会議の合間に

 神技の騎士団はキャラネームを神話などに使われる武器の名前を使う人が立ち上げたギルドである。だからと言ってそれ以外でも入る事は可能。トップギルドの一つとして名前を売りにして、有名ギルドとして活動している。


 このゲームは基本、グラフィックやゲーム内のモンスター、ゲームの中に住むようなゲームスタイルが売りであり、最初はだいたい五つに分かれていた。


 モンスターを倒して有名になりたいプレイヤーは『神技の騎士団』へ。


 聖女、神官、聖職者ロールしたいプレイヤーは『黄昏の乙女』へ


 ゲーム内のモンスタースクショ、テイムなどしたいプレイヤーは『幻獣愛好家クラブ』へ


 ゲーム内の歴史や設定の考察などが知りたいプレイヤーは『賢者の図書館』へ


 最後は生産したり、商人や農業などしたい人がまちまちいるくらい。


 こういう風に別れてFFOを楽しむのだが、実は厄介なギルドがある。ゲーム攻略の最前線を行き、トッププレイヤーの集まりを信条にしたギルド。ギルド『紅蓮の獅子戦記』と言うギルドがある。


 最初は彼らは恥じないプレイをして、多くのユーザーを魅了していてくれていた。のだが中盤以降、妙な噂が流れた。


 曰く生産職への支払い滞納であったり、狩場の独占であったり、プレイヤーとの衝突はたびたび浮上した。


「俺さあ最初、トッププレイヤーだから衝突したりしてトップ狙ってたから流れた噂だと思ったんだ。だけど蓋を開ければ」


 ギルマスである彼は性格に問題があった。副ギルマスであるレイドと言うプレイヤーがフォローしたりしていたが、彼を慕う者達は狩場の独占や生産職への支払い滞納をしたりと、マナー違反をしていて迷惑プレイヤーとして有名であった。


「レイドさんが俺らを見捨ててたら、俺このゲーム投げ出してたよ」


「そうか、そんなにひどかったのか?」


「酷いの一言で片付くのが嫌なほどに。よくよく考えればGМコールして注意してもらうところを、レイドさんが先に注意や説得して纏まってた感じだったね」


 いま神技、黄昏、愛好家は時計兎さんと言う島開拓プレイヤーと協力してイベントを進める会議をしている。


 末端であるプレイヤーは時計兎とはどんなプレイヤーかの話になり、レイドとして活動してた頃、元紅蓮の獅子戦記と名乗る前、彼らのもとでゲームしていたプレイヤーから話を聞いていた。


「ギルマスはさあ、パワーで押し切るタイプでね。それがまあβ版の時はハマってたんだ。ともかくモンスターを倒すイベントが続いたりしたから、レイドさんがうまく誘導して、最低五位以内に入ってたから有名になったんだよ」


「けどさあ、その後は仲間内で内輪もめだよ。俺の獲物を横取りしたとか、命令するなとかの口喧嘩。いつもレイドさんがうまく丸め込んでたけど、レイドさんもストレスだったんだろうな。いつもギスギスしてたんだ」


 それでも辞めなかったのは、やはりトッププレイヤーとして有名であったからだ。


「やっぱり凄いギルドであったのは確かだったんだ。当時のレアアイテムの確保を他のギルドより先に進んでたし、レイドさんが頭下げてたから、開拓地もできてて、うまく進めてたんだよね」


「レアドロップか、確かに当時のギルドで言えば、あそこが独占してたよな」


「そこから装備品や武器を作れたから性能も良いし、ゲームプレイでの資金も手に入りやすく、スキルレベも高かった」


「だから辞めたくても辞められなかったって言う人が多くて、あとはヘイトはレイドさんしか向けられて無かったから他人事と思う人が多くて」


 怒鳴り合いもレイドが庇ったりして、レイドが悪者としてギルドに浮いていた。だけど………


「きっかけはやっぱりメロディーバードだったね。帝国領のメロディーバードは精霊の森にいる個体と違う色で、歌声も違くて人気だった。それを殲滅したのがギルマス派。NPCの忠告とレイドさんのやばいかもって言う言葉を逆に面白そうだからって理由で狩り尽したんだ」


「あれはやばいと思ったよね。愛好家は数羽テイムしてたけど、それ以降その色や歌声のメロディーバードは出てこなくなって会長ら発狂。他のプレイヤーもサイトや掲示板で非難の声でスレ閉鎖」


