島の開拓記録

第38話・分岐点

 翌日ログインしてホームの部屋で起きる。


「にゃー」


「ミケ、卵が欲しいのか少し待ってくれ」


 早く早くと言う顔でぐるぐる腹の上を周るミケ。起き上がりウインドウを操作してプレゼントを確認。


「よしよし、女神像、苗樹と種、薬、鍜治場ありっと……卵………たまご?」


 気高き卵と???の卵がある。なにこれ?


 二つ取り出すとあらでかいわねえと言う顔で驚き、どちらもペロペロするミケ。鑑定して一つは気高き卵、とてつもない魔力を帯びている。謎の卵。何が生まれるか、それは世界を揺るがすと書かれている。


「………なにこれ?」


 とりあえず???の卵は少し大きくミケが温めようとして苦戦する。これはロザリオに任せよう。


「と言う訳で抱っこ紐」


「にゃ」


 任せたわと言う顔で気高き卵を温め出すミケ。?のは抱っこ紐に入れて温めているロザリオに任せる。


 慣れた物であり、家事や庭先の作物を回収する為にコボルト達がやってきて料理を作る。最近だとロザリオが料理してくれて、少しだけ得をするのだ。


「あっ、配信モードにしないと」


 配信をするとまだ島に来られない人達も入りこみ、賑やかになる中、双子ちゃんが部屋から出て来た。


「こんにちはおにいさーん」


「こんにちは、そっちはどうですかー」


「こんにちはーよく分からないのー」


 双子ちゃんが来て、へーと言う顔をする。二人は鳥と虎らしい。コボルトの集落に行き、抱っこ紐を作る気らしい。


 マーリンもやってきて、お互いが交換リストを確認すると………


「魔導書はどうだったんだ?」


「三冊手に入りました~」


「魔導書は【宝石の煌めき・神秘の輝き】と【空間の支配者・次元の書】と【純粋なるエネルギー・純魔の知識】だね」


「ネットでそれ以外は無いようです」


【ナイト】「やったね、動画配信♪」

【エリック】「三種類ゲットかすげえ」

【テッキ】「なにできるの~?」

【ハカセ】「検証中ですね。我々も手に入れてますが、誰が先に使うか揉めています」


 本を読み、スキルを取らないとなんの魔法か分からない。SPは高めの9Pも取られるようだ。そしておそらく神秘の輝きは宝石魔法だろう。


「純魔の知識を先に読んで、使えるようにしておくよ」


「その心は?」


「バカ高い火力欲しい」


 どうも紫炎を使い、火力に目覚めたらしいマーリン。レフトちゃんも早くそこまで行くと戦闘を繰り返す事を決意する。


「クリムゾンコンドルはこれで倒せそうだね」


「そうだお兄さん、クリムゾンコンドル倒したら、鉱山探索するのはどうですか?」


「あー確かに、人が来るから鉄鉱石も魔鉱石も欲しいから、謎のモンスター倒すのもいいか」


 この時はそう思っただけだが、ユニが他にもカーバンクルがいるかもしれないと言う指示の元、双子は微笑みながら提案しただけだ。


「リーフベアがイベントの時に気になる事を言ってたけど?」


「いま聞いてもなー昔の事は昔の事だし、俺ら考察ギルドじゃないし」


「それもそうだね、もう少し後の方が分かるか」


 マーリンとそんな会話をしていると、キューと抱き着いてくるオーブ。


「なんだオーブ、お前も彼奴にリベンジしたいか?」


「キュ」


「勇ましくなったな。テイムモンスター用の装備も整えて、行ってみるか先に」


 これが運命の分かれ道であった。


「先ですか?」


「クリムゾンコンドルはランダムで復活しそうだからねえ、ランダムで復活をしない可能性が少しでもある方を先に片付けておきたいんだ」


「なるほど」


「鉱山を安全にしていっぱい掘るんですね」


「確かに、その方が良いかもしれないね」


 そう決めてみんなでコボルトの集落へと向かう。鍜治場をセットしないといけないからだ。


 ◇◆◇◆◇


 コボルトの集落はだいぶ大きく、普通の人間が暮らせる町になっていた。島に着た人がとりあえず寝泊まりできる場所を確保して、ここから仕事に出向く用にするつもりだ。


 開拓が進み、文明的に町となった集落。新しく手に入った果物や野菜を育て始め、樽も用意している。


 コボルト達しかいまは住んでいないがここを基本に行きたいと思う。


 そして………


「こ、ここが自分の鍜治場ですか!?」


 鍛治などの生産を手助けする建物が手に入り、ムラサメにプレゼント。自分の工房を手に入れて涙を流す。


「泣いている暇はないぞ。本土から人が来るから、お前を追い抜く人が出て来るはずだ。追い付かれ無いように、日々精進しろムラサメ」


「はいッ、分かりました!」


 早速炉に火を付けて仕事を始めるムラサメ。使い方は分かるようだ。


 こうして準備が終わり、卵をロザリオを託して鉱山の中を調べる準備に入る。


「あの時を除けば久しぶりだな。ずいぶん待たせた、いま狩りに行く。油と小麦粉を持って来い」


「粉じん爆発はやめてください」


「―――♪」


 シルフはやる気だぞバンダナ? 大物の時はもっとえげつない手を使うからな。


 ロザリオは苦笑して近くの建物で腰を下ろす。


 白薔薇とオーブ、クロ、シルフをパーティメンバーに入れて、バンダナ達コボルトとマーリン、ライト、レフトのパーティとチームを組み、三組で向かう。


「キュゥゥゥ………」


 決意するオーブ。暗闇の中、勇ましく挑む姿を母親の代わりであるミケは静かに見守った。

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