第34話・イベント六日目前編・どうして?
六日目、様々なことを話し合って島に戻りポイントを確認する。
「あれ?」
ポイントが少し多く入っている。なんでだろうと首を傾げて集落を確認しに行く途中、イベントモンスターが現れた。
「あっ、兎さーん」
「バンダナ、集落に現れるようになったモンスターは見かけたらどうしてる?」
「? もちろん狩ってますよ~」
どうも彼らが倒したモンスターの数だけポイントが入るようだ。その事を連絡してポイントもらうのを控えるかと話し合ったが別に構わないとユニに言われた。
「別にいいでしょう。テイムモンスターが倒したポイントも入るのは確認されてますし、自由にさせている子が倒したのは自由時間内と同じ、個人の物と言うことで」
「いいのかな?確実に抜きんでるぞ」
「さすがに前線組よりかは下でしょう?なにより私達も自由にさせているモンスターは多く居ますから、ポイントは確認されてましたし」
「もうかなり高いし、店舗借りてる身だからな……」
「変なところで気にしすぎですよ。かわりに島で色々させてもらいますから、私としては支払い足りないくらいです」
そう話し合っているところ、カリバーが本人らしからぬ様子で扉を乱暴に開けて椅子に座る。
「ギルマスと副ギルマス、他にも逃がしたッ」
俺とユニの顔が歪み、マーリンはんーと悩んで尋ねた。
「………どうやって逃げたんだい?」
「ギルメンを突撃させておいて、自分は隠しルートから逃げ出したらしい。前もって逃げられる可能性を知っていたのにすまない」
「いや、それは仕方ない。俺もしっかり調べてればよかったんだから」
「とりあえず協力者達と捜索はさせている。だが……なにかしようとしてたらしい」
「俺に向かって?」
二人は頷き、難しい顔をする。
「やるか、きっと」
「他のメンバーに詳しい話を聞きに行ったが口を閉ざしている。中には君が悪いとしか言わないので腹が立って仕方ない」
二人は俺を始めとしたメンバーが脱退した時、レイドモンスターを倒したように喜ぶ様を見て居るから、いまさらなにを言っているか不愉快なんだろう。なにげに自分達と同じトップギルドだったプライドに泥を塗られたと感じてるんだな。
マーリンもそれを感じて話題を変えた。
「副ギルマスもそうなのかい? レイド君から引継ぎした人。彼女は威張っていたけどそれだけだと思ったんだが」
「いや、彼女が囮役をやらされたプレイヤーの一人だ。彼女だけは滝があって、覚悟を決めてダイブしたから逃がした」
副ギルマスか、そう言えばギルメンでもそうだったが俺が副ギルマスとか思われてる。実際の副ギルマスは変わっていないのならあの人だ。偉ぶっているギルマスがカッコイイと本気で思ってる子。生産職にも最初は支払っていたのに、ギルマスが払うのはかっこ悪いとか言い出してからそうするようになったから、悪い子と言うより、悪い事をカッコイイと思うタイプ。
せめてモンスターを瞬殺する様だけに憧れて欲しかった。脱退時も説得するように話したが話を聞いてもらえず、結局こうなってしまったが………
「囮にされたんなら目が覚めただろう。逃げた先でどうするか心配だが、悪い事にならなきゃ良いが」
「君が肩を持つほどかい?」
「なんて言うかな、年下な気がするんだよ。キャラクターは高校生か大学生くらいだけど、中学くらいって感じで」
「背丈いじったと?」
「ああ、中身は子供か。それでもな………」
俺がいなくなった後の紅蓮の獅子戦記は狩場の独占、マナー違反、生産職への差別など目に余る行為をしていた。それを知っているからこそ、例え年下でも許される事では無いと言っている。
「なにより彼女達はNPC、リスポーンしない存在をキルしてる。言っては悪いが仲の良いNPCを殺されたと激怒したプレイヤーが多いんだ。けじめはつけないと」
「もうそんなことしてたのか………」
少しだけショックだ。モンスターだけを倒すゲームなら、そんな迷惑プレイヤーにならずに済んだからな。
そう思う俺にマーリンは肩に手を叩き微笑む。
「彼らは彼らでゲームを楽しもうとして選んだ結果さ、君が気にすることはないよ。君に面倒見てもらわないとゲームができないのなら、オフラインゲームをしてればいいだけの話だったんだからね」
「………そうだな」
とりあえず、備えないといけないと行動に移すことになった。
◇◆◇◆◇
どこで間違えたんだろう。
「良しいいか、必ず成功させるぞ」
「は、はい………」
レイドさんに言われた時に私もやめて居ればよかったのかな? レイドさんは人に頭を下げるのが多いと思った。生産しかできないプレイヤーにありがとうと頭を下げて、自分の方が強いのにとその時は思っていた。
だからギルマスに付いて行った。だけど生産職の人達にアイテムを売ってもらえない。だからNPCから買う事になって、性能がいまいちだったからギルマスはPKしてプレイヤーから奪う事を発案した。
正直、PKには抵抗があった。だけどそうしないと強いモンスターは倒せないし、トップギルドから落ちる羽目になると言われてした。
だけど相手はゲーム初心者ばかり狙ったり、モンスターを擦り付けたりして良いのかと思っていた。ギルマスは彼奴らがアイテムを売らないのが悪いと言っていたからそう思った。
いつからか生産職はレイドさんに言われて、買い物させないと言い始めた辺りからおかしいなと思った。レイドさんは生産職の人と仲が良いが、そんなことをする人では無かったからだ。
レイドさんが時計兎と名前とキャラを変えてから、いろんなことがあって羨ましいからあの人の動画は見ないようにしていた。だけどギルマスはどこからか話を聞いて、いつしか運営と手を組んで自分達を貶めていると言い出した。
正直あの人は私達に対して無関心だ。運営は………パパはそんなことをする人じゃないって言った時、私は逃げられなくなった。
『いいか、お前が抜けたら運営と繋がってることを言いふらすからなッ!』
そんな事を言われて怖くなってできなくなった。せっかくパパがβ版の権利をくれたのに内緒でパパのパソコンの中を見たりして、ギルマスに話したり。
もしもこのことがバレたらどうなるの? そう思うと怖くて震えていた。
そして見つかって例のモンスターが現れる場所まで案内してしまう。
「よし、良いぞ。こいつなら………」
レイドさん。私はどこで間違えましたか?
震える私は笑うギルマスの側に居て何も起きないことを祈るのでした。
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