第60話・新たなフィールド

 人魚島の設備を整頓、宿屋やレベリングなどできるフィールド確認している頃、ユニがやっとログインした。


「クロちゃん達が私の事を忘れようとしてるって本当ですか!?」


「オメーどういう説明したんだ」


「テヘペロ♪」


 マーリンがそんなことをしながら、クロの元に急ぐユニ。しはらく来なかったから、現れた遊んでくれる人達に喜ぶケルベロス達。呆れる者も居る中、これで時計兎はようやく事務職をやめられる。


「頼むから海路の確認、島の運営を引き継いでくれ」


「分かりました。わんわん王国のために頑張ります」


 こうして話を詰めようとしたとき、誰かが慌ててやってくる


「兎さん大変ですっ」


「どうした?」


「そ、空から空飛ぶ島がやって来ましたッ」


 それに驚き、外を見ると確かに空に浮かぶ島があり、誰かが降りて来てる様子が見えた。


「ワールドクエストが進んだからか?」


 ともかく話を聞きに出向こうか。


 ◇◆◇◆◇


 島に来たのは稼働している魔導人形であり、空を飛ぶユニットを背中に付けた少女達。小さい男の子もいるようだが、基本は少年少女らしい。


「こんにちは、私達は魔導人形浮遊基地に所属する機体です。ここの代表とお話があります」


「はいはい、貴方達はいったいなんなんですか?」


 秘書のようなお姉さんを引き連れた中学生くらいの女の子。長い黒髪ツインテールで小柄な少女は、機械的な部分は耳当てのようなヘットフォンを付けたように見えて、瞳もレンズではなく、普通の瞳のように見える。


 一見すると魔導人形とは思えない感じだが、機械的な装備を持つ少女だ。


「私は魔導人形浮遊基地に所属する支部長、名前は無くカタログナンバーのみで運用されています」


「俺の名前は時計兎、女神の加護によって死ぬ事の無い異世界人の開拓者だ」


「あなた方が予言にあった………」


 プレイヤーは異世界から来た存在であり、姿を変えたり(種族を途中で変えるシステムあり)、死に戻ったりする存在らしい。


 異世界の存在だから、中には元の世界に戻ったままであったりするとNPCには考えられているとのこと。ゲームには関係ないから久しぶりだなこの設定。


「私達は創造主により災いの観測を命じられ、此度海の災いが動き出したと知り、大急ぎでやってきましたが、あなた方が撃墜したようですね」


「ああ、古代人はそこまで考えていたのか?」


「いただけですね。正直文明はリセットされ、魔王は死に、竜も力を失いましたから、もう災いに立ち向かえる者はいないと判断されてました」


 いま新要素出て来たねえ。


「竜や魔王ってなんだ? その辺りを詳しく聞きたいが」


「分かりました。ではお話しましょう。しばらく浮遊基地の滞在許可をいただきたいのですが」


「いいぞ」


「ありがとうございます」


 カーテシーでお辞儀をする支部長ちゃん。


 ………ところで白薔薇、痛い痛い。横腹を突くのやめて。


「浮気です」


「違うからな」


「………」


 不満そうな白薔薇は置いておき、詳しい話を聞くために、浮遊基地は人魚島に滞在することになった。


 人がまた増えそうな要素が増えたな。


 ◇◆◇◆◇


 支部長ちゃんの話を聞くと、観測することしかてきないが、災いに対して対処するように命じられた。


 それとは別に創造主は最後の文明を守るために、魔導人形達に古代の情報を守らせていたらしい。女神の結界や自分達ですら対処できないように防衛装置を配備して、空に逃がしたようだ。


 浮遊基地は八割ほどダンジョンであり、奥に進めば古代の知識があるらしい。外で聞いたり、配信見てる図書館が大賑わい。


「何百年も何事も無かった封印がついに解かれ、地上を蹂躙するところ、あなた方が災いを退けたと知り、我々も手伝わなければと思い、こうしてやってきました。遅くなり申し訳ございません」


「いやいいよ」


 そう言う設定だろうしね。正直に言えば、もっと早く着てほしかったけど。


【侍ハート】「白薔薇ちゃんが不満そうに見てる」

【ナイト】「嫉妬するとこかわゆい」


「それで今後君たちはどうする?」


「はい。私達も主を、マスターを見つけてあなた方の開拓のお手伝いをする予定です。それが私達、魔導人形がするべき使命ですから」


 人魚島、魔導人形確保場所になる。パーティ枠削るから、必需品って訳では無いが人気あるからな。


 マリリンとユニが海路の代金を上げる話をし出した。すでに転移先にあるプレイヤーは来られるが、それ以外は船で来るしかないからね。お金を取る気だぞ。


「それで時計兎様、お願いがございます」


「はいはい」


「私、浮遊基地支部長兼、浮遊基地運搬権利所持魔導人形と契約していただけないでしょうか?」


「ダメですッ!!」


 俺と支部長ちゃんの間に白薔薇が飛び上がる。


「主は白薔薇の主ですッ。新しく魔導人形と契約するのは反対です」


「あっ、魔導人形は一人一機なら困る。白薔薇を手放す気は無いぞ」


「いえ、そんな契約なら、現在活動中の三割の魔導人形が私と同じ命令を守りませんよ?」


 浮遊基地、つまり基地の宿や倉庫番、アイテム屋など運営する魔導人形は古代人の主がいるらしい。もうすでに死んでいるから、新しくマスターを結び直すようだ。


 その権利は彼女にあり、彼女と契約すると言うことは浮遊基地を手に入れ運搬する管理も付いてくるらしい。面倒だがユニは私の仕事ですねと構え、マリリンはお金をたくさん稼ぎましょうと言ってくる。


 白薔薇はその話を聞いて断固として反対するが。


「主に対してそんな言い方は失礼ですよ? 魔導人形をいくら契約しようと関係ないでしょう」


「主は白薔薇の主なんですッ。あなた方の主になるのは反対です」


「旧型の思考パターンですか?なるほど、旧型故に新型の私に主を取られると心配してるんですね」


「白薔薇は鉱山発掘作業戦闘使用の最新型でありますッ」


「私は軍事利用最新型です。貴方とは格が違います」


「やめろ」


 変な争いが起きて来た。面倒だから断りたい。


「支部長ちゃん。君がさっきから下に見て居るが、不浄の大地にトドメを刺したのは白薔薇だ」


「なっ………」


「主の指令通りに動いただけです」


「………そうですか」


 結局支部長ちゃんは俺との契約を望み、主はどうしても俺でないと嫌と言う。契約しないのなら基地を解放しないと言って契約することになる。白薔薇には悪いが新フィールドに入れないと、プレイヤーからのクレームがうるさいからな。


 支部長ちゃんこと『イヴ』と契約した俺は、結果的に浮遊基地も手に入れ、そこの運営を全てユニ達、愛好家に丸投げした。あまり構うと白薔薇がすねるから。


 新たなフィールドにプレイヤーは人魚島に集まり出し、人魚島から帝国や王国の港町、そして我らがわんわん王国の港町へと海路が解放され、多くのプレイヤーが動きだすのであった。

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