第24話・合流

 ログインして各開拓地の様子を確認。人手が足りなくまた人も少ない為に樹海、集落エリアしか開拓は進んでいない。


 攻熊の皮などが手に入り、コボルトの装備を新調する中で丁寧に魔鉱石を使い、魔狂熊の皮を使う鍛冶師コボルト、ムラマサと名乗り出した彼は装飾コボルトと共に鎧を作る。


 鋼装備で良いのはできたが杖系は木工スキル持ちが担当。オーブの宝石を欲しがっていたので使えないか託す。サプライズだ。


 色々素材の分担や何に使うか話し合い、マーリンが手を上げる。


「アサルトベアの皮が欲しい。転移のスクロールに使うよ~」


「結構な数だな。手袋やブーツにしたいんだが」


「使わせてくれたら、女子メンバー全員が水着になって狼と戯れるよ~♪」


 そうポーズをしてウインクして微笑むマーリン。


【カツ丼】「なん、だと……ッ!?」

【レックス】「み・ず・ぎッ!?」

【一服野郎】「頼んます時計兎さん、いや時計兎様ッ!!」


 おかしいレアアイテムが舞いこみ、β版に比べればはるかに順調にゲームを楽しんでいるし、攻略もできて楽しいはずなのに俺に選択肢が無い気がするのは気のせいか?


 ………まあいいけど。


【ジャンヌ】「………これはリアルで説教か」


 ジャンヌさん許してください。俺も男だから許して。


 ◇◆◇◆◇


 ログインする前に設定をいじる。配信はオフにしている。


 前日に秘密の作戦会議と言ったので問題ない、ログインしてマーリンの元に移動。


「やあこんにちは、準備はできてるよ」


 そう言って転移のスクロールを見せるマーリン。これがあれば行ったことのある場所に移動できる。


 ただしセーフエリアや町中だけ。俺が島以外で行った事があるのは王国のギルドのみ。


「それじゃ、後は任せたから」


「「はーい」」


「シルフはどうしてる?」


「了、コックコボルトの新作フルーツを食べてます」


 あの子もあの子で住み着いたな。それじゃ白薔薇を連れて、マーリンをパーティに組み込んで。


「それじゃ行ってくるけど、お土産はいらないの?」


「うん。その代わりに王国がどうなってるか話してくれればいいよ~」


 オーブを撫でながらロザリオは微笑む。少しだけ王国や帝国など、国の動きが気になると言っている。ロザリオと言う子が行方不明だからな、なにかしら動きがあってもいい頃だろう。


「オーブ、ミケ、クロ、白薔薇。行くぞ」


「了」


「それじゃ私が、転移のスクロール使用」


 こうしてゲームを始めて島以外の場所に向かった。


 ◇◆◇◆◇


 転移のスクロールは消耗品アイテムであり、モンスターの皮を大量に使用して錬金術と自然魔法のレベルが高くないと作れない品物。


 高値で売買されるがマーリンは足代わりにしか考えていない。


 マーリンの店舗の一つに転移して用意された外套を装備して移動する。人目に気づかれ無いように移動だ。


「王国にプレイヤーが多いな。てっきり開拓か有名所のダンジョンとかにいると思ったが………」


「君、リアルの情報見てないの? 第二陣が来てるんだよ」


「ああ、もうそんな時期か」


「人が多いですね主」


 ここ最近は仕入れる情報が無いから見てないな。正直ログインして活動する時間が欲しいくらい。後は人手だな生産職が欲しい。


 こうして攻略を考えると生産職の大切さが分かる。彼奴らなんで分からなかったんだろう? 毎度話し合いであれがないこれがない、あれが足りないこれが足りないと言い続けてたのに。


「ここがギルドホームだよ」


「『幻獣愛好家クラブ』のギルドホームか」


 テイムされたモンスターは課金や生産で作られた洋服を着て中庭で遊んでいる。


「「「わん」」」


 クロも外套の中から顔を出して中庭に向かっていく。オーブはミケの側から離れることは無いがクロは動き回る。


 すでに話が伝わっていたのか大反響で身内で騒ぐ彼らを見ながら、クロにここで大人しく遊ぶように言ってから建物に入り部屋に向かう。


 そこにいたのは銀色の髪に碧眼の美女。鎧を着こみ、神官戦士としてトップを駆けるプレイヤー『ジャンヌ』と、騎士の姿をしてさわやかな青年と言う若い騎士の『カリバー』がそこにいた。


「クロちゃん……」


「ユニ、まずは挨拶」


「………初めましてでいいのよね?時計兎さん」


「ああ、もうバレてるからいいよ。そちらは会長呼びでいいかな?」


 そこにいたのは『幻獣愛好家クラブ』、外套を纏い腰回りにキーホルダーのように動物のぬいぐるみを下げたピンクの可愛らしい少女『ユニ』がそこにいた。


 ただクロと遊べないから机に倒れ、半泣きで外を眺めている。


「まあまあ、イベントについての会議だからいまは会長として頑張ってくれ」


「全くこの二人は………」


「おや酷いなジャンヌ、私はちゃんと時計兎君を連れて来て仕事しているではないか?」


「彼がログインする前に来て、ロザリオちゃんの水着買いに行ったのは知ってるぞ」


 そんなことをしていたのか。そういう目線をすると、


「ふっふーん。楽しみに鼻の下を伸ばすと良いよ。いつの日か真夏のビーチの天使達が君をメロメロにするから」


 それは楽しみです。とはさすがに顔に出さずにこちらを見るジャンヌを見る。


「睨むなよ聖女様。俺だって男だからな」


「くうぅぅぅぅぅ」


「悔しいのか憎いのかどっちかにしてくれ」


「ははっ、とりあえずいまは全員そろった事に感謝を」


 こうして『神技の騎士団』、『黄昏の乙女』、『幻獣愛好家クラブ』、そして島開拓者が出会ったのであった。

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