「きょうを読む人」解題
拙作「きょうを読む人」について、解題します。
(URL: https://kakuyomu.jp/works/16816700428558630563 )
自作の解題というのは
この「きょうを読む人」は、同題異話という自主企画がありまして、そのお題として提示されたものに基づいて、考えたものです。
当初は、きょう=経と考えて、何かお坊さんがお経を読んで霊を慰める……そんな話を考えていました。
この頃にはプロットを作らず、脳内で組み立てる方式になっていたので、思い出してみると、確か西行と西行の
じゃあ書くかとワープロソフトを立ち上げて、まずはタイトルを、と「きょう」と入力してみました。
すると、
おそらく、何か古風な言い回しを模索していて、それで書く前にこんな変換をしていたのでしょう。
まあとにかく、こういう「跫」、という字が出て来て、その瞬間、足音をテーマにしてみてはどうだろう、と閃いたのです。
足音を聞く、最初は忍者の話を考えました。でも忍者だと足音を「読む」イメージではない、と思いました。忍者なら足音を「聞く」という動作、あるいは聴覚で感じた瞬間に反応し、逃げる斬るという瞬間的な対応をするイメージなので(少なくとも私にとっては)、「読む」という、「この足音は誰?」みたいな思考を繰り広げる余裕はない、と判じました。
繰り返し申しますけど、これは私がそう考えるわけであって、実際の忍者は「あ、こりゃ仲間だ」とか足音を読むこともあるでしょう。
でも、執筆当時の私は「読む」のイメージが湧かない=書けないと感じてしまったのです。
そんなわけで「跫」=足音という起点は変えずに、もう少し考えてみました。
足音を読む、何かどこかにじっとして待っている感じで、そこで何か音が聞こえて来て、「あ、この人だ」と判じて=読んでいる「人」とは何ぞや、と。
そこで人=茶人というアイデアが、降ってきました。
茶室で主人という立場で、客を待つ茶人……これなら、「あ、お客さんが来た」とか、「このお客さんは誰々だ」とか読んでも自然な雰囲気です。少なくとも、私にとっては(←しつこい)。
茶人といえば、利休。
いや、別に利休以外もいますけど、同題異話を書く時は、そのままカクコン短編に応募できるよう意図していた私としては、短編で見てもらえるには――歴史ものの短編で見てもらえるには、やはり教科書に出てくる人を出す方が良いと判断したのです。
これはかつて今川義元を主人公に書いたとき、結構見てもらえたという経験に基づいています。
利休といえば切腹、という酷い先入観を抱いていた私は、じゃあ切腹を告げる使いを設定するか、とwikipediaを見て、同時代のそれっぽい感じの人を探しました。
探しているうちに、曽呂利新左衛門という人を見つけ、「ああそういえば子どもの頃、『とんち』の本で読んだことあるなぁ」と思い出しました。
「一休さん」や「彦一」とか「吉四六」とならぶ存在、曽呂利新左衛門。
一休さん以外で、実在していたといわれる人です。彦一や吉四六もモデルはいたんでしょうけど、曽呂利新左衛門ほどは知られていません。知られている、いないはこの場合、何の差もないんでしょうけど、私の場合は幼い頃「とんち話」で親しんだ人物、というところが重要でした。
これなら、使える――と。
そんなわけで、千利休を訪ねる曽呂利新左衛門、というアウトライン(といえるほど大仰ではありませんが)ができました。
あとはこの二人を会話させて、何となくこの時代のこの状況、利休が何で切腹させられるかとかそういうことを空想して書きました。
そして書いているうちに……そういえばどう締めるか全く考えていなかったことに気がつきました。
これだからライブ感覚でプロットを整えずに書くのはアカン。そう思いました。でも思いつくままに書くと、思わぬ展開とか解釈とかが浮かんできてそれが楽しいので書いているから、これは仕方ないものとして受け止めました。
……で、そういえばこの時代といえば、戦国時代の「最後の戦い」を飾った人がいたっけ、と思いついたのです。
その人を出して、このお話を締めることしました。
おかげで、何となく「わび」「さび」の空気みたいなものが出たかなぁ、と自己評価しております。
改めてこの文章を見てみると、とりとめのない文章ですね。今に始まったことでもないですが。
そんなことを書きつつ、「きょうを読む人」の解題を終わります。
あまり参考にならないかもしれませんが、何となく、「こんな風に思って書いているんだなぁ」という、思考の軌跡みたいなのを感じていただければ幸いです。
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