第32話・イベント四日目・和気あいあいと

 翌日のゲームでは会わせたいプレイヤーがいるらしく店で待機する。カリバー達が連れて来たのはよく知っていて初対面の人達だった。


「ミスタースミスじゃ、よろしくのう」


「カツ丼です。お話ありがとうございます」


「三郎です。仲間代表して来ました」


 ドワーフ職人と言うロールをしているミスタースミス。鍛冶師として有名でかなりの腕前らしい。


 狼人のビビンバと共に生産職プレイヤーの狼人のカツ丼は同じギルドで働くメンバーで、料理を始めとした生産系に関わるプレイヤーとのこと。


 三郎は人間で大工ギルドのギルマスらしい。大工としては未開拓を発展させるのに大いに活躍して、かなりの功績があるギルドのマスター。


「いま現在で彼らが島に移住したいプレイヤーで信頼できる人達だよ」


「なるほど。時計兎だ、よろしくお願いします」


 挨拶を交わして島で何をするか話し合う。ミスタースミスは鍛治関係の仕事、ムラサメと仕事がしたいらしい。


「日本刀を見たが、ありゃいいのう。儂もリアルで鍛冶師なんじゃ」


 だけど年には勝てず腰をやってしまい引退。いまは孫が仕事の引継ぎをしていて、自分は調子の良い時に助っ人をする程度。ゲームの中くらい腰を気にせず鉄を打ちたいとのこと。


「現実だと基本は包丁ばかりだが、こっちは変わったのができて楽しくての。ひ孫にも頼られて絶好調じゃし、しばらくしたらひ孫のパーティ呼んでもいいか交渉しておるんじゃよ」


「そうなのか」


「ああ、無害なプレイヤーなのはユニ達が確認済みだね」


 カツ丼とビビンバは生産職ギルドの紹介、昔に迷惑をかけた彼らの紹介で身内だけのギルドである彼らが声を掛けられたらしい。


「料理名使うから、料理人のプレイヤーの仲間もいますが、ファーマーとかもいましてね。向こうでしか発見されてない食材を育てると楽しみなんです」


「俺ら学生で部活動なんですよ。チームワークは任せてください」


「本格的なのは料理で、ポーション作りとファーマーとして島に移住しようと思ってます」


「それは助かる」


 そして三郎は大工ギルド。全員が島に移住を望んでいて、町作りにチャレンジしたいから前々から準備していたようだ。


「神技の方とかの開拓地はもう仕事は終わってますからね。次の仕事先に移動する話になってました。次は俺ら主体で町作りしたいのが望みですね」


「廃墟である洋館作りを頼めそうだ」


「むしろそれが面白そうだから参加を決めましたね。温泉引きのホテルなんて、いまのところ島くらいですよ」


 これが終わったらクリムゾンコンドルは撃破決定事項だな。その後は火山地帯の探索だな。


 他にも生産職の方が名乗りを上げた。特に魔鉱石と時たまに手に入る宝石の製作が魅力的らしい。今回のイベントで双子ちゃんの装備は注目の的とのこと。


「スキルレベルが上がるからな。やはり目立つか」


「ですね、フィールドで戦ってるの見てみんな大騒ぎです。まだまだ開拓や未開拓の土地はありますし、エルフの国や隠れ里と言う話もあるそうです」


「隠れ里とかの位置を把握、開拓地をうまく設置すればレベリングとかもはかどるからね。あまり無茶な進み方をしてレアモンスターや鉱山見つけても探索ができなきゃ意味ないから、本土はいま地盤固めに必死だよ」


 カリバーからそんな話を聞き、隠れ里ならいくつか発見したし、未知の鉱山が発見できそうな場所を見つけたプレイヤーもいるらしい。その中に宝石が見つかる場所があればいいが、いまのところ宝石はドロップアイテムかカーバンクルからもらうしかないらしい。


「後はそろそろ幼体で無くなる可能性ですね。オーブちゃんもクロちゃんも、そろそろ普通のモンスターになるでしょうから期待されてますね」


「島に行くに当たって動画投稿は基本無しで、やるとしても動画にしたい人だね」


「実は動画配信をしたいって言う、Vの人がいるんだ」


「企業?個人?」


「個人、自分の動画を後で実況したり、たまに生放送する人だね。他にもこんな投稿したいって言う声を聞くよ」


 攻略に関しては後で実況させて欲しいなど。その他、島の成長記録を付けたいとのこと。


 これは他の人と要相談だな。隠したい情報もあるし、なんでもオープンと言うわけではない。


「そもそもそれで人気出るのか?」


「本人が気になるかららしい。攻略したくなったら本土に向かうとも言ってるし、島の探索で見つけた者は基本君の物で良いだって」


 そう言えば責任者は俺、最終責任者はユニと言う構図になっている。


 ユニもそれで構わないと言う話であり、島をわんわん王国に変える為に開拓が本格的に始まろうとしていた。


「とりあえずこれで話を進めるか」


「よろしく頼むのう」


「これからどうなるか楽しみです」


「南国の果物食い放題」


「仮想世界だからこそできることだよな」


「あー、それは俺も楽しみ」


「それは僕らも参加させてほしいね」


 そんな和気あいあいと話し合いをしていると、ジャンヌが険しい顔で入ってくる。


「すまない、時計兎、カリバー。明日に突っ込む」


「……そうか」


 ついに古巣の命運は尽きる。嬉しいようなそうでないような、複雑な心境だ。


「これで面倒事が終わらせられたらいいが」


 そう呟きカリバーは退出して、俺はプレイヤーと話し合いを始める。今現在決めた人達の要望を聞き、どうするかの把握。ユニはすでにしていて、あとは俺の決定だけらしい。


 こうして一日は終わり、明日へと変わる。明日で終われば良いけどな………

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