新たな開拓

第59話・命姫と水晶

 ベビーカーバンクル事件から少し経ち人魚島に多くのプレイヤーがやってきたりと過ごす今日この頃、時計兎はオーシャンウルフ達で海を探索していた。


 船の上からカリバー達が待つ中、海面に上がる時計兎に気づく。


「どうだった?」


「残ってたぞ」


「マジか」


 実はコボルト達からの情報で、カバの皮膚である鉱石は使えそうと言う話を聞いた時計兎達は、島運営するギルド以外には内緒で海を探索した。結果、アイテムとして不浄の大地ベヒーモスの鉱石が手に入った。


『不浄の鉱石』


 不浄の大地ベヒーモスから生まれた鉱石。溶岩の熱すらびくともしない硬度を持ち、邪悪な力が貯め込まれているが、それを浄化した時、神の力が降臨する。


「女神の欠片と組み合わせだろうか?」


「大きな欠片とか結構あるし、回収しておきたいね」


「とれあえず独占しましょうか~」


 ギルド『従者同盟』のマリリンさんがそう言い微笑んでいた。ここにいる全員は独占する気である。


 いまはワールドクエストが遂行され、変わり出す世界に対して、プレイヤーは情報を集めていたところであった。


「情報集めか……俺も王国とかでNPCとで集めるか」


「それが良いね。中にはエルフの王国、狐人の隠れ里とか、そういう情報が出てるらしいから」


「そうか、まあいまは海の中か」


 人魚の方々に頼んだりして、海の探索をする事を決めて一度島に戻った。


 ◇◆◇◆◇


 日本屋敷、時計兎とロザリオ、ライトとレフト、マーリンのホームとされた家で関係者が集まって話し合ってた。


 ギルドからは神技のカリバーと副ギルマス、黄昏からジャンヌ、愛好家からは不在であり、従者からギルマス『マリリン』、武狼からギルマス『狼牙』、親衛隊からギルマス『セバス』、図書館からクリスが集まる。


 ミ―チューバ―であるクリスは録画状態で会議を進めると頼んでいる為、配信用の会話をすることになっていた。


「なんだ?愛好家はまだ復活してねえのか?」


「すまない、妹共々ランダムでカーバンクルが引けなかったショックが大きく、ログインする気力が無い」


 虎と鳥の世話をしている姉であるジャンヌ。双子ちゃんは復活しかかっているが、ユニはかなりショックだったらしい。愛好家の中ではいまだログインしないプレイヤーがいるとのこと。


 ロザリオはその辺りは分かるから曖昧に苦笑して、白薔薇達NPCはよく分からない顔をする。


「抽選のされ方は分からんが、運が高くないとダメなんだろ? 農園の奴らはその倍、ハズレ引いてるはずだ」


「まあね。その辺に居るモンスターが多く、農業しているとこは見てるからその通りだ。いまだ未発見の新種は三種類、新たに発見されたのは五種類ってところだね。あとはメロディーバードとか当ててる」


「まあ個人にしたらハズレが多くてダメだが、組織として見れば当たりを引けたってところだろう」


 時計兎の言葉にロザリオは遠くを見ながら、わざとらしく呟く。


「なんか5匹も当てられたのは驚かれてたよー……もともとそうなってもおかしくないほど卵は交換されてたけどー……兎さん達もSランクモンスターにして欲しかったてさー」


「うん。問題ないだろうから、そんなわざとらしい言い方じゃなくてもいいぞ」


「Sランクか。やっぱ運が良いってことで諦めれば良いだろ? ハズレもあるって名言されてたんだからよ」


「そう言ってるんだが、復活しないんだ」


「事務職はしっかり成り立ってるから良いが、ただ単に羨ましくてやる気出ないだけなら早くログインしろって言っておいてくれ」


「はーい」


 マーリンがそう言って、ジャンヌは鳥、赤音と虎のシロにご飯を与え終える。


「当たりと言えば、午後のティーナイツどうだ?」


「あそこはナイトメアと言う男の子モンスターが現れた。パジャマ姿で黒い髪の少年だからそんなには」


「卵の奴は兎と同じだったのか?」


「ん?命姫はナイトメアじゃないぞ?」


 それに時計兎とロザリオ以外が驚き、隅っこでクロと遊んでいる命姫を見る。白薔薇は首を傾げながら、狼牙が聞く。


「それじゃ、命姫は別の種族なのか? なんて名前なんだよ」


「鑑定してみろ、ついでに水晶も」


 そう言われて全員が鑑定して驚く。


『??? 名前:命姫』


 普通のモンスターでは無いモンスター。全てはいまだ謎に包まれている。


『赤ちゃんドラゴン 名前:水晶』


 まだ幼体のドラゴン。空を飛ぶことができるが成長次第でどうなるか未知数。無限の可能性を秘めている。


 それに全員が驚き、狼牙はそれに笑う。


「なんでい、午後ナイツレア物だけど一番引けてねえじゃん」


「そう言えば種族名名言してませんでしたからね。午後ナイツさんは命姫さんを先に見てたから勘違いしてしまったのでしょうね」


「どういうことだ?」


「動画配信でってきり命姫ちゃんもナイトメアだと思われてたのさ」


 マーリンがそう言って、こっちも確認してなかったからねと微笑む。


 おとーさんと言って兎に抱き着きながら、兎も頭を撫でてあやす。


「とりあえず命姫の種族が不明なのか置いておいて、海路の話とか詰めようか」


「そうですね、ではこちらの海路の時刻表の説明を」


「はーいでーす~」


 後日午後ナイツは可愛いから良いかと言う話になり、配信を見た視聴者は命姫の存在と水晶がどう成長するか考察するのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る