけではなかった、クルトの頑固さは豊が一番よく知っていたためこのまま居座っていてもダメだろうと思っていたのでこの状況を突き破る案を一つ考えていたのだ。
「俺はクルトの秘密を全て知っている、パーティーメンバーや他の人物にバラされたくなければ素直に受け入れてほしいのだけどな」
「何故俺の名前を知っているんだ、それに秘密も」
(そりゃクルトという人物は俺が作ったからな)
クルトは見知らぬ人物に名と秘密を知られていることに動揺を隠しきれなかった。
(よし、もう一息)
「例えば気が強くて不愛想だけど影で誰にも見つからないように心踊りながら編み物やお菓子作りとか普段と違う可愛らしい部分があること。嫌なことがあってストレスをため込むと発散するとために夜中誰もいない街を全速力で大声を出しながら走ったりすること。自分に悪いことなど何を言われても気にしないと皆には思われているけれど実は裏でシクシク泣いていたこと。机と壁の隙間に隠してある筆記長には人に見せられないほどの恥ずかしいポエムを書いていることも、その筆記長に書いてあるポエムの文面は…」
「もうやめてくれ…」
いつのまにかクルトは豊による精神攻撃で倒れていた。
「人に尊敬されているクルトがこんな秘密をしてしまったらみんなから敬遠されるだろうな」
そしてクルトは突然立ち上がりこう言った
「よし受け入れよう」
(動揺しすぎだろ)
そしてクルトは正式に豊を受け入れることが決まりお互いに自分のことを紹介した。
夜中、クルトとルシアがテーブルで話し合っていた。
「クルトはあの豊さんという人と知り合いではなかったの?豊さんがうちの家に来て私が対応して話している時にクルトの名前を知っていたから」
「いや俺も驚いたさ、外であの人物と話しをしている時に俺の名前を言っていたからさ」
「実はどこかで会っていたというのはない?」
「俺は記憶力が鮮明だから街ですれ違った人物さえ覚えているし一度面識があったら覚えている」
「だがやっぱりこんな謎の人物を受け入れるべきではなかったのか」
「まあそこまで悪い人ではなさそうだから大丈夫だと思うよ」
「それよりクルト、なんであれだけ豊さんを受け入れることに否定的だったのに家の外に出て帰ってきてものの数分で反対から賛成の立場になったのが疑問なんだけど?外で豊さんと何かあったでしょ」
「それは俺の名誉にかかわるので答えられない」
「え?」
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