スライムに接近しすぎると危険ということなら、選択肢はひとつ。逃げの一手だ!


 もちろん、これはネガティブな意味での逃げじゃない。それがこの場では最善だと思うからこその選択なんだ。意思疎通の力を使うにしても確実に効果が出るって保証が現時点ではないんだし、僕の気付いていないリスクが潜んでいる可能性だってある。


 僕は視線を前に向けたまま、後ろにいるミューリエに向かって囁く。


「ミューリエ、スライムは動きが遅いから僕は逃げる。無理に戦う気はないよ。一気にスライムの横を駆け抜けるから、そういうつもりで後ろから付いてきてね」


「スライムを相手に逃げるだと?」


「逃げるのも戦略のひとつだよ。逃げるのは禁止されてないよね?」


「確かに……。もっとも、いつもうまくいくとは限らんがな。もし回り込まれてしまったらどうする?」


「どうしても逃げられなかったら、その時は腹を据えて戦うさ」


 そうは言ったものの、僕の心の中には絶対に逃げられるという自信があった。根拠はない。ただ、ミューリエの指示で走り込みをしてきたから、そういう気持ちになったのかも。



 →48へ

https://kakuyomu.jp/works/16817139554483667802/episodes/16817139554484731493

 

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