第53話
俺が暗い顔をしていたからか、リオが俺の背中をポンと軽く叩いた。
「でも俺の尊敬するアルファム様だからな。即座にカナデを捜す為に城を出た。ライラ様には『俺が戻って来るまでに出て行くように』と仰って」
俺の胸がズキンと痛む。
ライラのことは、あまり好きではなかった。だけど彼女の様子から、アルファムのことをとても好きだとわかる。アルファムとの結婚を夢見ていたはずだ。今回のことで、きっと俺を憎んでるに違いない。
でも…ごめんなさい。
俺もアルファムが好き。アルファムを愛してる。やっと巡ってきた幸せを、手放すことは出来ない。
ライラを思って胸が痛むけど、その痛みを抱えたまま、俺はアルファムの隣にいると決めたんだ。
「うん…それで?」
「アルファム様が厩舎に行くと、ヴァイスの姿が無かった。アルファム様は空の厩舎を見て、大きな声で笑い出したんだ。『ヴァイスめ、あいつまでカナが大好きなんだな』って」
「ヴァイス、怒られてなかった?俺の願いをきいて遠くまで乗せてくれたんだ…」
「大丈夫だよ。アルファム様が別の馬に乗って行こうとした時に、ヴァイスが戻って来たんだ。傍に寄って来たヴァイスを、アルファム様は『よくやった』と褒めてらしたよ」
「アル…」
俺はホッと安堵の息を吐いた。
俺を迎えに来た時に、アルファムとヴァイスの間に変な空気は感じられなかった。
それにアルファムが、とても大事にしてるヴァイスに、理由もなく酷いことをするはずがないと信じてた。
リオが立ち上がり、俺の正面に立って続ける。
「そっからは素早かったよ。人数が多いと動きが鈍くなるから、アルファム様と俺が騎翔馬で空から遠くを捜索、他の数十名で念の為城の近くをくまなく捜索せよと命令して、すぐに出発した」
「…でも、どうして俺の行き先がわかったの?」
「カナデ、アルファム様からもらった腕輪をつけてるだろ?」
「つけてるけど…。あっ、そうだった!この腕輪って…っ」
「そうそう。カナデがどこにいるかわかるようになってるよな」
以前、レオナルトに連れ去られそうになった時、目印にと腕輪の石を順番に落としていったんだ。その時にアルファムが『この石にはカナがどこにいてもわかるように魔法がかけられている』と言ってたんだ。
前の腕輪は石が足りなくなってしまったから、新たに腕輪をもらったけど…。
そうか。この腕輪にも魔法がかかってたんだ。それで捜しに来てくれた…。
「リオ…勝手なことしてごめん。アルやリオが、俺を見捨てずに捜しに来てくれて嬉しかった。本当にありがとう」
「はあ?アルファム様がカナデを見捨てる訳ないじゃん!俺が大好きな友達を見捨てる訳ないじゃん!カナデが無事で本当に良かった。でも怪我する前に助けられなかった…ごめん…」
「リオはちゃんと助けてくれたよ。リオがいなかったら風の国のあの男に殺されてたかもしれないんだ。俺、今回のことでもっと強くなりたい!って思ったんだ。だからリオ。もっと俺を鍛えて」
「…カナデ。よし、わかった!今から俺は厳しくいくからなっ」
「うん!」
お互い顔を見合わせると、ブブッと思いっきり吹き出した。
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