雄と雌

天木英

雄と雌

多くの場合、自分の好きな人の好きな人は自分ではない。カップルや婚姻の成立は冷静に考えれば奇跡である。心が苦しい。この恋は実りそうにない。

そんな時、ふと思う。なぜわれわれ人間は雄と雌に分かれたのか。なぜこんなにも苦しい思いをしなければいけないのか。合理的な理由を聞きたいのではない。もっと他に生命を繋いでゆく方法はなかったのか。雄と雌に分かれなければ、こんな思いをする必要はなかった。理性を備える人間にとってこれは永遠の悩みである。だからこれを題材にした物語は尽きることがない。

一方で、これほど心が満たされることはない。自分の好きな人の好きな人が自分である時、人間が雄と雌に分かれたことに心躍らずにはいられない。

雄と雌、憎むべきそして愛すべき存在である。

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雄と雌 天木英 @Amaki_ei

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