第80話・イベント終了

 邪悪なる運営の手は最後は詰めが甘かった。モンスターが人の思考能力で動かすのはなかなか面白い考えだ。だが対人戦はPKのあるこのゲーム内では培われる技能である。


 相当練習したのだろうが、人の手で動かすモンスターの動きを読むのは新鮮で楽しかった。途中で気づかれたっぽいが、まあどうにかなった。


「そう考えるとムカデのヤマタノオロチ戦と亡骸ドラゴンがタック組む戦闘がこのイベントで一番難しいイベントだった」


「お疲れ兎君♪ なかなか楽しいイベントだったね」


 マーリンから水を渡されて飲みながら、ああと呟こう。今回は思うところは多々あった。


「なあマーリン」


「なんだい?」


「もしかしてイベントって、大筋から外れてない?」


 マーリンが胡散臭い顔で笑顔で固まり、鼻先がくっつきそうな距離に近づく。近い近い。


「それあまり言わないでね。私も詳しく聞いてないけど、結構前からルート外れて、その場その場でフォローしてるんだよ」


「外れだした地点はどこだよ」


「………ロザリオが船から落ちて、王国重要NPCから外れたところから」


 マジで? ここからストーリーは素人判断で即興に組まれて落ち着いたらしい。


「ロザリオ様は、まさか」


「ミコト達が意味深に考え込むところは」


「あれぶっちゃけ病魔イベが始まる前にやってるはずだったシーン。兎君があまあまに優しく囲むから、蚊帳の外だったんだよ」


 その辺はすいません。けど仕方ないよね。


「独り占めはダメだよ。私ならしていいけど♪」


「断る」


「私も甘く優しくしてほしいなー」


 マーリンがそんな調子に話しかけながら、頭上の花を見る。


 リーフベアが答える。


「むっはー、あれはまさか」


「知っているのか」


 その時、花が開き、力の波動のようなものが世界に広がる。


 大地に生気が戻りだし、緑が生え、水が流れ、大樹から癒しの水が流れ出す。


 大地が再生され、花が開き、中から命姫より幼い少女が現れる。それはすーと下がろうとすると、マーリンが腕を組む。当たってるぞ。


「当ててるんだよ♪」


 やめろ。やめろ(本音


 嫌じゃいやじゃ、もうパパ活は嫌じゃ。


 そう思っていたら光に包まれて降りてきた少女は泣き出した。あーあ。


 ロザリオが復活してすぐに面倒を焼き始めた。


 こうして新たな世界樹の姫君を向かい入れ、イベントが終了するのであった。


 ◇◆◇◆◇


 イベント終了後、大量の経験値が入り、リーフベアが答え合わせをしてくれる。


 異常な生命力の増加。これが大聖樹をおかしくしていた原因らしい。ただの毒なら解毒しつつ、大樹の兵士などで対処するが、回復魔法と言う他者を本来なら治す魔法による攻撃。


 このまま受け続けていたら急激な生命力により内側から爆発していた可能性があり、それを消費するために大地を覆うほど兵士を生み出していたらしい。


 それらのこともあり、もしも回復魔法を掛けていたら暴走が早まっていただろうと俺の英断が評価される。回数制限のあるキーアイテムの使いどころは難しいね。


 いまはやって生命力が落ち着き、大地に恵みとして開放されているとのこと。大地が蘇り、リーフベアが生まれている。すでに何者かの手により、生まれたばかりのリーフベアはオムツを付けられ、可愛がられている。手が早い。


 この辺りの出現モンスターも変化があり、地形も変わったとのこと。後日探索隊が組まれることに。


 命姫と水晶に変化があった。


「水晶の角が立派になった」


「きゅ」


「身体も大きくなったねえ」


 ロザリオが大聖樹から出てきた個体。大聖樹の本体と言って良いものを抱っこひもで抱っこしつつ、大きくなった水晶を撫でる。


 水晶も大きくなった自覚から、戦闘をこなすようになった。オウマ曰く、竜王の力を手に入れたのだろうとのこと。


「亡骸にあった力は水晶様の物になったのだろうな」


「命姫様もお力を手に入れたらしく、これで魔王様復活が早まりました」


 なにげに命姫が双子ちゃん達、魔法と物理戦闘を兼業する人達レベルに魔法が強くなった。トップレベルの人達だから、一度も戦闘に参加させていないから、中堅プレイヤーぐらいになったな。今後は白薔薇のようにしてもいいかもしれない。


「よしよし良い子良い子」


「マンマっ、パアパ♪」


「はいはいママだよー」


 パパと呼ぶのが俺なので、少し運営に人型系がパパと別の人をママと呼ぶの、いいかとメール出した。ロザリオは気にしていないが周りの目がな。


 俺は良いよ俺は。このことをロザリオのご両親に知られるのが怖いんだよ。


 そんな俺の心境を無視して、子供を育て今後に備える。


 やることが多い。なんか大聖樹辺りのフィールドを誰が管理するか話になり、とりあえず功績順にプレイヤーを述べたら俺が名前に上がり、竜の里、わんわん王国、魔王城と城下町と共に管理することになる。ああ、浮遊基地もあるじゃん。


 紙オムツの量とか心配だからクエスト出そう。ミルクも必要だからミルクもね。後は洋服とかベットとか。


 ベビーラッシュだから、やることが多い。愛好家のところとか、協力関係のギルドもベビー生まれたらしい。


 こうして俺のゲームライフは育成ゲームとすり替わるのであった。

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