第61話・攻略先

 人魚島、浮遊基地と新たな移動先ができて、プレイヤーは新規もベテランも含めて活動が活発化し出す。


 もちろん、攻略前線組のプレイヤーも新しい事に手を出す話が出て来る。


「というわけで、そろそろ島以外のところ行くよ」


「おう、俺もそうするから。なんかあったらよろしく」


 カリバー達『神技の騎士団』や『黄昏の乙女』達が浮遊基地へ拠点を移して活動。人魚島や浮遊基地の運営には『幻獣愛好家クラブ』と『従者同盟』が協力して運営する中、名の無き島はわんわん王国として人気が出始めていた。


 海路しか行けないが、プレイヤーが流れて来る。わんわん王国に来るプレイヤーの目的は複数ある。


 一つは煉獄の王、キングケルベロスへの挑戦。


 キングケルベロスはHPを無くしても負傷するだけであり、退治することはないらしい。フラグをしっかり管理すれば何度でも挑戦できる。


 ドロップアイテムは火の精霊石の他に極炎の宝玉と言うレアアイテム、それと角や牙、爪が手に入るようだ。


 少し怪我っぽい様子が見られるが、キングケルベロスは楽しそうに挑戦者と戦っている。


 次にペガサス、各種ウルフ系、シルクスパイダーやケルベロスをテイムすること。


 特にシルクスパイダーやペガサスが人気があり、テイマーやテイムスキルを持つプレイヤーは島に流れて来る。


 それと精霊石の入手と強化。精霊石は組み合わせて雷や嵐と言う精霊石に変えられる。現在のレベルで最良の品物を手に入れるにはここしかないと攻略班がサイトなどで断言しているため、中堅プレイヤーが集まるようになった。


 最後は魔鉱石。いまだ発掘されるそれは、他の所と違い格安で取引されている。運搬料がゲームでも発生する為、現地で買って、現地で武器などにするプレイヤーが集まっているのだ。


 ファーマーの方々も品揃いが良いここで種などを手に入れに来る為、島は潤う。


 そんなこともあり、各種フィールドで復活するボスモンスター退治も積極的にしなくて済む時計兎は、ロザリオとのんびり過ごすか、転移のスクロールを使い、王国で情報を集めるなどしていた。


 ◇◆◇◆◇


「んー良い情報だ。これはスクショ案件ですね」


【侍ハート】「ですな」

【ハカセ】「今度紹介してください」

【オウル】「お願いします」


 図書館のプレイヤーから懇願される、とある場所の図書室で情報を探る俺。動画配信しているから場所は分かるが、分かっても踏み込めない場所に俺はいた。


 王国教会の奥にある図書室。ロザリオの手紙でここの責任者と顔見知りになったから、情報を求めて訪れている。


 今現在、プレイヤーの多くは海の災いを倒した者としてNPCに知られるようになり、新しいイベントやクエストが解放されていた。新たに行ける場所も増えて居て、そこで情報を集めて進める手筈なのだろう。


「なにかあったかね?」


「はい、図書室の謁見、ありがとうございます。おかげで情報を手に入れました」


「それはよかった。まあここにある知識は膨大だ。いつでも入れるように門番に言っておこう。仲間さんも五名なら無条件で受け入れるからね」


「はい」


 ちょっと図書館の人と関わらない方が良いな。いまコメント見るとパーティ人数分、権利があるから話し合いがしたいとフレンドメールが来たぞ。


 ざっと見て教会の奥にある図書室は小規模の図書館ぐらい本が収納されている。確かに早い内にここに保管されている情報は確保したい。もしくばロザリオ関係のクエストをクリアして欲しい。あの子最近は外に出て、プレイヤーに接してはそれっぽいクエストを発生させている。


 帝国、王国教会関係のクエストと呼ばれていて、ロザリオ本人は友好的に接してはくれるが、ゲーム的な好感度を上げないとイベントを発生させられないようだ。


 マナーの悪い奴が問答無用に早く情報を出せと言ってコボルト達に牢にぶち込まれた。本当のNPCにはなにも知らないロザリオを脅迫するように見えたよう。攻略サイトもその辺の注意を呼びかけたりしている。


 こうして先にロザリオイベントをこなした俺は、教会の図書館を利用できて、情報を手に入れた。後は場所に向かうだけだ。


 浮遊基地? あーあそこ攻略先にすると白薔薇が不機嫌になるから俺はしないよ。イヴと仲悪いし、イヴと共に俺の物になった魔導人形達はどうも白薔薇より大切にされたい感が出ているから苦手なんだよ。


 言っちゃ悪いが、白薔薇の方が大事だよ俺。上も下も無いと言えない、俺には優先先があるんだ。君らか白薔薇となれば白薔薇を取る。


 浮遊基地はユニ達や攻略前線組に丸投げしている。適度に好感度は保つけど。


「んじゃま、白薔薇回収して向かいますか」


 そう言ってスクショした画面を見る。画面には古い地図が映り、魔王城と書かれた場所が書かれている。


 魔王。彼女達は結局、竜や魔王に関しては情報提供してくれなかったからね。自分から取りに出向く。


 こうして今度は本土攻略を開始する。島の方が長引くと思っていたが、存外早く、本土攻略が始まったな………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る