第二夜 かぐや姫養育日記⑫
健造は、コンビニに寄って夕食を購入し帰宅した。
「いただきます!」
声を合わせて、弁当に箸を付ける。幼児と二人の
いままでは、たった一人で何も思わず食べていた。空腹を満たせば、それだけでよかった。一人で食べるのが味気なくて、見たくもないバラエティ番組を大音量でつけていた。孤独を
「
健造は、唐揚げを箸で突っつく月読に訊ねた。
「わたし、家にいてもいいんですか?」 意外そうな顔で月読が答えた。
「ああ、おまえがいたいのなら、そうしろよ。その代わり、勝手に外出しちゃだめだからな」
「わかりました・・」 今日のことを反省する気があるのか、月読は
「明日、朝早く起きて一緒に
月読の顔が一瞬、元気を取り戻すように輝いて見えた。
「はい、扶佐子さんのお母さん、とってもいい人でした。もう一度会って、お詫びを言いたいです」
「好意を台無しにしちゃったからな。でも、気にすることはない。明日、しっかりと説明すれば分かってもらえるって」
「はい、そうしたいです。今日の夕食、ご馳走になれなくて残念でした」
「いいよ、もう。しがないコンビニ弁当でも、一人で味気なく食うわけじゃないからな」
「だんなさま・・、わたしもです。だんなさまと食べるご飯がいちばんおいしいです」
健造は、思わず微笑んだ。大人ぶったことを言っても、中身はやっぱり子供なんだ。そう思うと、慣れない手付きで唐揚げを口に運んでいる月読が、たまらなくいとおしかった。
「なんだか、おれたち、本当の家族みたいだな」
健造は、思ったことを率直に口にしていた。言葉にして、我ながらおかしなものだと、苦笑が漏れる。ついこの間まで、月読も命言も
「はい、健造さまはわたしの兄です。だから、わたしも家族だと思ってます」
月読も満面の笑顔でそう応えた。お互い孤独じゃないことを確認したようであった。
「わたし、おにいさまに、いつか叶えてほしいお願いがあるんです」
「ん、なんだ? なにか、ほしいものがあるのか?」
月読は、人見知りする子どものようにもじもじしていたが、健造に向かってはっきりした口調で述べた。
「だんなさまの子種をいただきたいのです!」
「・・・」
健造は硬直して、握っていた箸をぽとりと落とした。
「おまえ、意味分かって言ってるのか?」
「はい、だって、だんなさまは、わたしのおにいさまですもの」
「いや、わかってないだろ! 家族同士でふつう、そういうことしないの! そもそも、『そういうこと』ってわかるか? いや、どこで覚えたんだ、そういうこと!」
にこにこ笑っている小さな月読の前で、純情高校生の健造は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます