第26話・進む会議後編

 クロを会議に持ち込み会議が始まる。


 よく分からない顔をしながら遊んでくれる人の袖をくわえて、もう一つの顔でスリスリしてもう一つの顔がつぶらな目で見つめる。ユニは幸せそうにしていた。


「検証班が調べたら珍しいモンスターの卵を発掘できたり、採取できたりできたらしいよ。まだ愛好家の人はできてないけど」


 カリバーは苦笑しながら教えてくれて少し考え込む。


「幸運値か? 俺のは一応高いし」


「だからクリティカル判定多いのか……」


 そんな話をこそこそ男同士でしながらクロを膝に乗せてユニが会話を始めた。


「それでは貢献ポイントは神技に渡すとして、報酬ポイントをどう集めるかですね」


「神技と黄昏はモンスターを効率よく倒すのが良いね。生産は全然だから」


「アンデットが居れば楽なんだが。いろんな種類出て来るだろうが出てこなそうだ」


「まあ確かにジャンヌさんの言う通りアンデットは無理そうですね」


 次に愛好家、生産職、俺達がどう稼ぐかだがそれはもう決まっている。


「売買、物売りだな」


「転移のスクロールはもちろん、魔鉱石の武具や魔鉱石そのものですね。ちなみに魔鉱石は全体的に流れているのは1割ですね。残りは確保したプレイヤーが使ってます。それでもごくわずかですね」


「他にも売れるのはありますよ。パイナップルやマンゴーと言う南国の果物や胡椒です。料理人プレイヤーが欲しがってます」


「後は砂糖か?」


「ですね。サトウキビから取ったのは交易されていません。プレイヤーの中には砂糖大根から取った物がありますが」


「これリストです」


 そう言われて渡されたリストは島にあって本土の人に無い物。


「愛好家は島の事がありますので、時計兎さんが多くポイント獲得できるように手助けする予定です」


「いいのか?」


「品物は島の物なので当然ですし、好きにさせていただくので」


「売る為の場所や値段設定があるから助かるよ」


 となると後は………


「料理人コボルト呼んで料理作らせるか」


「それです」


 どれ?


「料理人コボルト達による料理です。愛好家は動物ふれあいコーナーによる料理店をしてポイントを稼ぎます」


 確かに動物好きがいるのは分かっているが身内で終わらないよな?


「いや、それは問題ないんじゃないかな。白薔薇って言う切り札もあるし」


「白薔薇がなにか?」


 外套を纏った白薔薇はそう首を傾げる。意外にもファンがいるらしいし、彼女を見て魔導人形を見つけた人もいるから人気はあるとのこと。


 彼女とかがウェイトレスする店なら繁盛するだろうと言う考えがある。マーリンが熱弁した。


「マーリン、お前が熱弁するとロザリオまで来そうで困る」


「ん?ロザリオは自分の物と言う訳かい時計兎君?」


「ロザリオの情報は集めてる。帝国で命狙われたキャラクターを目立つことさせられない」


「確かにそれは勘弁してもらうしかないね」


 俺は裏方で指示を出す係らしい。コボルトとの信頼度が高いのは俺だからな。


 ポイント稼ぐ方法は話し合いを終えて今度は島についてだ。


「島にある図鑑や魔導書は持ち運ぶのには反対だな。正直持って来て欲しいけど、PKで取られる可能性がある」


「我々黄昏もできれば読みたいんだが、写本を試していいか?」


「できるプレイヤーはいるか?」


「『賢者の図書館』にいる。島に滞在しても良いと思うよ」


 図鑑もかなり話題になっている。図鑑を見たプレイヤーがスキルを獲得して、採取ポイントが増えたとかなんとか言う人もいるらしい。できれば写本にして流通させて欲しいとの話。後はミスリル、魔鉱石だ。


「銀と魔鉱石のインゴットを交換したいと思う。銀鉱石とインゴットのトレードだ」


「その心は?」


「銀と魔鉱石の鋼は効果高そう」


「確かに銀にはアンデットにダメ増量があるからね。量はこちらが決めて良いかい?」


「本土の流通はそっちが詳しいから頼めるか?」


「分かった。魔鉱石の流通は任せろ」


 それでと『神技の騎士団』は真剣な顔になる。


「僕ら『神技の騎士団』が使う分だけど」


「要相談で」


「頼むよ。幹部クラスは武器と防具を一つずつ欲しいね」


「その変わり、プレイヤーの厄介ごとは」


「僕らが処理する」


「その話、黄昏も加えてもらおう」


 こうして話し合いは終わり、後は信頼できるプレイヤーを島に招く事になる。愛好家筆頭にトップギルド二つがその辺りをしっかり調査してやるとのこと。


 信頼できない人は変な事するかもしれないし、勝手に人を招いて領土の取り合いが起きる可能性がある。そろそろ人が移住しても問題ないエリアを作るべきか。


「開拓はその後はどうする?」


「港町があるって話だから、海辺を基本に調べる。だがやっぱりまずは真ん中、火山を除くエリア開拓が限界だ。生産職が少ないから住む家も無い」


「なるほど、住み着く住人と家か。集落作りはしたけど、島はもう国作りになってるな」


「プレイヤーが国を作れるのか?似たことはできるだろうけど」


 確か町を作ったプレイヤーが検問とか王国の役人になったとかあったっけ?


 元々ギルドを立ち上げるとその国の役人として国に登録する必要がある。プレイヤーの町は開拓地に多くあるし。


「開拓で気になるのはワールドクエストだね。このまま大陸の人達と交流していくゲームなのかな?」


「精霊もシルフとリーフベア以外、未発見だからな。探さないと」


「じゃ、第一会議はここまでと言う事で」


 異議なしとなりこの後は自由行動。


「白薔薇、戻ったら料理人コボルトを集合させてくれ。後はナップル、ゴーの実、バイスの実。白糖の確保だ」


「了」


「買い物はまたの機会にして、マーリン帰るか?」


「うん、店になにかあればまたくれば良いから問題ないよ」


「もう帰るんですか?」


「きゅーん」「くーん」「わーん」


 ユニがすーはーとクロのお腹に顔をうずめているために回収して島へと戻った。


 しばらくは内緒話が多いから配信は無し、のんびり開拓することになるだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る