第8話・次々に舞い込むもの

 鉱山まで来て、斧と包丁を作る。鍛治スキルが2から3に上がり、グリップを付ける時に細工スキルも上がってくれた。


「さてと、いったん家に帰るか」


 話が付いていると良いが、そう思いながら帰ると、ミケとオーブを膝に乗せているロザリオがいた。


「あっ、お帰りなさい」


「ただいま」


 そう挨拶して、二人を膝からどけてから、改めて挨拶をする。


「ボクの名前はロザリオ。帝国船に乗っていたら、昨日の嵐の晩に、大海の獣に襲われてしまい、船は転覆。あなたに助けられたようです」


「大海の獣?」


「帝国から大きく山なりに進む海域を住処にする、ネームドモンスターです」


 なぜ船に乗っていたか、そういう話は話す事はできないと言われ、そうかとしか反応できない。むしろ話されても困るが本音だが………


「あなたに助けていただいたおかげで、この通りで……他に人はいませんでしたか?」


 俺は首を振る。それにそうですかと悲しそう顔をする。そう言えば、NPC死亡はリスポーンしない設定だった。仲良くしていたNPCがいたとしたら悲しいだろう。


 その後、ここはどこか話を聞いて、王国のどこかの海域の島であり、人里から離れ、開拓しに出ている為に王国や帝国に戻る術は無いと伝える。


 正直リアル時間三日か四日掛ければいいが、NPC扱いの彼女は無理だからな。確か開拓者は女神の加護のおかげで死なないって設定だっけか?


「あの、厚かましい話ではありますが、しばらくここに泊めてはいただけませんか?」


「良いですよ。俺も家の番をしていただければ助かりますし」


「はい、ありがとうございます。それと………」


 そう一呼吸置いてから、


「あの言葉は嬉しかったです。本当にありがとうございます」


 俺はあえて何のことかは聞かずに頷き、こうしてロザリオが居候になった。とりあえず二階の部屋を与えて、料理すればいいだろう。


 とりあえず、ご飯にしよう。イモと兎肉を焼いたものだけどね。


『料理スキルが上がりました 1>2』


【ミント】「おめ」


 ◇◆◇◆◇


 ご飯を食べ終えたら、昨日の荷物の整理をする事にする。回収した木箱や樽、その中身やらなんやら。


 フライパン、中くらい大きさの鉄鍋や皿。ロープや衣類の入った箱はロザリオの物らしい。


 女神像と言う、この世界を創造した女神様の像もあり、彼女は微笑みながら大事そうにしている。


 流れ着いた物も確認して、ネギの実と言うタマネギや白銀桃。紅茶の茶葉や小麦粉を手に入れた。小麦粉以外種や苗木にできて、畑に植えた。


 後は魔導書だろう。タイトルは【自然魔法の勧め】と書かれていて、ギルドで借りられる本である。おかげで【火球】や【石壁】、それに【雷撃】と【冷却】を使えるようになり、自然魔法のLvが上がる。


 ロザリオは神聖魔法が使えるらしく、これを機に自然魔法も覚えると良いと勧めておいた。何分神聖魔法は初期は回復かバフ撒くかしか無いから、自然魔法を覚えるか、重戦士、大盾によるタンク職の者になるからな。簡単な傷なら治せると聞いて、とりあえずゆっくり活動する事にしよう。


【レフト】「お疲れ~」

【ライト】「ロザリオさんはカメラとか分かるのかな?」

【ハカセ】「おそらく知ってても無視するかと」


 だよね。ここに来る前も言ってあるが、彼女からゲームの話を聞くのは禁止になっている。運営が放置するから、多少聞きだしても問題ないだろうが、やめてほしい人はいるだろうからね。


 とりあえずはこの距離で過ごそう。そう決めてから、彼女に時間が来たら動物を小屋に入れて欲しいと伝え、森の探索に出る事に。


 斧術とか取ったし、木材を確保しよう。


 ◇◆◇◆◇


【ミスタースミス】「伐採するなら伐採スキル取らないと木から木材取れないよ」


「ステータスに振りたいぜ」


 そう言いながらもスキルを取り、斧術、伐採スキルと採取スキルが上がり、木材をいくつか入手。


 このまま鉱山の方角に進み、鉄鉱石を手に入れる。そう思っていたが………


「キャイゥゥゥゥゥンッ!?」


 犬の悲鳴が響き渡り、そちらの方に顔を出した。


 血まみれのコボルト達が居て、その周りにはゴブリンがいる。この世界の獣人は人に獣の耳や尻尾などがある程度であり、コボルトは犬が二足歩行しているだけのものだった。


 種類はモンスターに分類されるが、ゴブリンに殺されかけているから可哀想だ。


「レベル上げの糧にしてくれよう」


 そう思い、斧を投げた。


「えっ………」


 コボルトの一匹がそう呟く。クリティカル判定で五匹いる一匹を叩き殺して、もう一匹へと襲撃した。


「弱いものいじめか、俺も混ぜろ」


 タゲはお前らな。そう言って俺はもう一匹の首を斬る。まずは一撃で二匹倒した。


 ゴブリンはすでにこちらにタゲが集まり、一匹がこん棒を持って飛び上がる。


 蹴る。


 ゴブリンが空中にいる瞬間、思いっきり蹴り飛ばして、木に激突。さすがに死なないなと思いながら、弓を構えるゴブリンを見る。後は折れた剣か。


「【風壁】」


 これは遠距離攻撃を一定の間防いでくれる風のバリア。お粗末な矢くらいならノーダメだ。


 風によって吹き飛んだ矢に驚くゴブリンを無視して、剣を構えるゴブリンと対峙することにした。


 おっと、目の前にズタズタな兜あるじゃん。これボールな。


「ギャウッ!?」


 ボールのように放たれた兜に頭を打って悲鳴を上げるゴブリン。そのまま矢を持つゴブリンと刺突する。はい、二匹いただきました。


 俺の様子に鼻血を出しながら逃げるゴブリン。鉄のインゴットをストレージから取り出す。これ意外と鈍器として機能するのよ。


 思いっきり投げ飛ばし、後頭部に当たったゴブリンを倒す。


「よしノーダメクリア」


『レベルが上がりました 2>3』


 ありがとうございまーす。


 こうしてコボルト達を助けた俺は、また面倒を見る羽目になるんだが、今度の相手は素直なので、大丈夫だったよ。


 次回をお楽しみに。

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