第77話・大聖樹の決戦2

「隠し通路ありました~」


 バンダナ部隊が隠し通路を発見。近場のプレイヤーが集まって準備する。


「君達はこの場所の確保と、他のプレイヤーに伝えて」


「と言う訳でいまから無謀にも突撃します。死に戻り覚悟ですので、後の事よろしくでーす」


 動画に向かってそう宣言するプレイヤー。突撃を始めた。


 槍使いのプレイヤーと斥候のプレイヤーが先を進む。


「罠は無いが、いざとなれば俺が囮になる。落ちた時よろしく」


「ワンアクションや隠し部屋の全体図は動画に撮りたいね。死ぬならなにで死んだか分からないと」


「全部で六窓あるし、見てる人も多いからそこは期待だな」


「ああ、とりあえず俺なら一撃死は無いだろうから、耐えられると良いな」


「いまのうち、防御魔法使っておく?」


「だな。死に戻りは覚悟しておこう。俺も嫌な予感がするぜ」


 こうして本来仲間を守るタンクが守られる中、奥へと進む。広々としたフロアに出て、周りを見るに樹の真上に出たようだ。


「広々とした石舞台」


「大聖樹の真上にある石舞台で、なにかありそうな雰囲気」


「ここ絶対浄化ポイントの一つだよね? 亡骸ドラゴンと戦えそうなところだよ」


「ああ、急に来ても良いようにかま」


 構え、そう言いかけた時、横から何かが押し寄せて、その頭部をかみ砕いた。


 ポリゴンになり死に戻ったプレイヤーに悲鳴を上げて、武器を構えるプレイヤー。


 俺らここで終わりか。そう思いながらせめて全容を見ようとする。


【邪魔、ジャマ、じゃまナ者ドモ】


【我ラに仇名す、オロカものドモ】


【かみ砕く、引き裂く、呪い倒す】


【我らガ我ラ、八岐大蛇】


【イザ、死合おうゾ】


 紫の液体を中心に生える、ムカデのような首。刃のような歯を持ち、火を纏う者や、氷を纏う者。雷電する者や風を纏う者。


 八頭の首を持つ病魔が何かに覆いかぶさり、プレイヤーへと一斉に襲い掛かった。


 ◇◆◇◆◇


「それでミコトさん達はなんて?」


「そんなところ知りませんって涙目です。少なくても古代の文面でもそんな病魔がいるなんて文面は無いそうです」


「バンダナ、空間魔法レベル高いからな。当時は見つける前に追い出されたか、見つけても即座に消されていたか」


「とりあえずそこを調べないと浄化は無意味と見て、ミコト連れ込んで平気?」


「いま親衛隊など有志が突撃してますけど、人数制限がありますね。12人しか入れません」


「あと強いですね~攻略最前列のプレイヤーも下手すると一撃で消されてます~」


 そんな話をしながら、そうかと呟き、んーと考える。


「よし、一通りプレイヤーが行って落ち着いたら、俺、バンダナ、白薔薇が先行するよ。そして」


「了、倒すんですね」


「違う。違わないけどまだだ。その部屋の様子を徹底的に見る」


「見るですか?」


「一つ首を落とすとか、部屋の中にギミックが無いか調べたりする」


「むっはー、吾輩も連れてってほしいのだ」


「その心は」


「むっはー、その場所に行けばそこがなんなのか分かるはずなのだ」


 リーフベアがそう胸を張って言うので、5人は決まった。


 こうしてやるべきことを決めて準備に入る。


 とりあえず避ける事に特化した俺とバンダナ。倒す時の戦力で白薔薇が居る中で、この部屋の謎を解き明かす。


「亡骸が来る可能性がある。カリバー達にはその場で倒せと言っておいてくれ」


「分かりました」


 こうしてすぐに行動に出るのであった。


 ◇◆◇◆◇


 部屋の中に入ると、すぐに一頭、襲い掛かってきたから避ける。


 レベルの高いクロにまたがり、騎乗するバンダナと動きやすさと速さに特化した俺が避けて、その後に白薔薇が突撃して吹き飛ばす。


「硬い、です!」


【むだ、無駄、ムダなり】


【おとナしく軍門ニ下れ大聖樹ッ】


「ここが大聖樹の攻撃ポイントか、となると………」


 とりあえず抜刀はせず、石舞台の上を駆ける。


 壁は無く、石舞台が宙に浮かび、樹の上にある様子だが、根っこがある。石舞台に張り付く根は全て、紫の液体、八岐大蛇の中心へと続いている。


「根の先に大聖樹の大事なもんがありそう」


「その通りなのだ!」


 リーフベアが飛び出そうとして抱えながら、無数の攻撃を避ける。


 岩石を浮かせて放つ首、毒を纏う、毒攻撃の首。


 後は火、風、氷、雷、水が迫る。


 足を動かし、転びそうな体制で前進しながら安全地帯に流れ込み、もう一頭。黒い刃を持つ頭を見る。それはずっと何かを狙うように液体の中心を見て居る。


「リーフベア情報を」


「あの黒い頭が狙っているのは大聖樹の本体なのだ!いま本体を直接攻撃されていて、それを守る為に騎士が無限に湧き出てるのだ」


「なら騎士はここに来るはずだ。なぜ来ない」


「この空間、いまのいままで吾輩達ですら分からなかったのだ。たぶん、どれかの首が空間魔法で隠しているのだ」


「なるほど、八首目は空間魔法の使い手か」


 そう呟いた瞬間、ギロリと黒い首がこちらを見た。すると足が何かに引っかかった。


「なっ」


 火の首が燃え上がりながら迫る中、ブレイブガードを発動させて防ぐバンダナ。ナイス。


「ずるい手で邪魔して来やがった」


 ともかく、大聖樹の大事な物はいま防壁によって守られている。守るはずの騎士達は攻撃対象を見失い、目に付いたものを敵として攻撃しているってことか。


「なるほど、これで元気にでもしたら手あたり次第に攻撃する騎士をさらに活気出すなこれ」


 止めてよかったと思いながら、そうなるとここ攻略するには、なにか必要なのか考える。


「って、どう考えても回復秘術だろうけど、こいつらの攻撃から守りながらはきついぞ」


 雷撃が放たれ、急いで範囲から逃げる。リーフベアだけ戻したいが、そんな暇はない。下手すれば一方通行の可能性もあるなここ。


「指示出せないが、情報は持ち帰らせてもらったよな?」


【侍ハート】「はい」

【エタる】「いまユニさんが頭抱えてどうするか悩んでます」


 ともかく攻撃を仕掛けつつ、様子を見るしかない。


 そう思っていると、空が暗くなった。


「やばっ」


 そう思ったとき、急いでマントと盾で防御する。おかげで直撃は防いだが、亡骸ドラゴンが空を飛んでいて、誰かが着地した。


「ごめん兎ッ!ここまで逃げられた!」


 カリバーがそう言って現れ、何人かが死に戻った。ここまで張り付いて移動したらしい。


 相手の攻撃手段が増える中、カリバーと俺はどうするべき話し合いながら石舞台を駆け巡る。

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