第18話・侵略者

 翌日、エリアの見回りをしながら装備を整える。クロは抱っこ紐の中でロザリオが抱っこしている。気に入ったのね。


 ベイビーカーバンクルもお姉ちゃんになったからか少しは前に出るようになった。宝石ができた時、進んで俺に持ってくる。宝石は二つほどあり加工の準備待ち。


 時々外に出て尻尾を振りながら庭回りを散歩するクロ。能力は炎熱耐性(微)や火精霊魔法と出ている。後は噛み付き攻撃。


 島を調べようと思う。ゲームとは言え本土から離れた位置にある島。何かあるかもしれない。


「装備の新調が終わりました~」


 尻尾を振りバンダナ達の装備が整うと共に糸を作る綿から布を作り染める。それだけだとタダの布なので装備として役に立たない。蜘蛛系モンスターから素材を集めるしかない。


 俺の装備も鋼の軽装を作りそれを装備。盾も籠手とくっついたタイプを作り、片手が空いた状態で盾を使える。


「手斧もいま作りますね」


「おお、頼む」


 鍜治場はすでにコボルト達の仕事場になり釘なども作る。


 集落はすでに村として機能していて食材がだいぶ豊富だ。


【コックマン】「砂糖くださいッ」

【スズカ】「これで胡椒があれば移住したい………」


 料理人プレイヤーも動画を見るようになったらしい。バターが作れるのは一握りらしい。塩は岩塩が発掘されている。俺的には岩塩が欲しいけど。


 そう考えているとワールドアナウンスが入る。


『ワールドクエスト達成おめでとうございます』


『ワールドクエスト『未界の開拓』を達成。全プレイヤーにSP5Pを授与』


『一部プレイヤーに『未界の先駆者』の称号、SP3Pを授与』


『一部プレイヤー並びNPCに『開拓の職人』の称号、SP3Pを授与』


『ワールドクエストの後はイベントが発生します。どなたでも気楽に参加できるのでぜひ参加してください』


「おっ」


【一服野郎】「マジで!?」

【ミスタースミス】「ひゃほい職人ゲット♪」

【レックス】「やった。先駆者だ」


 俺の方を見ると先駆者だけ。職人は手に入らないが職人であるコボルト達が変化。


 職人であるコボルトにも運営、女神の祝福が与えられて生産率が上がった。先駆者は経験値微上昇とステータスオールで微上昇。


 配信もイベントどうするかのコメントが流れるが、よほどのことが無い限り見送りだ。本土に行けば絶対に面倒な奴が来る。


 それに全員が納得する中でホームの庭先でバンダナ達を鍛えていた。


 ◇◆◇◆◇


 シルフがクリームを使った果物を食べてロザリオも食べる中、始めに気づいたのはクロだ。


「わん」


「きゃん」


「わんっ」


 海の方に走り出してロザリオも何かあるのに気づく。


「なにあれ?」


「ん?」


「隙ありッ!」


 見ずに向かってくるバンダナを木刀で叩く。


【侍ハート】「こやつ、反応していながら意識はバンダナに向けたままだったぞ」

【疾風】「さすが外道ですね」

【レフト】「ついに楽園にたどり着いたぞッ!!」

【カツ丼】「ん?」


 ボートのようなものが【水流】の魔法で加速しながらこちらに迫る。ウインドウを開きながらガッツポーズする女の子がいる。


「………まさか」


【ライト】「約束を守ってください」

【ユウ】「最近見ないと思ったら」

【レフト】「努力とは報われるべきものである!!」


 13歳くらいの女の子達がガッツポーズしていて、一人の自然魔法使いがこちらに向かって加速する。


【レックス】「バカな」

【テッキ】「動画追いながら探索していたと言うのか?ワールドクエストほっといて」

【カツ丼】「多くのプレイヤーが海に出向こうとして失敗したと言うのに」


 ついに来たらしい。手の者、ギルド『幻獣愛好家クラブ』の者達。


「私の名前はレフト、ライトの双子の姉妹です」

「私の名前はライト、レフトの双子の姉妹です」


 二人揃って話す少女は13歳くらいであり、銀色の髪と赤い髪。装備以外瓜二つの少女。片方レフトは魔法職らしく、杖と十字架のペンダントを下げている。


 ライトは直剣使いで大盾を持つ少女。長い髪をなびかせて島へと上陸した。


「「犬をモフモフさせてください」」


「全員撤退ッ!!」


「きゃうん?」


 よく分かっていないバンダナは魔の手に落ちる。


 モフモフされて悲鳴を上げる中、あーあと見守ることしかできない。視聴者も草が生えて刈り取る者はいない。


 よく見るとボートは俺の持つボーナスポイントのボートである。あれなら何度てもチャレンジできるはずだから後は熱意と自然魔法【水流】。水を放出して攻撃する魔法で加速するだけか。


 それをしていたであろう魔法使いが最後に現れて俺は顔を歪める。


「お前か『マーリン』」


「ああ、私としてもここは魅力的だからね。店と共に移動してきたよ。お隣にショップ作っていいよね?答えは聞かないよ」


 そう言う高校生くらいの女性、10人中10人美少女と言うだろうスタイルと顔を持つ女性プレイヤー。オフ会で素顔のままでゲームプレイしていると噂される外人ハーフ。


 魔術師マーリン。いろんなギルドと繋がりがあり、俺のようにこのゲーム内だけの配信している。


 レイドの頃、滞納金で笑顔でキレていた苦手な部類のプレイヤーの一人だ。

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