「」

雨下上 旧三月(うかかみ ふみづき)

第1話

「ねえ、好きなんだけど」

 少年が気まずそうな顔をする。

「何よその態度!」

 少女は拳を握りしめて怒鳴った。

「す、すまん!」

 平謝りする少年。

「――何で、」

 拳を握りしめたままうなだれる少女。

「……?」

 首を傾げる少年。

「なんで私じゃダメなのよっ!!」

 悲鳴のように叫ぶ少女。


 間隙。


「――お前が駄目なんじゃない」

 ようやく口を開いた少年。

「先に告白できなかった俺が嫌なんだ」

 力強く言い放つ少年。

「……バッカじゃないの!」

 ふん、と鼻を鳴らす少女。


『……』


 そっぽを向いたまま、目を少年の方に向ける少女。

「……、そっちが先に言いたいんじゃなかったの?」

 ぽそりとつぶやく少女

「あ、ああ」

 慌てて考え込む少年。

「はぁ、全く。私も何でこんな奴が良いかなぁ」

 やれやれ、と肩をすくめる少女。

「……絶対、お前に見合う男になる所、とか駄目か?」

 指を立てて呟く少年。

 少年の周囲に視線を彷徨わせ、直接少年の方を向けない少女。

「ふふ、合格かも♡」

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「」 雨下上 旧三月(うかかみ ふみづき) @ukakami

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