第26話 黄鱗きいろ

「もう大体わかりましたけど一応事情を聞いても?」

「うん! あのねー」


 ほわんほわんほわーん。


 まず歩いてたらオーナーさんが話しかけてきたんだけどー。

「やあ探偵さん、いい夜だね死ね!!!」

「うわーーーーん!」

 突然追いかけてきたから、逃げ回って裏の小屋に逃げ込んだんだー。

「くくく……自分から調理されに来るとはいい心掛けだ」

「ぴえーんぴえーん」

 僕、怖くて怖くて仕方なかったから、持ってたバナナをあげて助かろうと思ったんだよね。

 そしたら手が滑ってバナナが落ちちゃって、それを踏んだオーナーさんが――

 ズルッ。ゴン。

「あっ」


 ほわんほわんほわーん。


「……っていうわけでね!」

「アホ!!!!!!!!!!!」

「アホって言うほうがアホだもーん!」

 な、なんですかこの真実は! 最悪の百乗ですか!?

 まじめにミステリーしようとした私がバカみたいじゃないですか!!!

「というかなんでそのことを報告しないんですか!!」

「怒られるかなって」

「もう怒ってますが!?」

「ぴえーん」

 ぶん殴りたくなるのをぐっとこらえます。

 ダメです……ここで殺したらさらに収拾がつかなくなりますよ……。

 落ち着け、落ち着くのです蜂蜜。普段のクールな私はどこに行ったのですか。

 とにかくこれで全ての真実が出揃ったわけです。

 普通のミステリーならこれでおしまいですが……残念ながらこの事件のジャンルはミステリーではなくなってしまいました。

 よって、ここからが、正念場です。

「どうするんですかこの状況! モキョ先生の体質を隠しつつ事件を隠蔽しつつ皆さんに穏便に帰っていただかないといけないんですよ!?」

「爆発オチじゃだめなの?」

「私がパパに叱られるじゃないですか!!!」

 落ち着け……考えるのです蜂蜜。これはすでにミステリーではありません。ならばそれ相応の解決策があるはずです。

 ええっとーーー人が死んでもおかしくない状況でーー誰も悪くないまま脱出できる状況ーーーうーーーーーん……。

 その時、私の天才的な頭にティコリンっとひらめきが舞い降りました。

 そう、かのお嬢様Vtuberホラー実況が全てのヒントでした。

「よし。それではジャンルをパニックホラーということにして全部クソデカ蚊のせいということにしましょう」

「それは無理があるよハニーちゃん」

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