第31話・イベント三日目・うちの子の人気に心配になる

 翌日、自由時間の際に王都の教会へと向かう。平和な王都の教会はでかく、その庭で花の世話をしているご老人がいた。


 いたんだが見た感じ偉い司祭様っぽいんだよね。


「こんにちは」


「はいはい」


 こちらを向く温厚そうなご老人。話をしてみるとやはりここのトップらしい。なんでそんな人が花壇の手入れをしてるんですか?


「なに、平和ですからね。そうそう難しい案件が入る事は無いんですよ」


「はあ」


 そんな話をしつつ手紙を渡す。渡された手紙を見てどこでこれをと聞かれた。隠す必要は無さそうなので、自分は王国から離れた島で開拓をする者と説明して今現在、その島に手紙の主がいることを伝える。


「そうですか………」


 少しこちらを見て居る司祭様。手紙を見て納得してから別れることにした。なにかイベントのトリガーっぽいがそれ以上は分からない。


 とりあえずコボルト達の保護者として仕事しようと働くのであった。


 ◇◆◇◆◇


 料理コボルトと料理人プレイヤーは仲が良い。彼らは南国の品物や胡椒、砂糖の研究を先にしていたコボルト達に自分の知識を教えて吸収する。


 プレイヤーもそれが面白く、なにより彼らのおかげで砂糖と胡椒、そして念願だった醤油と味噌で料理の幅が広がった。このまま他にもできるんじゃないかと言う話になり、島にある魚介類を手に取り、色々チャレンジしていた。


 もちろん空いた時間、休憩中の研究だから進みは悪く、それでも珍しい魚介類が手に入り、喜々として料理している。


「出回ってない品物もあるのか?」


「ええ、時計兎さんとこの島で魚介類はいくつか港町限定だったりする材料があったり、貝類が特に珍しいですね。サザエとかムール貝があります」


「オーシャン達に獲られてたけど確認までしてなかったな」


 それに反省しつつ、トマトとかピザにでも使えそうな品物が多いと、薫製も作れないか話になる。システム上作れそうだし、ようやく色々手を出せる話をしている。


 コボルト達も楽しそうに島で調理場を作ってもらったり、お店を出したいと言う者が現れる。いままで食べるのは身内限定だったが、店を出すのもいいかもしれない。


 そんな話をしていると白薔薇が衣装チェンジして現れた。


「主、似合いますか?」


「ああ」


 今度は和風ゴスロリと言う感じであり、ニーソの足と少し短めのスカートが似合う姿だ。絶対領域って奴?


 関節部分が人形の特徴を持ち髪の中にコードが混じる、レンズの瞳など人形らしいところがあるが、それでも可愛らしい少女の白薔薇。その可愛らしいを出す為に、衣装作り担当が頑張っているとのこと。


 衣装替えしながら愛想笑いと言うか、白薔薇の場合ちゃんとした笑顔で接客するため人気がうなぎ上りらしい。我が子のような白薔薇がモテているのは少し心配だ。


「どうしましたか?」


「いや、気にするな。可愛い白薔薇が見られて、俺は嬉しいよ」


「………そうですか」


 ニコッと嬉しそうにやける白薔薇。頬も少し赤く、嬉しそうな雰囲気のまま仕事に戻る。


「なにしてるんですか?」


「白薔薇とコミュニケーション。白薔薇の衣装いくつあるんだ?」


 ユニが建物の奥から現れ、さあと首を傾げる。


「何分白薔薇さんの衣装担当は、私達が贔屓にしている服飾プレイヤーさんに任せてありますからね。彼女、可愛い子に可愛い服を着せるのが好きなので、適当に私とかが衣装着れば仲良くしてくれます」


「なにそれ」


「こういうとき、子供っぽいロリボディは役に立ちます。こういうの男の人は好きでしょ?」


 可愛らしい衣装のユニはそう一回転して俺に話しかける。確かに似合ってるしふわっとスカートが浮くところとか可愛いけど、女子って可愛いを武器にし過ぎじゃねえ? 素直に浮かれて居られないんだけど。


「私より一番はしゃいでて心配ですね。知ってますか? 魔導人形で表情がころころ変わるのは白薔薇ちゃんだけで、他の子は不愛想と言うか機械的なんですよ」


「マジ?」


「人気はあるし、感情が無いと言うより個性ですね。神技のガブリエルちゃんはクール系で、ジャンヌのところも淡々と傷を治したり守るよう戦うので、どちらも接客業向きではないのです」


 だから衣装担当は表情がある白薔薇にお熱らしい。他にもファンがそういう意味でいるとのこと。そんな話の中、彼女のモデルは他にもいるから心配だそうだ。相手は双子ちゃんらしい。


「ああ、ジャンヌの妹とリアルで知り会いだったもんな」


「話しましたっけ?」


「会話からそうなんだろうなー程度には察したよ」


「まあそういうわけです。リアルでもあの子達は可愛くて、双子にしか引き出せない可愛らしいで小悪魔的なところあるので本気で引っかからないでくださいね」


「安心しろ。さすがに内心浮かれてもジャンヌが怖いから無理だから」


「それを聞いてほっとしました。なにげにあなたとあの子達の距離近いから。手を出すのなら覚悟していただかないと」


 ………


 どっちかと言えばロザリオが好みなんだよな。少しだけ、少しだけ砕けた感じで接したいな。


「どうしました?」


「いやなんでもないよ」


 雑念を振り払い、俺は仕事に戻る。


 途中、衣装替え担当のプレイヤーが、少し裾の短い物やウェイトレスには似合わない衣類を持ってきた。さすがに勘弁してくれ。


 その後、戦う姫様と言うテーマで作った高性能の服を持って来て、それが白薔薇のニュー装備になるのであった。


「小さいのに大きな武器を持って戦う少女かわゆすっ!!」


 まともな人いない? せめて俺のように分別ができるくらいの人?


 なにげにクロ達も衣装チェンジが多く、スクショタイムが多いのでオマケじゃなく本格的にお金を取ることにした。儲けが出てよかったよ。

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