第75話・大聖樹

 すぐに現れすぐに去るご両親に戸惑いながら、色々話し合って病気に付いても色々聞いた。


 大きな手術をした後で、VRゲームで仮想の身体を動かしながら、現実の身体を動かす練習をしているらしい。病気はこれで治ったかどうか分からず薬は続くようだ。


 運が良ければ治るとのこと。治っていた欲しいと思いながら色々な話をした。


 それぞれのゲームの目的。マーリンは大魔法使いとして活躍する事や、双子ちゃんは二人して有名になる事。


 カリバーは攻略の最前線で活躍したい事や、ジャンヌは聖騎士として活躍したい。


 ユニは全てのモンスターのテイム。俺は面白ければそれでいいと。アリスは俺などに謝り、ちゃんと楽しみこと。


 そんな話をしながら優奈の話になる。普段なにをしているかなど、色々話をした。


「時々病気のことで怖い事があるけど、いまのボクは幸せかな?友達もできたし、ゲームも楽しいし」


「そうか、なら頑張ってクエストをクリアしないとな」


「うん。竜の里や魔王城はでき始めたばかりだもんね。命姫や水晶の先代、彼らの大切な場所を守らないと」


「そう言えば、設定って生きてるの?ロザリオ?」


「あーどうなんだろう? 冒険者じゃないのに神聖魔法スキルは高いよ」


 踏み込みたいけど踏み込めない会話を初め、ゲーマーは目を泳がせながらマーリンと優奈の会話に耳を傾ける。


 ◇◆◇◆◇


 ホントどうするんだろうね。今回で欠片を演出したいって言われてるけど、兎さん達だからなあ………


 目線を泳がせている兎さん。本棚の方を見て居る。気になるのかな?


「ところで最近はどうなんだ? ゲームも長くログインしてるみたいだけど」


「うん。実は先月まで無菌室にいたんだ。いまは体調も良くなってるから、お試し期間。良くも悪くも少ししたら無菌室だけど、だいぶ良い方向だって先生が言ってた」


「そ、そうか。そうか……よかった」


 本当に嬉しそうにみんな微笑む。うん、まだ油断はできないけど、治る兆しは見えてるらしい。


 このままどうなるか分からない。治った自分は、ロザリオなのだろうか? あまり元気な自分はロザリオしか想像できない。


 そんな話をしながら、そろそろ時間が来る。


「それじゃ、俺達はそろそろ」


「う、うん。それじゃ」


「またな優奈」


「………うん。またねみんな」


 今日、家族やゲーム以外で始めて幸せを噛み締める。


 このまま病気が治れば、もっと幸せになれるかな?


 神様、ゲームも良い方にして欲しいけど、ボクの病気を治してください。ボクは心からそう願った。


 ◇◆◇◆◇


 いや、初日が休日でよかった。ついに封印が解かれる日。封印前に陣地を構えるプレイヤー達。


「白薔薇、準備は良いか」


「了、委細問題なく」


「バンダナ、やる気は………バンダナ?」


 後ろに控えているはずのバンダナを見ると、白いコボルトとなにやら話し合っている。


「頑張ってくださいバンダナさん」


「うん、任せてください」


 なんかいい感じの様子に微笑ましく見つめるユニ。あの目は犬が増えることを期待する目であり、結婚式をノリノリでしている時の目だ。勝手に夫婦を作らせて子供を増やしているからなユニは。


 バンダナはすいませんと謝りながら、腕に白いスカーフを巻きつけて現れる。そうかお守りもらったのか。よかったなバンダナ。


「勝つぞバンダナ」


「はい。この地は僕が守ります!」


 そうして意気込む中、ついに時間が来た。


 時計が鳴る。どこかで時計の音が鳴り響き、少しずつ壊れていく。


 目の前の空間が少しずつ砕けて良き、巨大な樹が現れ出す。


「うわあ」


 巨大な大樹に寄りかかるのは亡骸であった。紫の液体を流して、大樹を腐らせるそれに、ミコトは叫び声を上げた。


「そ、そんな、竜王の亡骸がッ!?」


「あれは」


「そんなことが」


「どうした?」


「病魔が竜王の亡骸に憑依してますッ!?」


 その瞬間、不愉快な風が巻き起こる。亡骸の翼が、紫の液体を纏いながら広がった。


【メザメ、メザメの時キタル】


「喋ったッ!?」


【ウラミ、ツラミヨ我ガ物ニ。大地ヲノロエ、大地ヲケガセ!!大聖樹ハ我ガ物ナリ】


 液体から現れるのは大樹の騎士に液体が憑依した憑依体であり、大聖樹から無限湧きする大樹の騎士。そして各方面から大樹の騎士が攻め込んで来る報せが入る。


『ワールドクエスト 陸の封印。大聖樹を病魔の手から救え出せ』


 そうクリア条件が出て来るが、まずなにをすればいいかわからない。


 ミコトを正気に戻して、俺達がするべきことを聞く。


「竜王の亡骸はもはや倒すべき敵、ですが真にするべきことは、大聖樹の浄化です」


「秘術を持って、大聖樹の元に行き、浄化する。それしか手はありません!」


 モミジがそう言うが、リーフベアの方を見る。大聖樹はどうなっている?


「助けを求めているのだ」


「このままじゃ大聖樹は穢れ、悪い物を生み出す樹になるのだ」


「回復魔法?大聖樹は元気だぞ? なぜ使うのだ?」


 やはり大聖樹は問題ないと言っているが、紫の液体に使っているのに大丈夫なのか?


「兎!どうする」


「………亡骸と倒したい奴は亡骸へ。残りは大聖樹へ進む」


「しかないか。了解!」


 こうしてクエストは始まり、多くの人達が見守る中、戦いは始まった。

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