番外編:空の封印編3

 イベントが始まった。浮遊する城は少しずつロザリオがいる場所へ移動しているらしい。プレイヤーの一部は待ち伏せ作戦をして、残りは好きに動く。


 動いている者達は集団行動が取れない者か、出し抜こうとする者達。


 情報を売るように先行すると空を飛ぶ骨のワイバーンに襲われたり、内部に侵入するのにも時間がかかる。


 大手ギルドの連携に乗っかって、イベント攻略を企むプレイヤーもいる。彼らには戦力として活躍してもらう。というわけで仕掛ける地点に城が来た。


「行きます!」


 コボルトが機械に乗り込み、動き出した。機械はコボルトが乗り込むロボットだ。かなり大きく、分類はゴーレム。


 コボルトロボット。そういう名前にランクアップしたコボルトのロボットアームからワイヤーが放たれ、橋が出来上がる。


「突撃!」


 こうしてやすやすと中に入る一同。ワイヤーアームは十体いて、ガトリング砲など持つ遠距離攻撃タイプはいくつもいる。新たなコボルト戦力だ。


 空を飛ぶモンスターを引き受けて、何人も中に入る。


「白薔薇行きます!」


「きゃーーっ!!」


 白薔薇は何度もアタックして来てもらった洋服を着込む。可愛らしく、美しく、派手で似合って性能も良い洋服タイプ。これを見た掲示板は悲願達成したんだと、昔から白薔薇ファンの服飾職人は歓喜しながらついてくる。


 とりあえず奥へと進む兎。兎の中ではあまり口出しせず、別のプレイヤーが攻略して欲しいと思っていた。


(カリバーは元気だね、カリバーに頑張ってもらおう)


 そう思いながら進む時計兎に、遠くにいるマーリンはボソッと呟く。


「運命って残酷だね」


 そう面白そうに呟いた。


 ◇◆◇◆◇


 担当する塔に来ると、巨大な鉱石が光り輝き、中心部へエネルギーを放つ。


 内容では空にある何かを呼び起こすため、ロザリオをコアにしてなにかを蘇らせようとしている感じらしい。


 こうして現れた兎に対して、ようこそとそれは告げた。


 甲冑姿、呪われたそれを纏い、病魔の力を取り込んだ帝国軍人。その男は兎を見て笑った。


「君がここに来てくれたのは運命だ」


「何者だあんた?」


「私?私は………」


 その瞬間、異常な気配を放ち、静かに構える。


「ロザリオの父、我が娘に手を出す不埒ものよ。この場で引導を渡す」


(………凝った設定だな)


「ちなみにゲーム的にも現実的にも父親だ」


「………」


 はい?


「娘が欲しければ私を倒せえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 こうして盛大なプライバシーに関わる私闘が始まった。


 ◇◆◇◆◇


 だんだんだんとロザリオは無の顔でメールを叩き出す。ロザリオはメール機能なんか使わないと言う設定無視してたたき出す。


「あうー?」


『ごめんね、お父さんが営業からGMスタッフに名乗り出たの知らなかったのよ』


『ねえ、これって兎さんになにかしてない? 兎さんは一般人だよ?』


『あっ、いまイベント中だから、お仕事頑張るね』


『待って!いま掲示板とか凄いんだけど、ロザリオを賭けた戦いとか言われて、娘の気持ち考えて!』


『想われてるわね~』


『怒るよ!!』


 ちなみに兎と共にいたプレイヤーは驚き、空気を読んで参加していない。いいのかこれ?


 ロザリオがそう思いながら周りの視線が痛い。大変だねとか良いな~とか。顔が真っ赤になって星樹を抱きしめる。


「お父さんのバカ」


 そう呟くしかできなかった。


 ◇◆◇◆◇


 戦闘は苛烈な一言であった。システムアシストを受けて、ステータスの差もあり強い操られた父親(という設定)に対して、操っているものを探すプレイヤー(兎しかいない)


 っていうか操られてなくても襲ってきそうな相手に対して、兎は全力を出していた。


 フィールドを無尽に走り、それらしいセリフや仕草からそれを見つけ出した。


(くっ、剣を狙いだした。剣にHPがあることに気づいたか!?)


 剣に操られた設定。このままでは負けてしまう。せめて一デスする。そう決めてキエェェェイィィと攻め込む。


 対して兎は冷静に、なにげに本気で捌く兎。野次馬はおーと言って観戦している。


「この武器、まさか」


「できる限り強化した刀。こいつで全ての障害を切り抜く!」


「負けん!貴様にだけは負けん!負けんぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 そう言って距離を取った時、神聖魔法が放たれ、パパは悲鳴を上げた。


「ぐああぁぁぁぁぁ」


「は?誰?」


「シッ、黙ってろ」


 振り返ったプレイヤーはすぐに目をそらす。そこには闇に落ちた聖女並みに怒気を放つロザリオがそこにいた。


「ろ、ロザリオ」


「このままゲーム内でも死んで」


 攻撃用の魔法を放つが、ひいぃぃと悲鳴を上げて防いだ。


 なんかまずい気がするので、兎はとりあえず剣を叩く。


 剣が砕け、悲鳴と共に鎧が砕け散る。それと共に一人の男性が現れた。


「た、たすかぐああぁぁぁぁ」


 だが娘にグーパンされて、杖を振りかぶる。


「ロザリオもうよせ、その人はもう無害だ」


「ーーーーーーッ!!」


 声にならない悲鳴を出して不満そうに杖をぶんぶん振る。背中には星樹を背負い、パパと嬉しそうにする。


『駒はすべてそろった』


 そう声が響くと共に部屋は光に包まれた。

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