第9話・コボルトの事情

 ホームが近くの為に、急いで傷付いた彼らを連れて、ホームへと帰る。


「お帰りなさ……どうしたのその子たち?!」


「ロザリオ、この子達の傷を癒してほしい」


「うん分かったよっ」


【ハカセ】「コボルトが6体ですか」

【ユウ】「モフモフ天国ですね!!」

【ライト】「この子達も飼うのか見どころですね」

【テッキ】「手の者がそう言ってますか」


 どうなるんだろう。とりあえず傷を癒して、どうしてあそこにいたか詳しい話を聞いた。


「僕達はこの辺りの集落に住むコボルト………でした」


 話を聞くと、いまでは住む場所は無く、みんなバラバラに暮らしているとの事。どうしてそうなったか聞くと、コボルトが元々暮らしていた場所は、ゴブリン達によって奪われたらしい。


 いまも自分達の帰りを待つ同胞がいるから、狩りをして帰らないといけない。


「大変だな。この辺りに住む事はできないのか?」


 セーフエリアは広々としているが、彼らからすれば海が近くて怖いらしい。


「帰り道、狩りの対象はいるのか?」


「はい、ネズミとウサギがいますので」


 他にもイノシシとパラライズリザードと言うモンスターがいるらしい。パラライズリザードは麻痺効果の攻撃をする、少し厄介なモンスターだな。


 彼らに遭わないようにして狩りをしているらしいが………


「お前らこのままじゃ死ぬぞ」


 それを言われて、耳と尻尾が垂れる。どうやら分かっているらしい。


 狩りと言っているが、彼らの手には何も無い。どうもボロボロの兜は彼らの物であったようだ。


 だが兜以外、装備らしい物は無く。装備無しでモンスターと戦うしか無いらしい。


「それでも……それでも僕らがやらないと、村のみんなが飢えるから……」


 そう言って立ち上がる、バンダナを巻いたコボルトは立ち上がり、お辞儀をする。


「助けていただきありがとうございます。僕らは僕らで頑張りますので、では」


「まあ待て」


 コメント欄がこのまま放置なのかと言うのが流れてるんだ。それにロザリオもまた、できればなんとかしたいと言う顔をしている。


 はあ、困った物だが、どうやら面倒を見なきゃいけないらしい。手の者と言うか『幻獣愛好家クラブ』の人も助けて欲しいと言ってるし………


 彼奴らよりかはマシだろう。


「助けて欲しいか」


「……それは」


「俺には武器を作るツテがある。魔法を覚える方法もあるぞ」


 それにコボルト達が顔を上げて見合わせる。


「それは……」


「だが結局はお前達の意思次第だ。戦うのはお前達で俺じゃない。手を貸す事もあるし、貸してもらう事もあるだろう」


 そう言って、静かに意思の堅いコボルトを見る。


「俺と協力すると言うなら力を貸そう、俺の敵になるのなら容赦はしない」


 だが、


「仲間として努力し続けるのなら、俺ができる限りの事をする。お前はどうしたい」


「………僕は」


 その時に仲間のコボルト達を見て、意を決して発言する。


「強くなりたいですッ!弟達においしい物を食べさせたい!妹達に安心して眠れる場所が欲しい!」


「そうか、なら手を貸すよ」


 まずは彼らの仲間を保護するのが先かと決めて、行動を始めた。


 ◇◆◇◆◇


 勢いで彼らを保護して、強くする約束したけど、装備整えるだけで強くなる訳無いよな。


「視聴者の皆さんはどうします?」


【ビビンバ】「ノープランでしたww」

【カツ丼】「良い事言ってたのに」


「だって鉄鉱石があるし、インゴットも作れるし、装備は整えられる」


 だがそれで強くなるものかと首をひねる。装備を整えればゴブリンには勝てるだろうが、それだけで終わるのも変な話だ。


「魔導書があるから、自然魔法は教えられるはず」


【レフト】「それはプレイヤーだからでは?」

【ハカセ】「いえ、プレイヤーで無いからと言って、NPCがスキルを習得できないわけはないかと」


 ん、どういうことだ?


【ハカセ】「だって本を持っている。と言う事は必要な物として数えられています。中身を読むと、魔法に必要な事が書かれていますよ」

【カツ丼】「そうなのか?」

【テッキ】「確かにそうだっけ?」


 初期スキルでポイントを振り分ければ初級魔法は覚えられるが、NPCは本を読み、理解を深めれば使用ができる。可能性はあるか………


【ハカセ】「面白くなってきました」

【オウル】「検証と聞きました」

【侍ハート】「コボルトを最強のモンスターにするって聞きました」


 なんか視聴者が増えている。この調子で行くと、本当の動画配信になりそう。


【ライト】「動画配信になったらよろしくお願いします」

【ユウ】「追っかけますので」


「はいはい」


 とりあえず、これをやれば強くなりそうな事をやらせればいいか。


 曖昧な考えだが、方針は決まり、後は行動することになる。


「兎さーん」


 コボルト達がわらわら森から現れる。100匹くらい、赤ん坊などの子供を入れて現れ、老人や大人っぽいコボルトが恐る恐る現れる。


「よしとりあえず、飯食ってから考えようか」


 キッチンがあってよかったよと思いながら、ストレージから大量の肉を取り出して、拾った鍋を使い煮込み始める。


 彼らは良く食べ、お礼を言い、今後どうするか前向きに話し合う。


 だから俺は、彼らを強くすることにするのであった。

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