第56話・不浄の大地対プレイヤー2

 人魚島が静まり返る。


「来たぞ来たぞお!!奴が、カバが来たぞお!!」


 迫りくる巨大な山は、少しずつゆっくりと迫りつつある中、海上に出ている船は遠巻きでそれを見ていて、戦闘準備に人が動く。


「むっはー、行くのだ。最高砲撃用意」


「最高砲撃用意!!」


「最高砲撃了解!!」


 大砲など櫓の設置場所は封印の地が判明しておかげで、真正面に設置することができた。


 巨大な砲身を伸ばして、空すら切り裂くと言う薄緑の砲身は美しく、装填される様は圧巻だ。第一発射、砲撃主は時計兎であり、発射操作をする為に操作台に座り込み、静かに焦点を定める。


「第一砲撃、用意………」


「撃ってーーーー」


 リーフベアが叫ぶと共に時計兎がトリガーを引く。第一射が轟音響かせ放たれた。


 空を裂き音を置き去りにし、弾丸は全体を震わせる位置と共に、高レンズにより視認できる弱点となる金の瞳へと激突させる位置。完璧に撃ち込んだ。


「こういうのやらせると彼の右に出る人はいないね」


 船からそれを見て激突と共に海が震え、船にしがみつく一同。


 その時、耳障りな悲鳴が響き渡った。


 キイィィィィヤァァァと言う耳障りな音は、不浄の大地ベヒーモスの悲鳴だと理解した。


 外装が剥がれ落ち、根のような触手がいくつも見えた。剥がれ落ちそうなのを触手が支える破片もあり、いまの一撃で大金と相手HPが吹き飛んだのだ。それに開拓者は勝てると跳びはねる。


「だけどあれ、後二発しか撃てないんだよね」


 ………

 ……

 …


「必要な犠牲なのだ………」


 黙祷を捧げるリーフベアとコボルト達。鍛冶師コボルトや魔術師コボルト達が寝ずの番で作った渾身の作品が大金と共に吹き飛んだ。


 砲身はバナナの皮のようにはがれて黒焦げ、中からの衝撃に耐えられず、内側から亀裂が走り捻じ曲がる始末。


 ざわめくコボルト達はすぐさま解体作業をして、第二射目の準備に入る。


「………再利用できないか。ちくしょう………」


 兎は【鑑定】を使い、砲台を確認した。結果魔鉱石の再利用はできない始末であり、完全なゴミと化した。健気に働く鍛冶師コボルト達も涙を飲み込み解体する。


「さてと、二射目は任せたぞユニ」


「私射撃苦手なんですけど」


「仕方ないだろ。洒落にならない金が吹き飛ぶから、誰もトリガー引きたくないって言うんだもんプレイヤーはッ!?」


 ラッコの為だ殺れ!?と叫ぶと、了解とすぐに切り替わる。


 外が騒がしくなる。砲撃が始まり戦いが始まった。


「白薔薇はこのままリボルバーの運転してもらいながら、俺はっと」


 ペガサスナイトが出番待ちしている。もう少し近づいたら砲撃の中を飛び、上から不浄の大地ベヒーモスに上陸する。


 それまでは砲撃で頑張ってもらわないといけない。頼むぞカリバー。


 ◇◆◇◆◇


「けどそれじゃ、遅いからな」


「ペガサスが一頭、先に出発してます。隊長の読み通りです」


「ダメ稼ぐ為に、やっぱ早めに攻撃しておきたいもんね。僕らも行くよ」


「はいッ、お気を付けて」


 ◇◆◇◆◇


 コボルトを四体連れて、時計兎は空を駆ける。


「はいはいごめんよはいごめんよー」


 コボルト達は震えるのに耐えながら、相手を見る。いまからこいつを倒しに、僕らが活躍しなければいけないのかと息を飲む。


「準備は良いか」


「はいッ」


「よし行って来い」


 その時、パラシュートを使い、次々と降りていくコボルト達。良し次だと戻って次のコボルトを回収しに出向く時計兎。


 上陸戦はコボルト達の出番であった。


 ………

 ……

 …


「隊長、皆上陸したであります!!」


「うん、なら各自速やかに行動しようか」


 バンダナはそう言って、すぐにツルハシで岩肌を叩く。壊れる気配はなく、正面は熱い。溶岩が流れているのと共に、先ほどの衝撃の余波が残っている。


「諸君、念の為に言うが、第二射を僕らは自力で防がなければいけない。ここまで来た諸君らは問題ないだろうが再度問おう。覚悟は良いか?」


「あの日、ゴブリンに蹂躙された日に、我々の命は尽きて居ました。いまさら惜しむ命ではありません!!」


「ですが兎さんは生きて戻れと命じております!!」


「そうだ。僕らは生きて帰らなければいけない。こいつはあの島を襲い終えたら、次に僕らの島を襲う可能性が高い。こいつはここで倒さなければいけないんだ」


「隊長、第二陣が下りてきました!!」


「それでは諸君、狩りの時間だ。誰が一番多く目玉を狩るか。勝負と行こう」


『『『イエッサー!!』』』


 コボルト達が各地に散り、目玉を攻略し出した。


 ◇◆◇◆◇


 白薔薇はいま集中していた。


「……撃破……撃破……撃破……撃破―――」


 淡々と黙々と視界に入る目玉を攻撃して、いち早く外装を剥がす。


 数をこなしていかないといけない。ともかく数を、口を開いたときできる限り、目玉を穿つ。


「委細問題なく、着々と、淡々と、黙々と………」


 狙撃手として求められている数を射貫く。白薔薇は静かに主からの頼みオーダーをこなす。


「島には一歩も入れさせない。ですのでここでデリートします」


 そう言って本当の機械の一部として、外装を崩しだす。


 傍にいるコボルトはそのスピードを維持する為に、チームワークを合わせて砲弾を設置、リロードさせて撃たせていた。


 一定の数が足りなくなるとあるコボルト達が弾丸を持って来て、弾が無くなるとすぐに装填するコボルト達。


 他の個所もコボルトが狙撃手になっているが、基本は白薔薇が相手取る。


「撃破」


 トリガーは止まらなかった。

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