間章

ヒズルの日記(2)

 

 ◇◇◇◇◇


 

 ぼくたちが、カラクレオ村を出発してから、八十夜が過ぎました。

 出発してから、二十夜目にイドさばくに入りました。


 さばくを見たのは初めてです。

 黄色い砂ばかりで、池も湖はありません。

 でも、空はきれいです。

 村の空を思い出します。

 

 さばくは、風が強いです。

 歩くのも大変です。

 昼はあつくて、夜はさむいです。

 風で砂の形がかわり、ふしぎな砂もようができている所もあります。

 

 ぼくとラージャは、顔にターバンをまいて歩きます。

 砂ぼこりをふせぐためです。

 ターバンは、バシュラールにぬい方を教わりました。

 カラクレオ村の村長さまから、いただいたマントを切ってぬいました。


 さばくを移動するのは、夕方から明け方までです。

 ぼくとラージャは、交代でスイレンに乗って、いどうします。

 ラージャは、絶対に馬には乗らないと言いました。

 でも、体力がしょうもうすると言ったマリーレインがむりやりラージャを背負い、その翌日からラージャもスイレンに乗るようになりました。


 バシュラールは、二人が乗ってもスイレンは大丈夫だと言いましたが、スイレンがかわいそうに思えるから、それはできません。

 

 でも、スイレンはやっぱりふしぎな馬です。

 明け方になって、とまる場所を決めると、スイレンは砂を足でたたきます。

 すると水がわいて、小さな泉ができます。。

 マリーレインは、小さなオアシスみたいだと言います。


 ぼくたちは、昼間に水辺でねます。

 水辺は、あまり暑くありません。

 日ざしもおだやかで、ふしぎな力に守られているみたいです。

 

 夕方前に起きると、水辺には短い草が生えています。

 それをつんで、つゆだまを作ります。

 ぼくとラージャの大切な食料です。


 水辺には、さばくの生き物もあつまります。

 ヘビやネズミもいますが、この前はスナネコたちが来ました。

 子ネコもいて、すごくかわいかったです。

 お母さんに甘えていました。

 スイレンが作ったオアシスは、絶対にかれないとマリーレインは言いました。

 それなら、安心です。

 

 

 さばくには、昔にほろびた村もありました。

 干したれんがで作った家の、ざんがいがいくつもありました。

 そこに、泊まったこともあります。

 ぼくの家を思い出して、泣きそうになりました。

 昔は、ここにオアシスがあったそうです。

 今は、動物たちの家にもなっています。

 

 昔は村や町がいっぱいあって、商人や旅人が通ったそうです。

 色々と教わるのは、楽しく面白いです。

 ラージャは、ひまつぶしに聞いてやると言います。

 

 カラクレオ村を出てから、ラージャはころすとか死ねとか言いません。

 うれしいです。

 もっともっと、なかよくなりたいです。



 昨夜は、残しておいた最後の固パンを食べました。

 バシュラールは、明日の夜中には、いせきにつくと言いました。


 そこには、すごく長生きをしている、みこさまがいるそうです。

 死語シガタりのみこ、と呼ばれているそうです。

 みこさまは、ぼくに会いたがっているそうです。

 本当かな?


 

 あさひが、のぼり始めました。

 書くのは、ここまでにします。

 つゆだまをなめてから、ねます。

 今日も、めがみさまが見守ってくださりますように。

 

 でも、むかしのいせきって、どれぐらい大きいのかな?

 早く見たいです。

 楽しみです。



 ◇◇◇◇◇



 † 次章に続く…… †

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