第51話・船完成と島の恵み

 島のファーマ―コボルト、名を『タナカ』。畑のリーダーでウルフに乗って移動しながら日本屋敷の畑も世話をしている。


「兎殿、畑の作物で一大事なりッ!!」


 持ってきた白銀葡萄は赤く、紅玉葡萄となっている。前々からあったリンリンリンゴもルビーリンリンと言う物に変わっている。


 他にも変化した胡椒、バイスはシルクバイスの実と言う物。作物が進化して突然変異しているらしい。


「これらを増やすことはできるか?」


「はいお任せあれ。他の人と協力して量産化してみせまする」


 タナカはそう言ってファーマ―の人と協力して作物を育てだす。レベルの問題だろうか、タナカが育てた物が変化すると図書館の人が言っている。


 鑑定したところ農業のスキルがMAXになっていた。NPCとして究極のところに来たのはタナカと他のファーマ―コボルトらしい。


 料理人達も新素材でテンションが上がる。


「バニラアイス、チョコを初めとした料理。薫製も作れましたよ。いま一番メニューが豊富なのはここですね」


「ワインも種類があるし、料理も調味料があるから多種多様ですね」


「ピッツァの専門店出していいですか? 竈も良いの作ってください!!」


「あっ、俺はパスタ専門店だけど協力するか?コボルトも洋風専門の奴らと顔見知りだぜ?」


 店の方も道具屋や武器屋が出来始め、たまに出る樹海大蛇、ビックストライクボア、クリムゾンコンドルを狩る。カーバンクルの方は出てこないようなので少し安心する。


 シルクスパイダー達が作る糸は食べる物によって変わるらしい。皮素材も食べるらしくそれで火属性に耐性がある物ができたりする。それを染めたり、色々したりして防具として売る手筈が整う。


 そしてついに船が三隻、完成するのであった。


 ◇◆◇◆◇


「持ち主は各ギルドってことだけど、君が所持しなくていいのかい?」


「その代わり航路や使い道は決めさせてもらう。それに愛好家の船は事実上は俺の物だね。他の港町で話しとおすのに、ギルドである愛好家の方が良いらしい」


「ですね。海の生物は気になりますけどそれで落ち着きました」


「となると、残りは黄昏と神技の物と言うことか」


 出来上がった船はエンジン付きであり、魔力で加速などできる。防御力もあり大砲は魔鉱石、ミスリル製の物を使用。他にも巨大なモリは魔鉱石百%であり、小舟もしっかりとした物となる。


 一つは女神像が船体の前にあり、その女神の姿はロザリオに似ている。少し照れて微笑むロザリオ。名前は守護の十字架船、ガーディアン・ロザリオ号。


 一つは盾と剣を持つ戦乙女の像で黄昏が名前を付けて、もう一つ神技のエンブレムを付けた造船が彼らの物だ。


 内海、島の内側で性能確認も済ませており、船としてやる儀式も全て終えている。後はこれで海に出て、大海の獣を討つだけである。


「船員はリーフベアやコボルト達か。スキルレベル的に安心できるね」


「後は戦闘訓練をしたあと挑む形か。親衛隊に連絡は」


「自分らが先行してみていいかって話になって頼んでる。何度か撃墜されているが、だいたいの戦い方が動画に上がってるそうだ」


「………これ作るのにかなりの木材や精霊石使っているけど、親衛隊は良いのかい?」


 カリバーが少し絶句しているが、彼ら的には精霊石による強化をする前の船であり、精霊石使った奴が強いじゃんと言う話に纏まり、いまあるのは戦闘データ取りの布石に切り捨てたらしい。


 船員も全員プレイヤー。船の扱いに四苦八苦しながら戦いデータを取った。HP半分も行かなかったが、船での戦闘でどう立ち回るか決める判断材料にはなった。


「親衛隊も俺らのやり方で作り始めてるんだと、だから心配するな」


「たくましいねえ、ラストアタック取られないようにしないと」


「カリバー的にはそれか?」


「神技的にはね。まあ今回はライダーもいるし、クリムゾンコンドルは良い練習相手になったよ」


 そう、神技の新たな戦力。天馬隊は空を駆け、水面を駆け抜けてクリムゾンコンドルを倒した。


 パーティ戦では無くレイド戦のため、ペガサスがパーティメンバー枠を使っていても問題なく数をこなせた。天馬隊はレイド戦に置いて、かなりのアドバンテージを持つ部隊として活動できるようだ。


「副隊長がやる気だから任せてくれ」


「俺も負けて居られないな」


 そんな話をしていると、


「おとーさーんっ♪」


 腰に張り付いてくる命姫。嬉しそうにする少女に頭を撫でながら、できた船に目を輝かせている。


「凄いねおかーさん、おとーさんの船おっきいっ♪」


「うんそうだね~……少し恥ずかしいけど」


 そう言いながら空を飛ぶクオーツを撫でて歩くロザリオ。これから大海の獣を退治することを知っているからかなり緊張していた。


「ねえねえ、命姫も乗りたいっ♪」


「ああ、今度な。最初は危険なモンスター退治だから命姫達はダメだぞ」


「えぇ~」


 我が儘言う子だがロザリオはだーめと言う。それに返事をして手を繋ぎながら港町を散歩する。


「なんか本当に母親だね」


「まあ……な」


 少し浮かれそうになる。命姫の出現でロザリオと夫婦的に過ごす事が増えた。正直恋人関係が良いんだが、まあいいか。


 マーリン辺りがいると色々とからかわれるだろうからすぐに雑念を振り払い、灯台を直す事も始めながら準備を始める。


 全ては親衛隊他ギルドの準備が終わり次第、レイド戦にして船上戦、大海の獣との戦闘の為、準備を着々と進め出した。

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