第54話・全てを使い切る気で行こうか

 ロボットらしい機械のゴーレムとの戦い。神技、武狼などの攻略最前線メンバーの元に倒され、奥へと進むことができた。


「プレイヤーのみ解ける結界は久しぶりだな」


「本土だと結構見かけるけどね」


 ゴーレムから歯車などが手に入り、なにかの部品として使えそうなアイテムが確保される。中には魔鉱石製品があり、溶かせば再利用可能だ。


 結界を解き、中に入って考察班。図書館のメンバーが中を調べ出す。成果はすぐに上げられた。


「どうやらここは最終的に海の災いを監視する施設のようでした」


 それに全員が驚き、画像が残っているらしく、機械を操作して映し出す。


「これが海の災い?」


「立体映像だからか小さいけどよお、実際はどれくらいの大きさなんだ?」


 武狼のギルマスが訪ねて来て、図書館のギルマス。女性秘書官ロリのような人がメガネを直して答える。


「ざっと全長400メートルは軽く超えてます。封印が解けた際はその倍はあると予測されてるようです」


「え?」


「なんだ?特撮の世界か?」


「ですね。それを生身で倒すしか方法が無いそうです」


 それに全員がどう倒すんだと言う顔をすると、倒せる方法らしき弱点が見つかる。


「どうやら、外装はほとんど溶岩と特殊な貴金属が解けて固まったもので、皮膚では無いようです。中身はそうですね、本体から根っこのようなものが伸びて、それが外装を纏っているというものです」


「むっはー、彼奴自身に防御力は一切ないのだ。ただ溶岩を出して、その金属を纏うことで高い防御力を纏っているだけなのだ」


 なぜかリーフベアがそう力説していて、根っこは溶岩を出したり、空気を取り込む為に目玉のような器官を外装から出している。


 我々が攻撃する個所はそこであり、攻撃すると外装が剥がれ落ちて、最終的に本体が中央から顔を出して外装を維持しようとするらしい。


「つまり外装はがして、本体を外に出て来るのを待つしかないと」


「そうなのだ」


 外装は山と同じであり、目玉となる器官は洞窟の中にあったり、その洞窟が脆いが外装で閉じられてたりするから、攻撃して崩すしかないらしい。


「全体攻撃して入り口を防ぐ外装をどかして、中に入って攻撃するしかない」


「もちろん、外装の外、山肌にもそれらしきものがあるはずなのだ。そして一定の攻撃力で破壊するしかないぞ」


「攻撃力まで求められるのか」


「並みの攻撃では、例え接着面がヨワヨワでも崩すことはできないぞ」


 そして動きは遅く、山が動いて少しずつ迫るイメージらしい。現時点では想像しにくいがパターンはだいたい分かってきた。


「兎さん」


「どうした館長」


 図書館のギルマスがどうも魔鉱石製品の大砲とレーザー砲を見つけたらしい。しかも全体にダメージを震わせる、対海の災い用の武器。


「攻撃力と言うより、先ほど言った接着面の弱い外装を剥がすのが目的の物です。それでも攻撃力は高いので、いくつ用意できるか」


「ふむふむ」


 それを聞いた兎さんは………


「ならそれを目玉にぶつけてHP削ろうか」


 そういう手段を取るのであった。


 ………

 ……

 …


 対海の災い用の武器を製作する中で、防衛戦をする人魚島で要塞が出来上がり始めていた。


 海上の足場は船であり、櫓を建てて攻撃準備をしつつ、プレイヤーの戦闘力の底上げをする。簡単に言うがどれほど生産職が居ようと数が足りないはずの現状を、力技で捻じ曲げたプレイヤー達。


 本気で全プレイヤーをフル回転させて準備をしていた。


「じっちゃん、そろそろ疲れてきたよ」


「そうか、なら休め。本番に近づくほど時間が無くなるからな」


 ミスタースミスとひ孫の学生プレイヤー。鍛冶師の生産職の彼らはほぼログインして全ての仕事をしていた。


「うへぇ、どうやって集めたんだろう。NPCの鍛冶職人」


 そう、兎は知り会いの生産職のみならず、NPCにも声をかけた。いま島では戦闘に備えるプレイヤーのみならず、NPCの鍛冶師達もいて、全力で防衛戦をする準備をしていた。


「よお、なんか凄いことになったな」


「ああお前か。そっちはどうだ? 料理人も不足してるんだろう?」


 料理はいまのところバフなどの効果は無い。だが空腹だと動きが鈍くなるため、食事の時間が必要なのだ。


「いま掲示板覗いたんだけど、ここ中心に開拓地で防衛準備してるみたい。ギルドだと『果実農園』と『幻獣愛好家クラブ』が主体だそうだ」


「なんかでっかい大砲も用意してるな」


「あああれ全部魔鉱石、ミスリルで作るって。何発も撃つから、必要だろうてさ」


「マジか?モンスターデータ共有されてるけど、外装剥がさなきゃ意味ないんだろ?」


「目玉もサッカーボールくらいだから、あの巨大大砲で狙うの難しいと思うんだけど、兎さんそれする気らしい」


「………マジで?」


 そんな話をしながら、人魚達の応援やウンディーネの応援を聞いて働くプレイヤー達。ミスリルは大放出である。


「ゲーム初期頃から大量に確保されたミスリルが尽きるか、敵のHPが尽きるのが先かの勝負だ」


 そう言い白薔薇が大砲を使い、精密射撃する様を見る兎。


 全ては白薔薇に懸かっている中、兎は兎で身体を動かして、山を高速で移動する準備をしているのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る