「全プレイヤーの前に謝りに行くべきだ。許されるとは別に誠意を見せないとゲームをプレイすることはできないぞ。あの時はレイドさんがギルドマスターだと思った」


 当時の事を思い出して頷き合う。だがギルマスはふざけんなと怒鳴り散らした。


「たかが鳥に頭を下げなきゃいけないんだって、トップギルドとして許されないとかわけが分からないこと言って、謝りに行くことを止めたり非難するわでね」


「あの時だけギルマスのこと、小学生がプレイヤーかもしれないってホント思ったよ。ゲーム内なのに宿題の答えを俺らに聞きに来てたからね。問題は高校レベルのだから高校生なのは確かだけど」


「うわっ、最悪」


「そんなこともしてたのかよあそこ」


 話を聞き顔を歪めるプレイヤーの中、しみじみおかしい人だと思うプレイヤー。


「あとは知っての通り、早めに辞めると粘着されるから辞めるに辞められず、レイドさんが正式に脱退を勝ち取るまで、大人しくしてたんだ。辞めた後、迷惑かけた人達に頭下げて回ったら、カリバーさんがウチに来ないかって誘われて入った」


「私はジャンヌさん、下働きだけど楽しくゲームできてるから感謝しかないよ。迷惑かけた人達とも仲良くできてるし」


「ウチは愛好家。人使い荒いけど、許してくれてホント嬉しい。会長とレイドさんには感謝だね」


 そして常識派と言える人達が抜けたことで、生産職プレイヤーも彼らを見切り、ギルド『紅蓮の獅子戦記』と名乗る頃にはパワーしかないギルドになってしまった。


「そこからの転落は凄かったね」


 生産職はNPCにしか頼れないから、一定の性能を持つ武具の耐久値を回復させることが難しくなる。性能が高ければ高いほど、料金も高くなる。普通は生産職の人と協力して安くしてもらう代わりに、素材を持って来たりするスタイルなのだが、それが無いから高値で支払いをする。


 するとお金がすぐに底を尽き、素材を売りたくても高値で買い取ってくれるプレイヤーから無視され、最低値でNPCに売るが割に合わない。


「だから当時は性能を下げて、狩場も下げて運営するかと思ったら」


 彼らはPKをし出した。このゲーム、PKは確かにできるが非推奨となっている。まずデスペナルティーが10分、ステータスが三分の一低くなるのが、3時間半分になり、アイテムを一つその場にランダムに落とすのがストレージ内のアイテム全て落とすになる。


 お金も三分の一ロストが全部になるし、町やセーフエリア使用不可など、割に合わない。


「PKってどうしても欲しい貴重アイテムを手に入れる際の行動だろうね。魔導書とか魔鉱石製品とかがそれだね。緊張感持たせるためだけの処置だと思う」


「魔導書は読めばスキル解放条件満たすからね。うまく立ち回れば元は取れるし、一度プレイヤーにキルされるか国の衛兵に捕まれば戻れるから」


 要はその後の事を考えて居ればありだと言う意見。だがその後の事を考えていないプレイヤーがするとただの迷惑行為である。


「もう獅子戦記はダメだね。NPCにも手を出して国から賞金首扱いだし、プレイヤーからも恨まれてる」


 NPCキルは決定打だった。彼らは友好的なNPCをキルしてしまい、多くのプレイヤーから恨まれている。


「しかも風の噂じゃ、俺らやレイドさんの所為だって言ってるみたいだし」


「掲示板に書かれた時、俺机バンって叩いたよ。レイドさん勝つためならルールに反してないならやるだろうけど、そんなことしないっての」


「いま居る人達、楽しんでゲームしてるんだろうか?」


 それは分からない。話し合いながら彼らはゲームを楽しもうと言う話でまとまる。


 レイドこと時計兎さんに感謝して、許してくれた人達に感謝しながら、楽しくゲームをする。いまさら前のギルドのことなんて関係ない。


「潰さなきゃいけないなら俺らは迷わず叩くよ。一度キルすれば戻るし、そこからちゃんとゲーム楽しんでほしいからね」


「んだんだ、それでいいよ」


 そう話し合いをしながら、会議が一度中断。彼らは会議室にいる時計兎に改めてフレンド登録や挨拶をするために恩人のもとに出向くのであった。

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