第14話 カルと呼んでくれ
てか僕のドキドキを返せっ、ただ友達になりたいと言われただけなのに少しときめいてしまった・・・くぅ、やはり僕も女の子だったんだなぁ。
「・・・返事は?」
「えっ!?」
真っ直ぐに瞳を向けられ妙に胸が騒ぎ、素直に瞳を合わすことが出来ない。
「イエスしか聞き入れないから!」
なにその強引な感じ、ちょっとキュンとするんですけど!
普段なら「何ふざけたこと言ってんだ」と鼻で笑うところだが、この時ばかりは完全に雰囲気に酔っていた。温泉のスポットライトが良い感じに闇夜の美少年をキラキラと演出し、湯気も幻想的な世界を創っていく。
まるで本物の王子様みたい・・・
ぼーとしていたら、何時の間にか目の前に近付いていた少年に「返事を聞かせて?」と囁かれる。
待て待てなんだその無駄な色気は! いきなり妙な色気を使ってくるなよ。僕の目と耳がおかしいのか!?
完全にテンパってしまったジェノの思考は上手く働かない。
考えなきゃ、考えなきゃ、考えなきゃ、ちゃんと考えなきゃ―――
「考えさせて下さいっ!」
ガバッと頭を下げると、少年の驚いた気配が伝わってくる。
周囲の「おお、保留か!?」という声も。
その後少年が「イエスしか認めない」と詰め寄ってきたが、ジェノの頭は最早真っ白だった。見かねたメロスが間に入り、少年を宥めなんとかその場は治まった。
「まずお互いの事を深く知るところから始めよう! だから毎日会いに行くよ。親友というのは一朝一夕ではなれないからね!」
熱く闘志を燃やす少年に、ここで毎日はやめてくれとキッパリ言えていればよかった。
メロスも笑ってないで止めてくれればよかったのだが、後の祭りだ。
「ではまた明日会おう、ジェノ・モーズリスト殿! あっそうだ、ずっと言い忘れていたんだが・・・」
花束をジェノに渡し、颯爽と白馬に跨った美少年が輝く笑顔で言い放つ。
うっわ、まぶしー。
「私の名は、カルシェンツ・ゼールディグシュ。カルと呼んでくれ、未来の親友よ!」
走り去る馬の背を見つめながら、立ち尽くしていたジェノは呆然と使用人達の驚愕の悲鳴を聞いていた。
・・・ゼールディグシュ?
ゼール、ディグシュ。
「ねえメロス、ゼールディグシュってどっかで聞いたことない?」
「このヴェジニア国の王家の姓だよー。ちなみにカルシェンツ君は現国王の直系で第三王子様」
あっさりと答えるメロスに唖然とする。そして、
「この国の王位継承は現王が第一、第二とか関係無く、直系の中で一番有能な者を次期王と決めるだろう? 第三王子は僅か10歳ながら幅広い分野で歴史に名を残す快挙を連発している天才らしい。あらゆるジャンルで超越した才能を発揮し、世界各国から大注目されている怪物。ほぼ彼で次期王は決まりだと王様が公言してるってさ」
続いた話に開いた口が塞がらない。
王子様? 天才? 次期王!? アレが!?
「気難しい性格で冷たい氷の王子様って噂だったけど、めっちゃ熱くて面白い子だったね!」
メロスは楽しそうに笑っているが、ジェノの耳にはもはや何も聞こえていなかった。
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