第72話・アップグレードと運営側6
ワールドクエストが終わりかける中、装備を全てアップグレードできた。
「新たな金属オリハルコン。こいつのおかげで兎さん達の武器を強化する事に成功しました」
なんでもオリハルコンは神鉱石と言う名前であり、ベヒーモスはそれを大量に所持した、または無から作り出す事のできるモンスターであったらしい。
その外皮には大量の神鉱石が含まれていて、それを取り出し、魔鉱石と融合させる事に成功した。
俺の持つ村雨も強化できた。浄化の範囲が広がり、悪魔特攻と死霊特攻が付いた。アンデットに強くなったな。
鎧の方も強くなり、騎士の姿に苦笑する。別に神技でも狙っている訳でも無いんだけど、カッコイイ武具は良いね。
「やあやあ時計兎君」
マーリンもロープなどを強化してもらい、かなり嬉しそうである。
「これで次のワールドクエストが来ても対処はできそうだね」
「確実に魔王城と竜の里がメインだからな、前線に出られないのは困る」
マーリンの方がレベルが高く、高火力、広範囲魔法使いとして活躍するだろう。今度はおそらく無限湧きするモンスターだからな。プレイヤーもそれ用にカスタムしたりしている。
爆弾なども大量に作った。さすがにロボットとかは用意できなかった。図面があるっぽいけどね。
「今度の戦闘は任せておきたまえ」
「おう、頼むぞマーリン」
「ああ、任されたよ♪」
そんなやり取りをしている時、ロザリオも新しい装備に身を包んでやってくる。ロザリオはMP消費を抑え、回復量を上げたりと色々とする事がある。
「ミコトさんから大樹を癒す術も習ってるよ」
「大聖樹の事か?」
「うん。今度こそ大聖樹の暴走を止める為に、秘術として研究されたものだって」
「………」
「? どーしたんだい?兎君?」
「それ、そのまま使って平気か?」
「どゆことだい?」
マーリンが首を傾げる中、俺はとある考えをそのままいう。
「ここの運営、絶対に町の施設を破壊したがってるから、なにかギミック解かないといけないようにしてる気がするんだ」
「メタいメタい」
「………兎さん、ゲームだからってそんな事を言わないで欲しいな。良い人達だし、言っちゃ悪いけど、兎さん達がそう言うから、NPCの人達がウンエーって言う悪い人がいるって思ってるから、悲しい事になってるんだよ」
ロザリオがそんな事を言うが仕方ない。生みの親が恨まれているこの状況は仕方ないんだろう。諦めてくれと言っておく。
ロザリオどころかマーリンからも何か言いたげな顔をされる中、俺は考えている。
「元々大聖樹に異常は無いとリーフベア達が言っている。そんな中で回復魔法を使ったところでどうにかなるとは思えない。必ず失敗する」
「悪い方に転がるのかい? 回復魔法だよ?」
マーリンはしっかりと説明する。別に回復魔法にダメージ判定は無い。これは色々な検証班が検証した結果だ。アンデットは無効化されるだけでダメージ判定にはならない。
生物の減ったHPや、異常状態を治す魔法。蘇生魔法は見つかっていない中、これが回復魔法である。このゲームではそういう能力であるはずだ。
「体力全快状態で使っても何も起きないから、大丈夫とは思うけど」
「念には念を入れないと、アリスから仕入れるのは反則だからな。手持ちの情報で推理しないと」
「いまあの子、ウンエー打倒を掲げるコボルトに半泣きで相手してるよ」
「兎さん、お願いだから訂正するなりして欲しいんだけど」
だが断る。
「兎さーん………」
ロザリオとそんな会話をしながら、俺はアップグレードした装備と共に、肩慣らしに出かけるのであった。
◇◆◇◆◇
「………メタいメタい。兎さんがメタ発言で予言してるぞ」
「ゲームプレイヤーですからね、他の所も似た発言はありますよ」
ゲーム内に何か起きていないか確認するゲームスタッフ。今度のワールドクエストの要注意人物達のログを見ながら、今後の様子を組み立てていた。
「さすがに初見でバレる、かな? 状況に流されてくれるのなら助かるが、途中で絡繰りに気づきそうだな」
「情報は出てますし、検証されてもそこまでのことはされていませんからね。気づかれないと祈るしか」
「だよな。少なくても大聖樹が健康体であるとリーフベアが表明しているから、秘術による回復は止められそうだ。後は仕組みに気づくまでの間に、どこまで各地で暴れられるか」
「いくらなんでも、どこもノーダメージってのは伝説の災害にしてはいささか舐められてますからね」
「ああ、メタいがこうして声を聴き対処してゲームを難しくするのも仕事だ。病魔シリーズはこの世界の根本的クエスト、クソイベと言われても難しくしないと」
「石動さんは泣きそうだけど、私ら壊す事も仕事ですからね。恨まれて当然だから」
苦笑するスタッフ。そこに新しいスタッフがログインしてくる。
「何の話ですか?」
「今度のイベでは、それなりの被害を出そうって話だ。現場はどうだ?」
「仕上がってますね。百人以上キルを目指してます」
「アリスちゃんも泣くぞおい」
そう言いながら元のデータを確認する。
「トッププレイヤーから有名プレイヤーの疑似AIでの戦闘訓練に加え、NPCサポートありでの戦闘経験を積ませるとは。日をまたぐつもりですね」
「一日徹夜させるつもりですね。それでもログアウトするプレイヤーが出るから、被害はそこをどう抑えるかですね」
「ふふっ、我らウンエーの恐ろしさを身を持って味わってもらおう」
「良いですね、ゲーム内で言います?」
「やめてくれ、叩かれそうだ」
そんな会話をしつつ、ワールドクエストは百%になり、次のワールドクエストが始まる。
新たなワールドクエスト『陸の封印・大聖樹の暴走』が始まろうとしていた。
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