第21話 炎の国の城
どうやらホルガーは俺に好印象を抱いてくれたようで、「可愛らしい方だ」と笑いながら城の中へ入るように促してくれた。
今日はもう遅いから明日案内をすると言うアルファ厶に連れられて、とても広く豪華な装飾が施された部屋に来た。
俺が部屋の真ん中に立ってキョロキョロと見回していると、アルファ厶に「カナ」と呼ばれる。
「なに?」
「こちらへ…」
ぼんやりとしていた意識をハッと戻してアルファ厶の傍へ行き、差し出された手の上にそっと手を乗せた。
「ここは俺の部屋だ。カナの部屋はこっちだ」
アルファ厶に手を引かれながら部屋の中にあるドアの前に連れて行かれる。
アルファ厶がそっとドアに触れると、静かに向こう側へと開いた。
「わぁ…、綺麗な部屋だねっ」
「気に入ったか?カナはこの部屋を使えばいい。一応な」
「一応?」
「ああ、一応。普段は俺の部屋で過ごせばいい。当然、眠る時も俺のベッドだぞ」
「え…そ…うなの?」
俺のだと見せてもらった部屋は、アルファ厶の部屋の半分程の大きさで、大きな窓と机とベッド、小さなタンスみたいな物があるだけの、シンプルで居心地の良さそうな部屋だ。
それでも俺が元いた世界に住んでいた部屋よりは、格段に広くて豪華で、充分に満足だ。
でもアルファ厶は、自分の部屋を一緒に使えばいいと言う。
なんでだ?
俺は首を傾けながらアルファ厶を見上げた。
「俺、この部屋で充分だよ?アルのベッドは広いけど、俺と一緒だと身体の大きいアルは狭くならない?それに部屋だって俺がいたら邪魔にならない?」
「ならない。俺はカナが大切だと言っただろう?常に傍にいて欲しいのだ。だから決して俺の傍を離れるなよ」
俺の右手は繋いだままで、左手で俺の頬を撫でる。そして緑色の目を細めると、頬を撫でていた手で俺の頭を抱き寄せて髪の毛に唇をつけた。
「カナ、俺の城へよく来てくれた。明日、皆におまえを披露する。俺の大切な宝だと知らしめておかねばならない。おまえを見て欲しくなる奴が出てきては困るからな」
俺はアルファ厶の過保護すぎる発言がおかしくて、ククッと肩を震わせて笑った。
「どうした?何がおかしい?」
「だっ…て、アルってば目がおかしいんじゃない?俺を見て欲しくなる人なんて誰もいないって。だってアルやシアンみたいに綺麗なわけじゃないし」
「…カナ。おまえは自分の見た目を自覚しろ。その黒髪から顔から華奢な身体まで、目を惹かれぬ者などいないぞ?まさかこの城で俺の大切なものに手を出す奴などいないと思うが、用心に越したことはない」
俺を覗き込むアルファ厶の表情があまりにも真剣だったから、俺は笑うのをやめて深く頷いた。
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