最終夜 月読の輪廻②
「だんなさま・・」
半開きのドアから、健造と子どもの様子を、
「玉藻か・・・すまん、おまえに子どものこと全部押し付けているようで」
「いいえ、だんなさまの悲しいお気持ち、お察し申し上げます。実は、至急報告したいことがございます。ただいま、
健造は、はっとして、手の甲で涙を拭いながら訊ねた。
「命言が?
「命言さまから、『月読さまが無事、
「それは・・それはどういうことなんだ?」
「ご説明するのが遅れました。わたしは、月読さまのご出産の際に、月に停泊中の
月読は、地球に来る途中、
「
「本当か? じゃあ、月読は生き帰れるのか?」
「いまの状態では不可能です。現状で
「その母船は、何時来るんだ」
「わかりません。命言さまが様々な星系に向けて光子通信を発しましたので、それを傍受してくれれば、必ずや救助が来ると思われます。それまで、月読さまはずっと眠り続けるのでしょう」
「そうか・・月読は、死んでなかったんだな」
月読は生きている。生きたまま、
「玉藻! いつか、この子といっしょに月読に会いに行けるか? この子を母親に引き合わせたいんだ。目を覚まさなくてもいい。ひと目会わせてやりたいんだ」
「ええ。
「命言が? そういえば、命言はどうしたんだ?」
「はい。命言さまは、月読さまが眠りに付かれたのを見届けたあと、すべての活動を終え、そのまま睡眠カプセルの横で待機されております。活動量を千分の一に縮小し、月読さまをずっと見守っておられるのです」
「そうか・・あいつらしい忠義だな」
健造は、月読と命言の様子を思い描いた。真空で物音ひとつしない月面で、
カムナバルの船団が来るのは
健造は、月読のこれからの人生を思い描いた。その人生がやさしさいっぱいに包まれるように、強く心に願っていた。
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