第二夜 かぐや姫養育日記②
低血圧の健造とは対照的に、子どもは朝が早い。
「悪の魔王に魔法をかけられて、夢の中にとらわれてる、みんな! 目を覚ますのよ」
血圧が上がらず、もうろうとする頭に幼児の甲高い声ががんがん響いてくる。うっすら目を開けると、ベッドの上に魔法少女が立っていた。大袈裟なくらい大きなリボンで、髪の両端をしばり、青いラメが輝くピンクのドレスに、丈の短いフリフリスカート。胸にはメイクアップコンパクトをかたどったどデカいペンダントをぶら下げ、星やら羽やらのコテコテした飾りがついた
「なぜ、魔法少女・・??」
などという疑問は、日課として毎朝行われている、お遊戯会の演目と納得するしかなかった。
「だんなさまも睡眠魔法をかけられているのね。 私が魔法で解き払ってあげますわ!」
手のひらを横にかざし、指のすきまから覗く大きな瞳が、きらきらと光沢を放ち輝いている。フリルのついた短いスカートが規則的に回転し、波動を描きながら揺れ動いている。なりきり魔法少女のボルテージが最高潮に高まる。
「ルナティックパワー、我が導きに応え月の軌跡にその聖なる力を
片足立ちし天井に向かって
「
天井にかざした月読の
「えいっ!」
ごつっ
「いでぇ~~!!」
鈍い音とともに、健造の苦悶の悲鳴が部屋中にこだました。いかつい鈍器で殴打された痛みが額を走り、健造は床に転げ落ちてのたうち回った。初めて知った! マジカルステッキって、鉄パイプみたいに固いんだと。
悶絶する健造をよそに命言がどかどかと部屋の中に侵入し、「あ~あ、いけませんよ、月読さま。朝っぱらからはしゃいだら、だんなさまが遅刻しちゃいますよ」と言って、月読の
それにしても、
(次回、久々の登校!)
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