第60話
あの後、アルファムが俺とローラントの握手していた手を無理矢理離して「ローラント、疲れただろうから早く寝ろ」と言いおいて部屋を出た。
「カナデ、また明日ね!僕のこと呼び捨てでいいからね」
部屋を出る直前に、ローラントの少し高い声が俺を呼ぶ。
俺が振り向いてローラントに笑って頷くと、ローラントも笑って手を振った。
部屋に戻り扉が閉まるよりも早く、アルファムに抱きしめられた。そのまま何も言わないアルファムが気になって「どうしたの?」と緑の目を見上げた。
「いや…カナデとローラントが仲良くなるのは好ましいのだが…。あんまり仲良くなり過ぎるなよ?それに先程みたいに触り過ぎるのもよくない」
「はあ…。え?まだ初対面で別に仲良くなかったじゃん」
「仲が良かったではないか。いや、いいのだ。いいのだけど……面白くない」
俺のつむじに顎を乗せて、少し拗ねた様子で言うアルファムが愛しくなって、俺は顔を上げると何度もキスをねだった。
翌日、朝から城内が騒がしくなった。
アルファムを祝うために、各国の招待客が順番に城に着いたからだ。
俺は見知った顔がいないだろうかという期待と各国の人達の髪色が気になって、忙しく職務をこなすアルファムの許可をもらうと、リオに頼んで城内に入ってくる人達が見える場所に案内してもらった。
城の入口をこっそり覗ける小さなバルコニーに、二人並んで座る。
バルコニーに所々にある装飾の小さな穴から、入ってくる人達を見た。
今入って来た人は、身長はアルファムより少し低いぐらいで銀色の髪をしている。
「…リオ、あの人はどこの国?」
「銀の髪だから月の国、ルナ国だな」
「へぇ…月の国は銀髪…」
リオと顔を近づけて、コソコソと話をする。そうこうしてるうちに銀髪の人とその従者が、シアンの案内で奥へと消えて行った。
間を置かずに次に入って来たのは、緑の短髪のがっしりとした男の人。
「なあ、あの髪色の人はどこの国?」
「あれは山の国マウン国。あの人は濃い緑色だけど、薄い緑の髪は俺の好きな色なんだ」
「へぇ~…」
俺は何度も頷き感嘆の声を上げる。
赤も青も珍しく思っていたけど、この世界の人達は、本当にカラフルで綺麗な髪色をしていると思う。
そんなことを思っていると、チラリと視界の端に見た事のある色が映って慌ててバルコニーから顔を出した。
「レオナルト!久しぶり!来てくれたんだ?」
キョロキョロとあたりを見回して俺を見つけたレオナルトが、笑顔で俺に手を挙げる。
「カナデ!元気にしてたか?ははっ!そんな所で何をしてる。降りて来い」
「待ってて」
急いでレオナルトの元へと行こうとする俺の足を、リオがガシッと掴む。
「ち、ちょっ…!カナデ!こんなとこに潜んで見てたのがバレたら俺が怒られるんですけど?なんで声出したの?」
「あ…ごめんっ。懐かしい顔だったから…つい。だ、大丈夫だよっ。俺が無理言って連れて来てもらったんだし。ちゃんと説明するし。なっ?」
俺が両手を合わせて頭を下げると、リオは俺の足から手を離し渋々頷いた。
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