第59話
アルファムに抱きつくローラントを、少し驚いて見つめる。
ローラントはクールで冷たい雰囲気のアルファムと違って、とても人懐っこくて柔らかい雰囲気がする。
アルファムはローラントの頭を一つ撫でると、身体を離して俺の肩を抱き寄せた。
「ローラント、息災でなによりだ。おまえに紹介しよう。この尊い黒髪の彼は、カナデという。俺の恋人で、いずれ后にと考えている大切な人だ」
「はじめまして。カナデといいます。アルからあなたの話は聞いてます。よろしくお願いします…」
アルファムから離されたことに不満そうな顔をしながらも、俺が挨拶をすると、ローラントはニコリと笑って手を差し出した。
「僕はローラントです。うん、噂には聞いてたけど、本当に綺麗な黒髪で可愛い人だね」
「あ…りがとう。えと…でも俺は男で…」
「うん、それも聞いてる。いいんじゃない?兄上が君を好きなんだから。でも僕と同じくらいの歳で、王様の后に選ばれるなんてすごいね」
「え…ローラント…くんは何歳?」
「十五歳だよ!」
俺はローラントの年齢を聞いて、やっぱり…と苦笑しながらアルファムを見た。
アルファムは片方の眉をピクリと上げて、俺の額にキスをする。
そしてクック…と笑いながらローラントに言った。
「ローラント、カナはこう見えて二十二歳だ。おまえよりも歳上になるのだから何かと頼ればいいぞ」
「……えっ!僕より七つも上なの?うそっ、なんで?なんでそんなに若く見えるの?…はっ!もしかして尊い黒髪といい、カナデは神…」
「ちっ、違うから!普通の人間だから!魔法だって剣だって録に使えないか弱い人間だからっ!」
「…うそだ」
じっとりと俺を見てくるローラントに怯みながらも、俺は小さく息を吐いて、ずっと握手したままだった手をもう一度握り直した。
「本当だよ。俺はこの世界の人に比べたら小柄だから、歳よりも若く見えるんだと思う。それに何の力も無くて、アルやリオに守ってもらうばかりで…。それじゃあ嫌だから、俺もアルや皆んなを守りたいから、今、魔法や剣を練習してるんだ」
ローラントは静かに俺の話を聞くと、嬉しそうに笑って俺を見下ろす。
そう。当然のごとく、ローラントの方が俺より十センチは高いのだ。
慣れたとはいえ、七つも下の子に見下ろされていることが地味に堪える。
でも何とか年上の威厳を…と微笑んで見せた。
「カナデ、僕も今、剣の練習をしてるんだ。魔法も使えるんだけど下手くそでね。よく的を外して傍に控えている家来に当たりそうになって怒られるんだよ…」
「そ、それは、危険だね…」
王族の人でも術を上手く扱えないとかあるんだ。でも本当は言いたくないような自分のダメな所を、初めて会った俺にも言っちゃうなんて、ローラントくん可愛いな。
何だかとても親近感が湧いて、俺はニコニコしながらローラントを見る。
二人で手を繋いで笑い合っているのが気に入らなかったのか、アルファムが怖い顔で俺を強く抱きしめた。
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