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 ついに僕の力を試す時が来た。意思疎通の力を使ってスライムを説得して、この場から去っていってもらおう。それならお互いに傷付かずに戦闘を終わらせることが出来る。


 もちろん、力の発動までに攻撃されちゃう可能性はある。ただ、スライムは動きが遅いから僕のところへ辿り着く前にそれが間に合うかもしれない。だとすると、力を試すには好都合な相手なのかも。



 ――うん、不安はあるけどきっと大丈夫。あの巨大な岩のモンスターにさえ僕の力は通じたんだから。


「…………」


 僕は深呼吸をして心を研ぎ澄ませると、スライムの方へ意識を集中して念じ始めた。


『戦うのはやめよう。僕は敵じゃない。だから襲わないで』


 清らかで偽りのない気持ち――。


 親しみと慈しみと無垢な想いをスライムに伝え続ける。


 すると温かさと穏やかさが胸の中に満ちていって、まるで柔らかな雲のベッドの上でお日様の匂いに包まれているかのような感じがしてくる。僕自身もすごく心地良さい。



 その直後――



「ん? スライムの動きが止まった?」


 驚愕したようなミューリエの呟きが後ろから聞こえてくる。


 事実、通路の奥にいるスライムは体の伸縮を止め、金縛りにでも遭ったようにその場で固まっている。さらにわずかな間が空いたあと、スライムは伸縮の方向を反転させて通路の奥の闇へと消えていく。


 どうやら僕の力が発動して、効果が出たみたい。嬉しくて思わずその場で跳び上がる。


「やったぁ! 僕の力が通じたっ!!」


「もしかしてこれはアレスがやったのか? ……そうか、熊を退けた時の力か!?」


 ミューリエが目を丸くしながら、納得したようにポンと手を叩いた。さすが僕のやったことの詳細にすぐ気付いたみたいだけど、驚いているみたいだから内緒にしておいた甲斐はあったかな。


 僕は少し興奮しながら満面の笑みをミューリエに向ける。


「うんっ、ご名答! モンスターにも通じるって分かったんだよ!」


「なるほど、これがアレスの奥の手か! 確かにこれなら最奥部まで辿り着けるかもしれんな!」


「でしょっ♪」


「アレスよ、これはすごいことなのだぞ! 魔族であってもモンスターの使役には苦労すると聞く。それを簡単にやってしまったのだからな。やはりお前はすごいヤツだ!」


「そ、そうかな? てははっ!」


 ミューリエに褒められると素直に嬉しい。


 こうして僕はスライムとの遭遇を無事に乗り越え、洞窟の探索を続けるのだった。



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https://kakuyomu.jp/works/16817139554483667802/episodes/16817139554484635086

 

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