第28話・祭り前日

 翌日ログインして双子ちゃんは配信で動物達と戯れ、ロザリオは家でミケ達とお留守番。マーリンは本土に戻る。


 俺はと言えば職人コボルトムラサメの元に。俺から妖刀村雨の話を聞いて凄いですと言って、ムラサメの名前を名乗る事にしたコボルトだ。彼は他のコボルトと協力して新しい防具を作る。


 いまは集落、魔鉱石場を仕事場にして日々生産していた。


「ようみんな」


「いらっしゃいませ、ようこそ時計兎さん」


「例の物はできたか?」


「はい、時計兎さんの防具、ライトさんのアクセサリー、レフトさんの杖、マーリンさんの杖です」


 まず持ってきたのはマジックマッドベアから取れた魔狂熊の皮から作った鎧であった。


「魔鉱石と組み合わせる事で性能を上げた一品です」


 藍色の毛並みに紫の宝石が肩アーマーのようにあり、ミスリルと同化した胸元は金属になっている。


 金属と皮と金属のような皮がうまく融合して一つの鎧となる。サーコート、騎士の鎧のようなものだ。これは普通にカッコイイ。


「性能も高いし、効果として炎熱、水氷、風雷、土岩と純エネルギー? 魔法に強くなってるな」


「はい、一発勝負でしたのでアサルトベアで実験して作りました。代わりに性能が落ちる軽装を量産してしまいました」


「問題ないよ、そちらも見せてくれ」


「はい」


 見せてくれた物は確かめる。確かにレベル的に他にも性能が良いのがありそうな物だ。だが第二陣からすれば手の届く高性能な装備だろう。ばらつきも少ないしコレは普通に売れる。


「うん、駆け出しの売り物としては破格だ。きっと欲しがる人はいるよ」


「ありがとうございます」


「盾の方はどうなってる」


「はい、むしろ軽すぎるのを問題視するくらいの品物がこちらに」


 そう言って渡された綺麗な色の盾。不思議と安心感を抱くそれを持つ。


 少し大きめだが前のより軽いなと思う。軽すぎて違和感を感じると言ったのも頷けるが性能は良い。生産する際の試作品が出て居て売りに出す予定だ。


 そして杖の方だがそちらは自信満々に出してくれた。


「マーリンさんには銀鉱石と言う物を試して鋼に変えた物です。純粋な物よりも耐久値は落ちますが、魔法威力が上がり良い物ができました」


「ああ、これなら彼奴も納得するだろう」


 そしてと出されたのは一つの杖とペンダント。


「ライトさんには魔鉱石で作ったペンダントを、これは破格の性能です」


『犬族の金剛首飾り ムラサメ作』


 STR+50 VIT+50 LUK+10


 HP自然回復+5 MP回復10秒ごとに+5


 コボルト・ムラサメを筆頭にコボルトが技術をつぎ込んで作った一品。


 品質★8 レア度8


 いや、壊れ過ぎない?


 装備するだけでそれなりに上がるから安心感が違う。前衛が持つ物として高性能過ぎない?あと二つも枠があるアクセサリーだぞ。


「LUKを上げたいと言っていて、上がってよかったです」


 尻尾を振るムラサメを褒めておくが、PKには気を付けないといけないな。


 そして杖の方は………


『紫炎の魔杖 ムラサメ作』


 STR+15 INT+245 耐久値240


 自然魔法Lv+1 МP消費率1割軽減 魔法ダメージ+30


 装備条件、自然魔法Lv5以上


 コボルト達が技術の粋を宝石に注ぎ、魔鉱石と銀鉱石で作った一品。


 スキルレベ+1ってなにッ!?


 そんな装備聞いた事が無いぞ。これ装備できると言うことは自然魔法レベは最低6レベだってことだよな?


「レベル5なのは知っていたので、胸をなでおろしましたよ」


 息を深々と吐くムラサメ。お前、壊れ性能の装備作りおって。トレード目的に二人に近づく奴が出るかもしれない。


 ジャンヌにはすぐに言うか渡すなと言われそうだけど、製作しているのは知ってるしやっぱりアレか? ライトちゃんだけはずるいからって杖製作にオーブの宝石を使わせた俺の所為か?


 怒られるのは嫌だなと思い受け取り、次にバンダナ達の装備。


「魔狂熊の爪は一つずつ短剣へと変えることができました」


「おお、性能が良い。短剣装備にしてはトップレベルの攻撃力」


 だがさすがに宝石が使われた物のような壊れ性能も無い。ある意味安心して渡せる一品に安堵する。


 まずは一本は俺に次に技量がある者、強い者、責任を背負う者に一本ずつ渡してから、残り三つは渡されたコボルトが渡す者を決める事にした。


「そう言えば錬金術の勉強もし出したって話だが、どうだ調子は?」


「はひっ、僕の場合、貴金属系しか作れそうにないですね。無駄にはなりませんが、まだまだ話にはなりません。杖の件も、マーリンさんから教えていただいた知識が役に立ってます」


 ムラサメや他のコボルトは錬金術を学び、魔法道具を作れるかチャレンジしている。鍛冶師以外も生産に力を入れて、すでにポーションなど作れるし、いずれスクロール類も作れるようになるだろう。


 錬金術を持つプレイヤーは少ない。鍛冶との組み合わせは特殊能力を持った武器製作、元々の武器が強くないと意味が無いから鍛冶を育ててからの人が多いようだ。


 そんな話をして、その後は預かった武具を双子ちゃんに渡しに行った。


 二人とも驚いていたが、すぐにムラサメをわしわししに出向いて行った。マーリンは自分の杖だけ普通なのを不満に思う前に、ジャンヌに私悪くないアピールを先にしておくようだ。俺も悪くないはずだ。


 カリバー達のも納得できる一品を作り、売り物も一番良いのを作り出した。


 ◇◆◇◆◇


 ログインして明日に備える。明日はイベントが発生して、本土で過ごすことが多い。帰ることも少ないはずだから、コボルト達にロザリオを守るように指示を出し、ロザリオも大人しく家で留守番するらしい。


「それじゃ、行ってくるね」


「うん、頑張って♪」


「おう」


 こうして本土に出向き、ポイント祭りに参加するのであった。

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