第57話・不浄の大地対プレイヤー3

 戦いは一方的に見えるが、相手のHPは決して低く無かった。


「くそッ、邪魔するなプテラノドン!」


 邪魔なプテラノドンエネミーがいる中、船での大砲で左右の弱点を狙い撃ち、真正面は白薔薇達が狙い撃つことで着々と削れる中、いまだにHPは高く、外装を崩されながら前進する不浄の大地ベヒーモスの歩みは止められない。


 だが大きく変わり出したのはここからだろう。


「ワオーンッ!!」


 コボルト達だ。上陸した彼らは枝の隙間をかいくぐり、触手を避けて通り、弱点へと刃を突き立てていく。


 それと共にとんでもないことをする男もいた。時計兎だ。彼は砲弾が飛び交う中を身軽に進み、たまに張り付きながら岩登りをしながら、砲撃できない弱点である金の瞳へと刃を突き立てる。


「まだ足りない、こいつを落とすのはまだ足りない……どこだ、どこにある……」


 ブツブツと呟きながら、血走った目で金の瞳を探す時計兎。


 ほぼ狂気的な行為である。味方はそれを知っていたからか、とりあえず無視して砲撃は止めず、気にせず発射し続けた。兎は砲身の向きを気にしながら、死角を狙う兎は必死だ。


 島に守る物がたくさんある兎にとって、なにがなんでもここで終わらせると言う鋼の意思を感じる。それに同意するように反対側で武狼のメンバーや神技の騎士達が張り付き、対処している。兎のように大砲が放たれる中でだ。


「負けてられないぞッ!!ラストアタックは譲るがそれ以外は譲れるか!!」


「ひーおっかねえぞこれッ」


 外装に張り付くだけだとプテラノドンが啄んで来る。だがペガサスナイトがそれを阻み、必死に弱点を削る中。コボルト達はそろそろだと頷き合い、急いで避難する。


 ◇◆◇◆◇


「胃が痛い………」


 ユニは苦しんでいた。いまから巨額の大金がぶっ飛ぶ砲撃をしなきゃいけないと共に、コボルト達がミスすれば一撃で彼らをキルする砲撃を、彼女はしなければいけないと言うし重圧で、胃を抑えていた。


「ああ、コボルトだって可愛いのに……もしもタイミングが早ければ吹き飛ぶのに、トリガーを引かねばならないなんて………ジャンケンで負けなければ………」


「むっはーそろそろ時間なのだ」


 リーフベアに言われて、渋々狙撃手として台に乗り込み、レンズを通して相手を見る。そもそも当てられることができるだろうか?


 無駄弾を撃った場合、どれほどの被害が出るか分からない。


 いますぐアリスと交代しよう。そう思う中、わんこ達が、ケルベロス達がユニの側に来る。


「あなたたち……私を応援してくれるの?」


 それに頷くようにワンと鳴くケルベロス達。それにユニの心が入れ替わる。


 全てを信じて、第二射を撃つと。モフモフに囲まれながら元気になり、当てられると言う謎の自信が湧いて出た。


 よく見れば金の瞳がたくさんある場所を見つけ、そこに照準を合わせる。


「カウントダウン!!」


 リーフベアの声だけが響く中、ユニは全てを信じてトリガーへと指を置く。


「信じてますよバンダナちゃん達」


「5、4、3……2……1……撃ってッ!!」


 放たれた轟音に耳がやられそうになる。


 激突した瞬間、不浄の大地ベヒーモスは先ほどの悲鳴よりも長く、甲高い悲鳴を響かせた。


 ボロボロと破片となる外装。ついでに何人かが海に落ちて死に戻った。


 時計兎とカリバーと武狼のギルマスは必死に横腹などの死角に張り付き、衝撃波や熱気が止んだ瞬間、すぐに上陸する。


「バンダナ、みんな、生きてるか!?」


 崩れる場所で辺りを見渡す。だいぶ削れたからか、もう山二つ分くらいの大きさでしかない。


 代わりに触手のような枝が辺りに生えていて、洞窟らしい入り口を見つける。


 そこから………


「ワオーーンーーーッ!!」


 外装の欠片を外に蹴り飛ばして、オーブを前に出しながら出て来るコボルト達。


「兎さん!!被害者ゼロ。委細問題なし」


「そうか」


「例の作戦も問題なく、このままやれば我々の勝利です!!」


「できるからと言って早まるなバンダナ。だがそれが分かれば幾分か楽だ」


「はいッ」


 一番の問題点が解決してホッとする兎。すぐに動画コメントでユニに報告する。今頃撃ったと言う事実に泡を食って倒れている気がするので。


 魔術師であるマジシャンコボルト達が杖を構えて出て来る。隠された弱点がある洞窟に隠れ、入口を防いで攻撃から身を守る作戦はうまくいった。


 そして不浄の大地ベヒーモスを一撃でキルする方法もできると判断できたのだ。


「よし、あとは本体をあぶり出す。徹底的に弱点を突くぞ」


「はいッ」


「キュー」


 オーブを初め、コボルトやカリバー達と合流して散り、弱点を破壊し始める。


 物語はそろそろ終わりを迎え、戦いはどちらが勝つか、決着を付けるところまで近づいた。


 なお、ユニは泡を吹いて倒れ強制ログアウトした。これは後で多くのプレイヤーが知ることになるが。運営の開発者スタッフも泡を吹いて強制ログアウトし出したのは内緒である。


 ロザリオはその光景を見てしまい、なにしてるの兎さんと叫び声を上げたのを、彼らは知らないのであった。

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