第36話・イベント六日目後編・悪は滅びても幸せとは限らない

『レベルが上がりました 5>6』

『短剣術が上がりました 7>8』

『自然魔法が上がりまた 7>8』

『精霊魔法が上がりました 4>5』


 ラストアタックはサポートを受けていた事もあり、白薔薇が手に入れてレイド戦が終わった。


 他の二か所も集結して、王国の外れの草原にて下手人達と集めて合流する。


「お疲れ」


「お疲れ兎、なんとかプレイヤーが集まって倒せたよ」


 カリバーはラストアタックを譲り、ジャンヌのところは双子ちゃん達のコンビネーションでゲットしたらしい。


 人だかりができていて、マーリンはずっと魔法を維持して捕まえている。


「さてと、ログを隠すツールだっけ?さすがにGМ案件だね。なにか言うことはあるかな?」


「全部、全部レイドが悪いんだッ。俺がこれを使うことになったのも、紅蓮の獅子戦記がこうなったのも全部」


「ふざけるなよお前」


 カリバーは普段は温厚な性格だし、紳士的な部分がある。だが友人をけなされて温厚で居られるほど聖人では無い。


「レイドがやめた方が良いと証言した事を無視したり、彼がいなくなって喜んだのは君だ。そのツールだって、なにをどうすれば使う事にしたか分からないが、彼が関わってる訳無いだろう」


「くっ。それは、レイドが運営と手を組んで」


「時計兎としての彼の行動はただ単に運が良いだけだ。運営が関わってない」


「運営と話してたじゃないかッ」


「それは運営も想定外な事が起きたからだ。それ以降、彼は特別扱いは無い」


「るっせえッ、どーせあのロザリオとかいう奴からレア情報を聞いてやってんだろッ」


「………だそうだが、時計兎君はどう思う」


「………」


 その時、さすがにキレて頭の中がこいつを貶める為に全て傾きかけた。


「ロザリオは不正の手助けはしていない。NPCとして手伝うくらいだ。それ以上彼奴を貶めることを言うと………マジで潰すぞお前」


 時計兎に睨まれて一瞬怯む。同じようにキレかけているマーリンは静かに微笑んでいた。目は笑っていないが………


「る………るっせえるっせえッ。俺に逆らうなッ!!」


 周りのプレイヤーも睨む中、叫び立ち上がったために地面に叩き付けるように拘束を強めるマーリン。


 僅かに悲鳴を上げ、それでも叫び続けた。


「お前だって運営の裏話聞いて利用してるんだから、俺だってしていいだろうッ。なんで俺だけ文句言われなきゃいけないんだッ!?」


「なに?」


 その時、副ギルマスはびくりと震えた。


「そいつだよッ、そいつの親が開発スタッフで、そいつにβ枠使って参加したプレイヤーだッ!!そいつの所為でβ枠は一つ消えたんだぞ、俺だって特別扱いされたって良いはずだ」


 それに泣きそうになるくらい狼狽え、狼狽する副ギルマス。それにカリバーと時計兎はまずいと思い、ギルマスへ殴りかかろうと走るが遅い。


「そいつにレイドボスポップ場所だって、そいつが勝手に仕入れて来た情報を利用しただけだ。俺は悪くねえげえッ!!」


 殴るのが遅かった。そう思う二人は副ギルドマスターを見る。


「あ………ああ………あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!?」


 泣きだす彼女にどうすると言う顔をする。褒められた事ではないが明らかに何かおかしい。


 どうすることもできず、ただ呆然とする中で全プレイヤーの視界にコメントが入る。


【GМ】「こんにちは皆さん」


「GМ?」


【GМ】「今回、不正に関して発覚するのに時間がかかりました。皆さまのゲームライフに不愉快なことを起こしてしまい、大変申し訳ございません」


 それに全員が戸惑う中、紅蓮の獅子戦記がログアウトした。強制ログアウトだ。


【GМ】「彼らや彼らの言った証言など、ログを回復させたのでたったいま把握しました。情報の漏えいは本当にあったようなので、誠に申し訳ございません」


「それは………脅されていたんじゃ」


 終始怯えていた副ギルマスに対して、プレイヤーの一人は呟くがいいえと答える。


【GМ】「例え脅されてしまったとしても漏えいは漏えい、不正は不正です。責任者には罰を与え、彼らに関しても罰を与えなければいけません」


 気のせいかこのGМ。男性のGМだが、なにか覚悟している気がする。そんなことを考えながら全プレイヤーにお詫び品やレイドボスの戦利品が配ったようだ。


 貢献、報酬ポイントも大盤振る舞い。それに戸惑う中で彼らはどうなるか聞くユニ。


 正直彼女が個人的に恨んでいて憎んでいるが、いまの心境は冷静だった。


【GМ】「とりあえず首謀者となるギルドマスターさんはアカウント停止に並び、ゲーム内の恐喝が発覚してますので警察に届けることになります。少なくてもキャラを変えてもプレイできないようにします。他の人達もアカウント停止もしくば一時凍結などペナルティを架した後、ブラックリスト入りです」


 少なくても今後このFFO以外でもこの会社のゲームで遊ぶ際、GМの監視下は決定したらしい。


 なんとも反応に困る事態で幕を閉じ、プレイヤーは報酬うまいで終わったのであった。


 ◇◆◇◆◇


「気分が悪い」


「言うな」


 マーリンの一言でギルド『幻獣愛好家クラブ』のホームに集まり、最後の祭りのための準備する一同。


 いまだ人気の発酵、醸造樽のラストスパートや魔鉱石のインゴットの準備をするが、マーリンは気分が悪いと二度いう。


「気持ちは分かるけど、運営側としても情報漏えいはまずいんだろうからねえ」


「運営側の話を聞かなきゃなにもできない。聞けるのは一人だが巻き込みたくない」


「そうだけど気分が悪い」


「それは私もです」


 ユニが紅茶を置いて、リラックスしようとしているが目の前のジャンヌも落ち着こうとしているが少し苛立っている。


「私は彼らの事が嫌いですが、犯罪者になって欲しかった訳では無いです。ゲーム内の罪をゲーム内で片付けて欲しかった」


「………俺が抜けなきゃよかったのかな」


「「「「それは無い」」」」


 そう全員が重なり、すまないと頭を下げる。結局これは彼らの自業自得だったと言う話だ。


 だけど副ギルドマスターの泣き声を聞いてどうにももやもやしてしまう。


「私、少し席を外す」


「どうしたいったい?」


「少しリアルに用がある」


 そう言ってマーリンがログアウトして、他のみんなも一度ログアウト。


 時計兎だけなんとなくロザリオと過ごそうと島に戻り、置いてきぼりにされたバンダナ達はメイド服を着てお仕事をするのであった。

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