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川の水が冷たい。走り続けて熱を帯びだ顔を冷ますには丁度いい。防具を脱いで水浴びしたいくらいだ。
なんとか豚達から逃げられた。
でもまだ森の中だ。途中何か分からない生物に遭遇もした。襲われない限り逃げた。襲われても逃げた。ひたすら逃げた。
限界だった。何時間走ったかはもう覚えていない。
ここはやや見晴らしのいい川沿いだ。魔物に遭遇してもなんとか逃げられるだろう。なんだったら川に潜って逃げるつもりだし。この川結構な急流だから。
全身汗びっしょりだ。逃げきれた安堵なのか空腹であるを思い出す。
いつから食べていないんだろう。
俺の荷物はどこなんだ?
・・・思い出せない。
手に持っていたのは短剣だけだ。鞘もない。もしかしたら俺の所持品じゃないかもしれない。
唯一装備している防具と服とかは俺のものなんだろう。
腰にぶら下げている小袋には金しか入ってなかった。食べ物は全くない。
そんな事はないだろう。
この森はどう考えても人が住む所じゃない。殆ど手ぶらでぶらりと行く場所では無いはず。
・・・そもそもだ。
俺は一体誰なんだ?
なんでこんな所にいるんだ?
なんで豚達に襲われていたんだ?
倒れていた二人の人間は俺とどういう関係なんだ?多分、もう生きていないと思うけど。知り合いなのかも思い出せない。
全く思い出せない。
・・・・・。
あの豚や途中であった魔物はどういう生物なんだ?見た事も無い。
全く思い出せない事に焦りを感じて来る。
何もかも思い出せないなんて。名前すら出てこない。思い出せるのは豚達から逃げて来た所までだ。
冗談だろうという位思い出せない。こんな事ってあるのか?
参った。
俺はこれからどうしたらいいんだ?
この森に来た目的も思い出せない。そもそも、どこに帰っていいのかも分からない。
俺は一体何者なんだ?
情報を持っていそうな人達は既にいない。彼らが生きていれば何か聞けるかもしれない。
だが、あの状態では助からないだろう。
必死に逃げたから元の道に戻れるかも分からない。
頭がぼうっとしてきた。
思い出す事を拒否しているのだろうか?
・・いや、違う。
頭がチリチリする。この理由は何故か分かる。
俺に何かの危険が迫っているのだ。
遠のく意識を保ちながら周辺を確認するが誰も俺には近づいてこない。
一体なんの危険が迫っているのだ。
どうやら何かの攻撃を受けているようだ。
・・・眠い。
このまま眠りたい。
でも、こんな危険な場所で眠るわけにはいかない。
椅子代わりしていた倒木を持ち上げる。
これにつかまって川を下ろう。
川にも危険があるかもしれない。
でも・・・もう限界だ。
眠さに耐えられない。
ここで眠ったら攻撃を仕掛けたヤツの餌食になるだけだ。
どんどん重たくなってくる思考に逆らいながら川に飛び込む。
川の冷たさを感じながら流れに身を任せる。
もう限界だ。
あとは運に任せよう。
川の流れは早い。水温も低いから長い時間は体がもたないかもしれない。
どこまで運ばれるのかもわからない。
そんな心配事を考えながら俺は意識を無くす。
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